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社畜から卒業したんだから異世界で自由を謳歌します  作者: 灰谷 An
第3章・残念なドラゴンニュートの女の子
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063:何もない日の過ごし方

 俺はツァリーヌ王国の最初の街で、武器を調達する為に武器屋に足を運ぶと良作の名剣を紹介された。

 刃を見たら引き込まれる何かを感じたので、これも運命かと良作の《エルード》を購入する事に決めた。



「俺は、これを買うとして………ルイちゃんの欲しい鎧はあるのかな?」


「そうでござるなぁ。拙者が欲しいのは、侍が着る様な甲冑が欲しいんでござるけど………」


「おっ? お嬢ちゃんは、侍の甲冑が欲しいのか?」



 俺の目当てのモノが買えたので満足したが、ルイちゃんが欲しがっている鎧はあるのかと聞いた。

 すると侍が着る様な甲冑が、ちょうど店に置いてあると言って店主の男は、またも店の裏に走って取りに行くのである。



「そんなに良いのがあるのかな?」


「中々に甲冑というのは、何処にでもあるものじゃないでござるからなぁ………日ノ国は鎖国国家でござるから」


「確かに、それなら外に出るのは相当珍しい事だろうな」



 日ノ国は鎖国をしている国な為に、そこからモノが出ているのは相当珍しい事である。

 その為にルイちゃんは、甲冑とかは諦めようと思っていたが、ここで見つけられるのなら良いとワクワクしている。

 そんなこんなで待っていると、木箱を持って小走りで戻ってきてルイちゃんの前に置いた。



「これが、ウチにある甲冑だ。こっちも一応は、最上級の甲冑だから、それなりに値段は高くなるぞ」


「取り敢えず見せてもらおうか」


「そうでござるね」



 ルイちゃんが緊張しながら木箱を開けると、そこには和と洋が綺麗に半々の甲冑が入っていた。

 日本の甲冑かと言われれば、なんとも言いづらいところだが俺がルイちゃんの顔を見てみると目をキラキラさせていた。

 意外にも気に入っているのが見て取れるので、本人が気に入っているのならば問題ないかと納得する。



「それじゃあ、ここは俺と支払いは一緒で」


「そんなの申し訳ないでござる!! 支払いなら拙者、自らいたします故!!」


「そんなの気にしなくて良いんだよ。どれだけ金を持ってても使い道がなきゃ、ただの邪魔なモノだからな」



 気に入ったのなら買った方が良いと、俺は店主の男に俺の剣と一緒に支払いを頼むと、ルイちゃんは武士に情けはいらないと断ったが俺が払うと頑なに奢ると言う。

 するとルイちゃんの方が折れてくれて、俺に頭を下げて御礼を言うと俺の支払いを傍で見ている。



「はい、これ甲冑ね」


「あ ありがとう!! あっ!! でござる!!」


「そんな無理して、ござる語にしなくて良いと思うけど………ともかく喜んでくれて良かったよ」



 ルイちゃんに買った甲冑を渡すと、おもちゃを買ってもらった子供の様に目をキラキラしてテンションが上がっている。

 そんな喜んでいるルイちゃんを見て、俺はそれだけで買って良かったと穏やかな気持ちになって、エッタさんはと自然な感じで視線をエッタさんの方に移す。

 エッタさんはあるコーナーを見ており、なにを見ているのかと思っているとエルフの村で作ったコーナーだった。



「エッタさん、何か買おうか?」


「えっ!? い いや、大丈夫です!! それよりも、この後はカフェとかに行きませんか?」


「カフェ? ここら辺に良いところってあるのかなぁ……」


「ここに来るでに、良さそうなところがあったので、そこに行ってみませんか?」


「それじゃあ、そこで昼食でも取ろうか!!」



 エッタさんが少し心配になったので声をかけてみると、誤魔化すかの様に話題を変えて話を進める。

 話を変えると言う事は触れて欲しくないと言う事、そこを無理矢理にほじくるのは男としてもダメな事だ。

 ならば、そんな気持ちにさせない様にさせるのが、男としての度量という事では無いだろうか。

 という事で俺たち3人は武器屋を出た後に、エッタさんが行きたいと言っていたカフェに入る。



「さてと、ここのオススメとかってありますか?」


「キノコ料理が、特にオススメですね」


「おっ。エッタさんってキノコ料理が、好物だったよね?」


「そうです!! 覚えててくれたんですね!!」



 このカフェの名物は、エッタさんが好物のキノコで、俺が覚えていた事にエッタさんは好感を持ってくれている。

 とりあえずはオススメしてもらったモノを全て出してもらうと、エーブルの上がキノコ料理で溢れかえった。

 食べてみると全て美味しく久しぶりの休日も相まって、とても落ち着くと思っていると、隣に座っているエッタさんも幸せそうに食べているので笑みが溢れる。



「アレって、シュナちゃんたちだよな?」


「そうですね。とても楽しそうで………」


「まぁ心配ではあるけど、イローナちゃんがいれば問題はなさそうだな」



 俺たちが食事をしていると、店の前をシュナちゃんたちが騒ぎながら通っていたので心配をしていた。

 しかし少し離れたところからイローナちゃんが、保護者の様な貫禄で見てもらっているので心配はなさそうだと食事を進める。



「それで、これからは何をしたい?」


「もう少し街の中を散策しませんか?」


「そうでござるね!! この街にしか無い雰囲気というのを楽しむのが良いでござる!!」


「そうだね。それじゃあ、街の中を一周してから宿屋に戻るとしようか」



 俺たちは食事を進めながら、これからの予定を立てて食事を終わらせるのである。

 そして会計を終わらせてカフェの外に出ると、街の中が異様にザワザワしている事に気がついた。



「どうしたんだ? 何か騒がしい気がするんだけど………」


「なんでしょうかね? 祭り……っていうわけじゃなさそうですけどね」


「何やら女王様って言ってるでござるよ」



 気になる為に騒がしい元のところに向かってみると、人だかりができており道の真ん中が空けられていた。

 街の人たちの口から女王様と聞こえてくるので、まさか街にツァリーヌ王国の《エスカトリーナ3世》が来たのかと道の真ん中を見る。

 すると豪華な馬車が現れて、顔こそ見れないが小さな窓から手を出して街の人たちに手を振っている。



「アレじゃあ女王様って分からなく無いか?」


「ありゃ? 兄ちゃんは、女王陛下を見るのは初めてか?」


「え? ま まぁ冒険者なもんで、この国にも初めて来たんで」


「そういう事か。女王様の母国の宗教で、国の伝統行事以外で王族が顔を見せちゃいけないって風習みたいでな」



 この国の女王は嫁いできたが、宗教は母国のモノを引き継いでおり、その国の宗教では王族は国の伝統行事以外で市民に顔を見せてはいけないらしい。

 その為に建国記念日と女王誕生日以外で顔は見えないらしいのだが、女王陛下は国民思いらしく何日もかけて国中を定期的に回るらしいのである。



「確かに国中を回るなんて中々にできない事だよな………にしても国中の支持率は、馬鹿みたいに高いよなぁ」


「こんなにも国民思いなら当たり前なんじゃ無いでござるか?」


「まぁこれが監視とかじゃ無い限りはな………」



 俺は女王陛下が心から国中を回っているのならば、何の問題も無いと思ったが、これが国中を回って監視しているのだと考えたら、独裁が過ぎるなと感じたのである。

 それに対してエッタさんもルイちゃんも、何も言わずにウンウンッと首を縦に振って賛成してくれた。

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