065:愛剣の切れ味
犯罪者を拿捕しに、中陸から南西にある島にやってきた、ナミカゼ少尉たちは目的の人間を見つけた。
しかし犯罪者を取り囲んだところで、取り囲んだ軍人たちが一瞬にして血を流してバタバタと倒れて行った。
「ど どうなっている!? 何をしているんだ!!」
「それに気づけないのに、お前は少将をしてるのか?」
「ガライ少将っ!? そ そこを動くなっ!!」
この現場で最高位のガライ少将は、何が起きたのかと困惑していると、今度は一瞬にして景色がグルッと変わってしまう。
そのままガライ少将は地面にバタッと倒れて死んだ。
その瞬間に黒いローブに、フードを深くまで被って顔を隠している男が現れたのである。
「ここにいる人間は死ぬ覚悟を持ってきたんだろうな? 聖人とかいう、偽物に操られた犬共が………」
「ならば、お前らは世界平和を脅かす犯罪者集団………なぁ銀翼の夜明け団よっ!!」
「ナミカゼ少尉っ!?」
このローブの男は銀翼の夜明け団らしく、あまりにオーラに一般軍人たちは動けずにいる。
すると、その一般軍人の後ろからナミカゼ少尉が飛び出して、ローブの男に殴りかかっていた。
「ほぉ? 少尉のくせに中々、見どころがある男じゃないか」
「それは褒めてるつもりか? クロスロード連盟軍は、正義の味方だ……お前らの様な奴らから世界を守るな!!」
拳での鍔迫り合いの様になってから、パッと互いに後ろに下がって距離を取った。
少尉という位には見合わないくらいの度胸で、ナミカゼ少尉は戦いを挑んでいく。
「俺たちが世界の犯罪者って言うのならば、お前たちは一体なんなんだ? お前らは、世界を蝕む害虫だろうが!!」
「その面は……!?」
「俺……いや、俺たちを服わぬ民と呼んだのは、お前たち世界連盟だろうが!!」
銀翼の夜明け団の男がフードをとって顔を見せると、その顔は熱く熱しられた油を顔面にかけられたかの様な爛れた顔だった。
その目には自分たちを犯罪者というのならば、クロスロード連盟軍は何なのかと訴える目をしていた。
「お前ら……銀翼の夜明け団は、世界に眠る兵器を使って世界の滅亡を目指してるだろう!! そんな事を俺たちが許すとでも思ってるのか!!」
「そうさ。昔のあるべき姿に戻す為だ………その為に お前には、俺の養分になってもらう!!」
銀翼の夜明け団の目的が世界転覆というのは、どんな理由があったとしても許せないとナミカゼ少尉は反論を述べた。
この男のオーラに皆が震えているというのに、ナミカゼ少尉だけは引く事なく、何ならば一歩また一歩と前に出ている。
「そんなに、お前は死に急いでるみたいだな………ならば、俺が地獄への切符を渡してやるよ!!」
「それなら、もうとっくに持ってるよ!!」
2人は再度、互いに向かって走っていく。
そして2人の拳は周りの軍人たちを、吹き飛ばすくらいの衝撃波が出るくらいの威力だった。
* * *
俺たちはハイウルフの巣穴を探検する為に、朝イチで起きて巣穴の洞窟までやってきた。
このハイウルフとの戦いで、俺の新しい愛剣である《エルード》の切れ味を試そうと思っている。
「良いかい!! ハイウルフは舐めてかかると確実に、重症以上の事が起きる………絶対に浮かれない様に!!」
「ミナト様、分かりました!!」
「分かったわん」
「分かったにゃ……」
「了解でござる!!」
「はい……」
全員に釘を刺す様に、ハイウルフの危険さを伝えて、全員が理解したのを確認して俺も洞窟の方を見る。
そして周囲探知を使って、中にいるハイウルフの数を入る前に調べておく。
「んー、これは……」
「どうかしたんですか?」
「いや、ハイウルフの数が想定したよりも少なくて………」
「でも、少ない事は良い事ではないんですかわん?」
「まぁ全部の数が、これなら問題ないけど………もしかしてら、狩に出てる奴らがいるかもしれない」
周囲探知に引っかかった数が思っていたよりも少なく、俺は少し引っかかるところがあった。
それは、もしかしたら中に入った後に、狩りから帰ってきた奴らに挟み撃ちにされるのではないかという事だ。
その場合は俺がいると言っても、洞窟の中は狭く全滅する可能性が出てきてしまう。
「エッタさん。これは、どうしようかね?」
「それじゃあ狭い洞窟の中では戦闘のやりずらい、私とシュナちゃんが外で見張っておきますか?」
「確かに、それはありがたいけど………シュナちゃんも行きたいんじゃ無いのかい?」
「ん? 私は別ににゃ……カエデが盛り上がってたから、それに賛同してあげてただけにゃ」
「そ そうかい? それなら、ここはエッタさんたちに任せる事にしようかな」
「任せられました!! どんと大船に乗ったつもりで、私たちに任せて下さい!!」
狭い洞窟では後衛職は戦いづらいからと、エッタさんとシュナちゃんが洞窟の入り口を見張る事にした。
それならば心配は無いだろうと俺の不安は払拭されて、残りの3人を引き連れてハイウルフの巣穴に入っていく。
「居たぞ。3匹か……まずは俺から出る」
「了解したでござる」
「分かったわん!!」
「はい……」
洞窟に入って直ぐに3匹のハイウルフを発見した。
狭い洞窟では同時に戦うのは無理なので、まずは俺から前に出て剣の試し斬りをする。
「このエルードは、どんな力を持ってんのか………試してやろうじゃ無いか!!」
「がぅ? ガルルルルル!!!!」
俺は鞘からエルードを抜き取ると、ハイウルフに向かって歩みを進めていく。
するとハイウルフの方も気がついて、3匹のうちの1匹が俺に向かって走ってくる。
そのまま俺はスッと体をハイウルフの横にズラしながら、剣を振るうとハイウルフの体が横に真っ二つになった。
「な なんだ!? こんな簡単に、ハイウルフが斬れるのか………切れ味とかってレベルじゃ無いな」
「凄いでござるな………」
あまりの切れ味に引くくらいの名刀だった。
1匹がやられた事に気がついて、残りの2匹も俺に向かって走ってくるのである。
「今度は、魔法を流してやってみるか!!」
・スキル:高速移動魔法Level2
・スキル:斬撃魔法Level2
――――残像の太刀――――
高速移動しての斬撃を繰り出してみると、剣が嘘かという程に魔力を良く受けてくれた。
そのまま一瞬にして、残りの2匹を瞬殺した。
あまりの名剣振りに、俺は買った店の店主に感謝すらしているレベルである。
「それじゃあ、今度は拙者が行くでござる!!」
「よしっ!! ルイちゃん、行ってこい!!」
「出陣でござる!!」
今度はルイちゃんが刀を抜いて、俺と同じ数のハイウルフが現れた。
ここでは羽と尻尾が邪魔だと判断して、ルイちゃんは尻尾と羽を締まって刀を構える。
「ガウガウっ!!」
「直ぐに楽にしてやるでござる………切り捨てごめん!!」
・火魔法Level3《ファイヤーエンチャント》
・高速移動魔法Level3
――――頭尻取り――――
「タンヤオ!? 麻雀の役……」
ルイちゃんが繰り出した技は、何と現代でもある様な麻雀の役の名前が付いた技だった。
技名にも驚いたが、さらに驚いたのは襲いかかった3匹のハイウルフの体が3つに切り分けられていた。
その技の威力にも技名にも驚きだ。
さすがは男を何人も、たった1人で相手にして倒し切るだけの力はある。
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