048:親友の為ならば
ゴブリンロードを倒したというのに、新たな問題であるカエデちゃんの両親が、バラドンカンパニーに連れて行かれるという事件が起こってしまっていた。
「ミナト様。直ぐに助けに行った方が良いのでは?」
「た 確かにそうだな!!」
エッタさんの脳裏には妹たちの事が過ぎり、早くしないと手遅れになると俺のケツを叩くようにいう。
それにハッとしたような表情を浮かべてから、俺は直ぐに助けに行こうと行動しようとする。
「助けに行くのは行くけど、バラドンカンパニーの本社って、どこにあるんだ?」
「そう言われれば、確かに知りませんでしたね………」
「それが分からなければ、助けようにも行動できない………誰か知っている人はいないのか?」
早速救出しに行こうと思ったが、バラドンカンパニーの居場所が分からなければ行動できない。
どうしたものかと思っていると、村長の側近らしき獣人が手を挙げて話し始める。
「それなら知ってますよ。バラドンカンパニーの人たちが、話しているのを聞いたんです」
「本当にっ!? マジでナイスじゃないですか!!」
「ナイス? まぁ耳だけは良いんで………それで場所っていうのは、このルクマリネ王国の首都です」
「首都というと確か……《カシーダ》だったか?」
その獣人曰く、耳が良いが為にバラドンカンパニーの人間たちが、自分たちの本拠地を話しているのを聞いたらしい。
俺は本当に良い仕事をしたと背中をバンバンッと叩いて、首都が《カシーダ》である事を確認する。
それが確認できたら、俺たちは日暮れになっていたが手遅れになる前にと行動する事にした。
「どうかしたのかにゃ?」
「シュナちゃんじゃないか!!」
俺たちが村長の家を出て行こうとした時に、シュナちゃんが入って来て状況を理解できていない。
「実はカエデちゃんの両親が、バラドンカンパニーに連れて行かれたんだ………今から救出しに首都に向かう」
「そうなのかにゃ!? カエデ……大丈夫にゃ?」
「心配ではあるけど、お父さんたちは強いわん!! だけど、それでも助けなきゃいけないわん!!」
「シュナちゃんは、ここに残っても良いよ? 両親も心配するだろうからね」
事情を知ったシュナちゃんは、カエデちゃんに寄り添って心配するが、カエデちゃんは気丈に振る舞う。
そこで俺はシュナちゃんの両親の事も考えて、残った方が良いと提案した。
「いや、私も行くにゃ。親友の両親が連れて行かれて、村で待っているなんて無理にゃ!!」
「シュナ……ありがとうわん」
「それじゃあ、全員でカエデちゃんの両親を救出しに行こう」
シュナちゃんの覚悟は決まっていた。
その目は戦う戦士の目をしており、親友の為ならば命をかけられると覚悟を感じられる。
それならば止めるのは失礼に当たるだろうから、俺も全力で2人を守れるだけの事はしようと思った。
* * *
場所は変わってルクマリネ王国の首都に変わる。
カシーダのある建物の裏口から、ローブを着た人間が数人入っていく。
そして豪華な社長室に通されると、その部屋には既に高そうなスーツを着た男がおり出迎える。
「良く来てくれたと言いたいところだが、今日は商談があるからって来たんだよな? 寄越して来たのは、下っ端の下っ端ってわけか?」
「残念ながら大幹部ではありませんが、幹部を務めさせてもらっている《ラズエル》と申します………貴方様が、戦争仕掛け人と呼ばれている《エルマー》殿ですね?」
―銀翼の夜明け団・幹部:ラズエル―
「あぁいかにも、俺がエルマーだが。そんなのでも団内では、幹部クラスというわけか………こちらとしては商談が、まともに進むのなら問題はないさ」
―バラドンカンパニー・社長:エルマー=フィーリッツ―
まさかの戦争仕掛け人と、銀翼の夜明け団の幹部が商談をする為に密会していたのである。
「最近では動きがありませんでしたので、こちらの家業は辞めたのかと思っていました………」
「ふんっ。国を乗っ取るのにも時間と金がかかるんだ………金がねぇと人間としての価値はねぇ。それは、お前たちも理解しているのだろう? お前たちのスペリアル魔石を高く買い取ってやってるんだからな」
「まさか私たちから買い取ったスペリアル魔石を、それ以上の値段で横流しをしているんでしょ? それなら儲かっていないとおかしい事になりますよ」
「ちっ。知ってやがったのか、食えねぇ奴らだよ………それで、今回の内容は何だった?」
なんとエルマーは銀翼の夜明け団から、スペリアル魔石を買い取って高値で転売行為を行っていたのである。
しかし転売していた事は既に、銀翼の夜明け団としては認知していたのだと明かされて頭をポリポリとかく。
痛いところを突かれたエルマーは、話を変える為にも本題に入ろうと今回の話し合いの内容を聞く。
「この首都にも銀翼の夜明け団の支部を置きたいと、グランドマスターが申しております」
「この街に支部を置きたいだと? 世界中にロッジを置いているのは知っているが、ここにも幅を広げたいのか?」
「銀翼の夜明け団は、現在世界中に支部、ロッジを保有しています………それも全て、いつクロスロード連盟軍に攻め込まれるか分からない状況です」
「ならば数を打って起きたいってところか………まぁ俺としては首都に支部を置きたければ、金さえ払ってくれれば問題はねぇ」
銀翼の夜明け団がエルマーに接触したのは、この首都にもロッジを置きたいからという理由だった。
銀翼の夜明け団のロッジは世界中に置かれているが、それは各地で魔術の研究やらをする為で、いつクロスロード連盟軍がロッジに家宅捜索しに来るか分からないからとも話した。
そこでエルマーは事情を聞いてからロッジを置きたければ、金さえ払えば許可してやると、ここで商談を持ちかける。
「こちらとしても、金を払う気はあります。しかし、それよりも良い話を持って来ました」
「金を渡すよりも良い話だと? そんな話があるわけねぇだろ。この世は金が全てだ、投資とかは話にならねぇぞ?」
「違いますとも、我々からはスペリアル魔石を《100kg》分を無料で差し上げます」
「なんだと!? それをタダでくれるだと………それだけしてもロッジを置きたいのかよ」
銀翼の夜明け団は金を渡すよりも良いものをやると話すが、エルマーは金を現物で寄越せと話した。
しかし金の代わりに渡すのが、スペリアル魔石を《100kg》分を無料で渡すというものだった。
その量をタダでくれるのかとエルマーは立ち上がるくらいに驚き、ハッとした表情をしてから咳払いをして席に座る。
「それくらいの我々としては、重大な事だと理解していただければと思っております」
「まぁ100kgをタダでくれるっていうのなら、こちらとしても文句のつけようはねぇな………それなら商談に乗ってやっても良いぞ」
「了承していただき、誠にありがとうございます………」
今回の商談は双方に徳がある状態で終了する。
商談が終わるとラズエルは、一礼をしてからエルマーの社長室を後にしようとする。
「グランドマスターという奴に伝えておいてくれ。今回の商談は中々に良いものだってな」
「まぁ気が向いたら伝えておきますよ……」
エルマーはグランドマスターに伝えておいてくれと、イジるようにいうがラズエルは少し睨んでから部屋を後にする。
ご愛読ありがとうございます!!
宜しければ、感想や御意見をいただければ幸いです!!
こちらのTwitterの、フォローもよろしくお願いします。
↓
https://mobile.twitter.com/yusaki_noa




