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社畜から卒業したんだから異世界で自由を謳歌します  作者: 灰谷 An
第3章・残念なドラゴンニュートの女の子
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080:砂漠の中心で

 俺たちとは別の場所に飛ばされたカエデちゃんたちは、森ではなく普通に砂漠の真ん中だった。

 最初に起き上がったのはルイちゃんで、頭がズキズキするみたいで起き上がると周りを確認し、カエデちゃんとシュナちゃんが倒れているのを見つける。



「2人とも大丈夫でござるか!!」


「うぅ……頭がズキズキするわん」


「何が起きたんにゃ……」


「良く分からないでござるが、別の場所に飛ばされたみたいでござるな」



 2人の体を揺らすと幸いにも直ぐに気を取り戻す。

 すると2人はルイちゃん同様に、周りをキョロキョロッとみて何が起きたのかと困惑している。

 2人を立ち上がらせると再度周りの状況を理解しようとするのだが、どこを見ても砂漠な為にさっぱり分からない。



「フロマージュ王国というのは間違いないと思うでござるが」


「詳しく場所は分からないわんな」


「近くに村とかも無さそうにゃ………少し歩くかにゃ?」


「それなら拙者が、空を飛んで調べてくるでござる!!」



 さすがはドラゴンニュートといったところで、ルイちゃんは羽を出して空を飛び街を探す事にした。

 国土の8割が砂漠のフロマージュ王国である為に、見えるところ全てが砂漠で景色が変わらない。



「ここまで何も無いと困ったでござるな………おっ? あそこに村があるでござるな!!」



 少し空を飛んだところでルイちゃんは目を凝らして遠くを見てみると、そこには村の様なところを発見した。

 それを伝える為にルイちゃんは猛スピードで、カエデちゃんとシュナちゃんのところに戻る。



「この先のところに村の様なものを見つけたでござる!!」


「さすがはルイちゃんですわん!!」


「そこに行こうにゃ……」



 ルイちゃんが村を発見した事に、カエデちゃんたちは盛り上がって褒め称えるのである。

 そのまま3人は意気揚々に村に向かって出発するが、1時間しないくらいで暑さからダラダラッと汗を流し限界を迎える。



「ダメでござる………」


「暑すぎるわん………」


「干からびるにゃ……」



 3人は脱水症状からバタンッと倒れて意識が朦朧とし始めた時に、幻覚なのか人の姿が見え始めたのである。



「お おいっ!! 君たち大丈夫かっ!!」


「み 水を……」


「わ 分かった!!」



 人影は本物でアラブの石油王みたいな服装のおじさんで、3人が倒れているのを見つけて馬で駆けつけた。

 3人が水を欲しがるので自分の水を、3人に飲ませると顔色が良くなってきたので村まで運んでもらった。



「本当に助かったでござる!! この恩は どう返したら良いか」


「そんな気にしなくても良いよ。倒れてビックリはしたが、元気そうで何よりって事だ」


「それで ここは何処なんですかわん?」



 3人は村に到着しておじさんの家にあげてもらうと、頭を下げて命の恩人だと感謝を伝えた。

 おじさんは照れくさそうに礼なんていいと言うと、皆んなの前に飲み物を出してくれた。

 カエデちゃんはゴクッと飲み物を飲んでから、おじさんに現在の所在を聞いたのである。



「ここか? ここは《ゴコ村》つってな………あぁ地図を見せた方が早いか」


「ゴコ村ですか………」


「そうだ。フロマージュ王国は南に王都があり、北に森林地帯が広がっている………そしてゴコ村は、その中間地点だ」



 この場所はゴコ村というらしく、詳しく説明する為に地図を開くと王都と森林地帯の中間地点らしい。

 それならば俺たちが何処に飛ばされたのかは、ルイちゃんたちも分からない為に困っている。



「んー、ここから動かない方が良いでござるかな?」


「いや、ミナトさんなら王都を目指すと思うにゃ」


「プハーッ!! 確かに、そう思うわん!!」



 ルイちゃんは動かない方が良いのかなと腕を組んで困っていると、シュナちゃんが王都を目指すべきだと地図を指差した。

 それにカエデちゃんは、飲み物を飲み干すと勢いよくコップをテーブルに置いてシュナちゃんに賛同する。



「なら王都に向かって問題は無さそうでござるな!!」


「そうにゃ。ここから歩いていける距離なのかは分からないけどにゃ………」


「た 確かに歩いて行くのはキツイにゃ!?」



 王都に行くのが決まったのでルイちゃんは立ち上がって、回復したから出発しようと言い出した。

 しかしシュナちゃんはゴコ村から王都まで歩くのかと、さっきまでの状況から落ち着いた様子で言った。

 それをカエデちゃんも理解して、ダメだと地面に仰向けでバタンッと寝転んだのである。



「なんだい、お前たち王都に行きたいのかい? それなら年寄りの馬で良いならあげるぞ?」


「良いでござるか!!」


「至れり尽くせりだわん!!」



 3人がうーんっと唸っているのを見た、おじさんは自分の飼っている老馬ならあげると言ってくれた。

 3人は立ち上がると、おじさんを囲んで感謝を伝えるとニコニコと逆に喜んでくれている。

 王都に向かう準備が整い始めている時に、家の扉がバタンッと開いて村人の男の人が焦った様子で入ってきた。



「どうしたんだ? そんなに焦って、モンスターワームでも出てきたのか?」


「それがよ!! 国王軍がきて、ゴコ村から税金の滞納があったから全員処刑にするって!!」


「なんだと!? そんな横暴があって良いのか!!」



 国王軍と言いながらも普通に共和傭兵団が村に来た。

 しかも理由はゴコ村が税金が払えていないから、連帯責任で村人を処刑すると言ってきたらしい。

 あまりの横暴におじさんたちは困り果てていると、ルイちゃんはハッとした顔をした後に恩を返すチャンスだと思った。



「ここは拙者らに任せてもらえないでござるか!!」


「い 良いのか!? でも女の子には荷が重い様な………」


「心配しなくて良いわん!! こう見えて、私たちは強いんだわん!!」


「そうか……なら任せたよ!!」


「引き受けたでござる!!」



 ルイちゃんたちは恩を返す為に、共和傭兵団とは自分たちが戦うと名乗り出たのである。

 しかし女の子が3人で勝てる様な相手じゃないと、おじさんは懸念したがカエデちゃんの念押しで頼む事にした。



「それじゃあ行くでござる!!」


「行くわん!!」


「行くにゃ……」



 3人は意気揚々とおじさんの家を出ると、村の入り口で10人くらいの騎士たちが村人と揉めていた。



「ちょっと待っでござる!! 村人たち、ここは拙者たちに任せてもらおう!!」


「お前らは誰だ? ここの村民じゃないな?」


「冒険者だわん!! 不当な処刑は、正義の味方として見逃すわけにはいかないわん!!」


「なんだと? 女のガキが、国王軍に喧嘩を売ったな? 国王の名に変わって、我々が処刑する!!」



 騎士たちはルイちゃんに剣を向けて、王への冒涜だとか言って無理矢理に処刑をすると言ってきた。

 そんな光景を遠くから見ているおじさんたちは、心配そうな視線を送っている。



「本当に、あの子たちは大丈夫なのか? 冒険者とはいえども若い女の子だぞ?」


「心配ないさ。あの獣人の女の子と、刀を持った女の子から異様な殺気を感じられた………アレは本物だったよ」


「ほぉ。お前がいうのなら本当なんだろうな………なら心配する必要は無さそうだな」



 おじさんたちはルイちゃんたちが、無傷で騎士たちを追い返してくれると期待している。

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