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社畜から卒業したんだから異世界で自由を謳歌します  作者: 灰谷 An
第2章・モフモフで可愛いケモノっ子
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054:先祖返り

 カエデちゃんは両親が既に死んでいる事を知ると、放心状態から泣き叫び体からは近づけないくらいの電気を帯びていた。

 それを近くにいるシュナちゃんたちは、困惑の表情でエルマーも攻撃の手を止めて一部始終を見る。



「カエデに何が起きてるにゃ………」



 シュナちゃんは目の前で、何が起きているのか困惑しながらもカエデちゃんの事を心配している。

 すると一瞬、ピカッと眩しくて目を瞑ってしまうくらい光り、次の瞬間にはカエデちゃんの見た目が変わっていた。

 身長は元々の身長から40センチも高くなって2メートルは悠に超えているだろう、それに体の各所にモフモフの毛が生えており、獣人感が強くなっており爪も凶暴になっている。

 そして泣き腫らした為なのか、目からは涙と共に真っ赤な目をしている。



「ど どうなっているにゃ………」


「これは……まさか…」


「イローナちゃん、知ってるのかにゃ!?」


「これは多分だけど………()()()



 シュナちゃんが困惑している中で、イローナちゃんには見覚えがあって、それは《獣神化》だとシュナちゃんに話す。



「獣神化って、何百年も前に消えたはずにゃ!!」


「私も思った。でも先祖返りしたとしたら?」


「それなら、まぁ納得はするけどにゃ……」



 獣神化と聞いて驚くのは当たり前だ。

 なんせ獣神化とは、獣人が進化する中で消えてしまった特性のようなモノで、それが突然に現れたのだから信じられない。

 しかしイローナちゃんの考えでは、カエデちゃんが獣神化したのは先祖返りしたからではないかという。



「はっはっはっ!! その2人と遥かに劣ると思っていたが、獣人が過去に最強と言われていた能力を持っていたとは……これはこれで金が取れる内容じゃねぇか」


「もう悩まない………お母さんたちの仇を取るまでは」


「良いねぇ。その目は、最高じゃないか………もっともっと俺の事を昂らせてくれよ!!」



 カエデちゃんは全ての感情をエルマーを倒す事だけに集中させて、戦っている間だけは無心になろうと誓った。

 エルマーは両手を広げて面白いと大笑いしている。



「首を刎ね飛ばす!!」


「速いっ!! そうだよな……身体能力が上がらねぇとな!!」



 俺よりも遥かに速い速度でカエデちゃんは、エルマーに襲いかかると爆発に怯む事なくエルマーの腕を切り裂く。

 俺たちとエルマーの戦闘において、カエデちゃんが初めて体に傷を付けられたのである。



「お前を奴隷にすれば、番犬として高く売れるだろうな………さぁ!! もっとかかって来い!!」


「その生意気や口を切り落としてやる!!」



 カエデちゃんは速さを生かして、エルマーの爆撃などを避けて攻撃を入れ圧倒し始める。

 押されているのはエルマーの方ではあるが、エルマーはカエデちゃんを奴隷にすれば高く売れると金の話をしている。



「そんな余裕を出せるのは、今だけだからな!!」


・獣神化《雷獣の咆哮》


「雷の技も使えるのか!! お前の価値が、ドンドン上がっているな!!」



 カエデちゃんは口を開けると電気の方向を、エルマーに向かって放った。

 それをエルマーは真っ正面から高火力の爆発で、防ぐと獣神化はしたが上手く使いこなせていない事を思い知らせる。



「怒りに身を任せるのは良いが、まだまだ身体操作はできていないみたいだな!!」


・オリジナルスキル『爆発人間(ボマー)


―――建物爆弾(バティマン・ボム)―――


「ゔっ!?」



 エルマーは向かってくるカエデちゃんに対して、建物を爆弾に変えて爆発に巻き込ませる。



「もっと鍛えてから出直すんだな!!」


―――悪魔の右脚ディアブロ・ボム・ストライク―――


「クソ!!」



 エルマーは怯んでいるカエデちゃんに向かって、踵落としをしながら爆破させる技で地面に撃ち落とし倒した。

 獣神化しながらも勝てないのかとシュナちゃんは絶望したが、今はカエデちゃんを非難させるのが優先だと行動する。



「イローナちゃん、ここは撤退するにゃ……カエデを守りながら戦うのは、今の私たちは無理にゃ」


「そうだね。ここは逃げるのが先決だと思う……」


・雷魔法Level3《閃光の落雷フラッシュ・サンダーボルト


「また、この目眩しかよ………まぁ良いさ。どの道、この町で捉えて奴隷として高く売ってやるからな」



 イローナちゃんの雷魔法で、エルマーの目を眩ましているうちにカエデちゃんを連れて撤退する。

 エルマーは追う気はなく、懐から葉巻を出すとプハーッと葉巻を吸って、いずれは捕まえて高く売ると高笑いする。




* * *




 場所は変わってエッタさんと、シャドーの戦闘になるが、こちらでも獣人は殺したんだと聞かされた後だった。



「嘘でしょ……獣人を殺して遺体を売った? 貴方たちは、それでも人間なの………知能が無いモンスターと同じじゃない!!」


「あんなケダモノと同じにするなよ。俺たちは己の金の為に、この世から不必要な獣人を消してやってんだ………いや駆除と言った方が正解か?」


「この下衆やろう!!」


・風魔法Level5《風神の怒号(グリード・ハリケーン)



 バラドンカンパニーは獣人を駆除してやったんだと言って、エッタさんからモンスターと同じケダモノだと言われる。

 そして怒りからの高位の魔法を放つが、シャドーはスピードタイプで高位魔法を撃つまでに背後を取られて、エッタさんの両足にクナイが刺された。



「うっ!? 足……」


「どうしたよ? そんな強い魔法を持ってんのに、こんなクナイなんかで負けるのか?」


「う……うるさいっ!!」


「俺の影魔法の前では、そんな風なんて……ただの微風だな」



 シャドーは影魔法の影移動を使って、エッタさんを翻弄し高威力の魔法をスルスルと避ける。

 そしてエッタさんの方がダメージを喰らっていき、全身に切り傷だらけになってしまっている。



「さっさとトドメを刺してやるか!!」



 シャドーは、わざと致命傷を避けてエルフを痛めつけるという悪趣味な戦闘をしていた。

 しかし時間の無駄だと判断して、シャドーはトドメを刺してやろうと動き出す。



「おいっ。俺のエッタさんに何やってんだ?」


「お お前はっ!? もう目を覚ましてやがったのか………」


「俺の質問に答えろよ。俺のエッタさんに何をしてんだって聞いたんだよ!!」


「うわっ!?」



 トドメを刺そうとしたところで、シャドーは悪寒を感じて周りをキョロキョロすると2階の吹き抜けから俺が見ていた。

 エッタさんが痛ぶられているのを見た事で、俺は怒りで殺気を纏ったオーラを全身から出していた。

 そのまま俺は2階から飛び降りて、エッタさんとシャドーの間に立つとエッタさんの心配をする。



「ごめんな。こんな時に眠っちゃって……ここからは、俺がエッタさんの代わりに戦うからさ」


「体は大丈夫なんですか? さっきまで、あんなにぐっすりだったのに体が動くとは………」


「俺ってさ。案外、寝起きは良い方なんだよ………だから、今度はエッタさんが休んでてよ」


「ありがとうございます………」



 俺の代わりにボロボロになりながら、逃げる事なく戦ってくれたエッタさんを一生愛そう。

 そして俺の目の前にいる、愛するエッタさんを弄んでくれたシャドーを、エッタさんに手を出した事、絶対に後悔させてやる。

 そんな気持ちがシャドーに伝わったのか、ジリジリッと俺との距離をとってクナイを構え警戒している。

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