055:金の暴力
傷だらけになったエッタさんの代わりに、俺はシャドーと戦闘する事になったが、俺の気持ちとしてはエッタさんを弄んでくれた事に怒りでいっぱいだ。
「エッタさんの借りは、俺が返してやるって事になったが………今の俺は怒りで頭がいっぱいなんだ。ちょっと力加減は出来ねぇから気をつけろよ」
「おいおい。そんなに大口を叩いて大丈夫か? これで負けでもしたら、お前は女の前で赤っ恥だぞ?」
「赤っ恥だと? 大口だと言ってると、テメェの方が痛い目を見る事になるぞ………テメェは覚悟をしておけ」
俺の怒りオーラを感じているのか、シャドーは少し冷や汗を出しながら強がりで俺を罵倒する。
強がってはいるが俺の体からの殺気を警戒して、攻めてくる事はなく距離をとって様子を見ている。
「俺に大口とか言っておきながら、お前は攻めて来ないのか? どっちが赤っ恥なんだよ………もっとエッタさんを弄んだようにかかって来いや!!」
「ちっ。面倒な奴が目を覚ましやがったな………」
シャドーは言われたままでは性に合わないと、影の中に入ると影の中から俺に向かってクナイを投げてくる。
だが俺は全てを見切って避けるやら、クナイを素手で受けるなど身体能力の高さを見せつけた。
「こんな飛び道具で、俺は倒せるわけねぇだろ………隠れてねぇで出て来いや!!」
「うっ!? 影をぶん殴りやがった!?」
飛び道具を投げてくるだけで、直接戦闘をして来ないシャドーに俺のフラストレーションが高まっていく。
その為に俺はシャドーが隠れている影に向かって、筋力増強魔法を使い地面をぶん殴った。
するとダメージが入ったのか、口から血を吐いているシャドーが影の中から現れたのである。
「影を殴るなんて、普通の人間がやる事じゃねぇぞ!!」
「俺が普通の人間に見えるか? そう見えるのなら、お前に悪役を担う力はねぇよ………テメェじゃあ無理だ」
「だから舐めんじゃねぇぞ!!」
・影魔法Level3《忍法、影掴み》
シャドーもガキの俺に色々と言われた事で、腹が立って影掴みを使って俺の動きを止めた。
そのまま俺の背後に回って首に狙いを定め、クナイで掻っ切る為に腕を振り上げるのである。
「だから、そう簡単に行くわけねぇだろ………お前らの方こそ、夢物語を語ってるようだぞ?」
・炎魔法Level1《ファイヤーボール》
・風魔法Level2《ストーム》
――火達磨――
「火だと!? 熱いぃいいいいい!!!!!!」
俺は動けないは動けないが、炎魔法と風魔法を使って自分の体を燃やしてシャドーを道連れにした。
それに巻き込まれたシャドーも火だるまになって、あまりの熱さから地面を転がって火を消そうとしている。
「これで終わりにしようや!!」
・オリジナルスキル『牛変化』
・炎魔法Level1《根性の拳》
―――焼ける肉―――
「バイソン部長のスキルか………」
俺は倒れているシャドーにトドメとして、バイソンになり腕に炎を纏ってシャドーの顔面を地面に殴りつけた。
そのままシャドーは気を失った。
その瞬間を持ってシャドーとの戦闘は、俺とエッタさんの勝利で幕を閉じる事になる。
「ふぅ〜……エッタさん!! 傷は大丈夫かい!!」
「はい、何とか。オリジナルスキルで、傷口は塞いだのですが魔力を使い過ぎて………」
「それなら、ここに残っていた方が良いね。後の事は、俺の方でやっておくから」
「ミナト様に伝えておいた方が良い事がありまして………カエデちゃんの両親について」
エッタさんはオリジナルスキルで傷口を塞いで治していたが、魔力を多く使ってしまって疲れ切っている様子だった。
それを見て俺は、ここからは俺が1人でやるからとエッタさんを休ませる事にしたのである。
そんな中で俺は、ここで初めてカエデちゃんの両親が既に殺されている事をエッタさんの口から聞いた。
「そ そんな事があって良いのかよ………あの野郎を本気で、俺がぶっ飛ばしてくるよ」
「わ 分かりました………私は一緒に行けませんが、心から無事を祈っています」
「あぁエッタさんも体を休めていてよ………」
後にエッタさんは、この時の俺の顔は恐怖で身震いするくらい怒った顔をしていたと話した。
それもそうだろう。
バラドンカンパニーがやってきた事は、人間のやる所業ではなく地獄に落ちるであろう行為だ。
* * *
数々の悪行を行っているバラドンカンパニーの社長で、世界犯罪者のエルマーは社長室で葉巻を吸いながら外を見ている。
「この国での仕事も終わりか………」
エルマーは葉巻を吸いながら、このルクマリネ王国での仕事はやりきったかと考えている。
そして目をゆっくりと閉じて、エルマーは自分の幼少期について思い出し耽っていた。
エルマーが生まれたのは、大大陸にある《ムサカ王国》の《金色の都》である。
「元気な子が生まれたわね………良かった」
「そうだっ!! この子が賢くなるように、名前は学者から取って《エルマー》にしないか!!」
「それは良いわね!!」
俺の名前は有名学者の《エルマー=ド=エピール》から取られたもので、とても未来優秀な子だと期待されていた。
しかし金色の都とは世界最大の金の街であり、この都市では貧富の差が世界最悪とされていた。
そしてエルマーが生まれる20年前から、金色の都では貧困層の大飢饉が起こってしまっていた。
「どうして……どうして、貴方が死ぬのよ!! 貴方が死んだら、私たちどうやって生きていくのよ………」
「おとうしゃん。どうかしたの?」
エルマーが3歳の時に、父親は不慮の事故で死亡した。
その日から元々苦しかった生活は、さらに困窮していきエルマーは家で1人ぼっちである事が増えた。
その為に家の中にあった古い絵本を読んで、ある夢を持つようになったのである。
「お母さん!! 僕、大人になったら伝説の大陸《マー大陸》を探す冒険家になる!!」
「うるさい!! そんな馬鹿みたいな話を2度としないで!! 誰のせいで、こんなに苦しいと思ってるの!!」
母親はエルマーに対して希望を持った夢を話された事で、夢じゃあ飯は食えないと、夢を語るなら金を稼げと言われた。
その日からエルマーは家に帰る事は少なくなり、スラムの悪い連中とつるむ様になり、次第に地頭の良さからボスになる。
「さっさと金の集金に行くぞ」
「うぃ!!」
この頃のエルマーは、そこまで金に執着があったわけじゃ無いが金貸の仕事をしていた。
そんなある日にエルマーは、ある女性と運命的な出会いをしてスピード結婚したのである。
「エルマーさん。今日もお仕事頑張って下さい!!」
「言ってくるよ、フェリーナ」
エルマーは本物の愛情に触れて、ここまで幸福な時は無いと感じていた。
しかし幸福な時も束の間、副社長だった男が金を持ち逃げしてしまい、元締めの犯罪会社に返す金がなくなってしまう。
「お願いします!! 金は必ず返しますので、少し待ってはもらえないでしょうか!!」
「いや、待てねぇよ。だが、ある条件で待ってやる………お前の妻を担保にする事だ!!」
元締めはエルマーの妻を担保に持って行ってしまった。
そこからエルマーは必死に働き金を稼ぐと、2年で完済したが妻は既に死んでいる事を伝えられた。
その日からエルマーは、金の亡者となり金さえあれば良いという思考になったのである。
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