047:新たな問題
ルクマリネ王国と《ツァリーヌ王国》の国境に、クロスロード連盟軍の123番支部が置かれている。
「マレーボ大佐、失礼致します!! マレーボ大佐の耳に、入れておいた方が良い事がありまして………」
「なんだ? 上層部が、俺に何かを指示して来たのか?」
「いえっ!! 海賊《ジャック=ラムズ》が所持していた、聖剣を乗せた船が銀翼の夜明け団に襲われました!!」
「なんだと!? 聖剣は聖人様のところまで運ぶブツだろが……しかもジョズエ中佐が指揮官だったよな?」
この123番支部の最高責任者は、この《ライラック=マレーボ》大佐である。
マレーボ大佐の耳に、ジョズエ中佐が護衛している船が襲われた事が入る。
「それで船は、どうなったんだ!! アレが銀翼の夜明け団に、奪われなってなると聖人様たちが黙っちゃいないぞ!!」
「それが襲撃を受けた船は、完全に沈没し生存者は居ないとの事です………聖剣も奪われた模様」
「さ 最悪の結果じゃないか……中佐クラスの人間が死に、聖人様から求められていた聖剣が、銀翼の夜明け団に奪われるなんて」
起こりうる中で最悪の事態だとマレーボは、腰が抜けてイスにドサッと座り込む。
そして頭を抱えて、これからの事を死に物狂いで考える。
「急いで捜索隊を結成し、あの銀翼の夜明け団を追うんだ!! そして聖剣を何としても奪い返せ!!」
「はっ!!」
このまま奪われたままではいけないと判断して、マレーボは全身全霊をかけて銀翼の夜明け団の捜索を行う様に命令した。
しかし奪い返したとしてもクロスロード連盟軍の船を、銀翼の夜明け団が襲った事は世界的な大ニュースである。
* * *
俺の高威力魔法によって苦戦を強いられながらも、Sランクのゴブリンロードを仕留める事に成功した。
俺は疲れたからと溜息を吐いて、ひと段落をつけてから木の上で見ていたバラドンカンパニーのシャドーを見る。
「よし、次はテメェだぞ?」
「な なにっ!? アレだけ優勢だった、ゴブリンロードを魔法1発で倒しやがった………ちっ。面倒な事になりながったぜ」
「逃げるのか? 俺とタイマンでやろうや」
「命を捨てるよりもプライドを捨てた方がマシだ!!」
俺の眼光に負けたのか。
シャドーは影魔法で影の中に入ると、俺との戦闘を避けて逃亡していったのである。
まぁ今の仕事はカロニ村からゴブリンたちを排除する事で、あの男を倒す事ではない。
「俺も他のゴブリンを倒しますかね………って思ったけど、そんな必要は無かったか」
俺もゴブリンの残党狩りをしようと振り返ると、カエデちゃんたちが残党狩りを終了させていた。
このカロニ村からゴブリンたちは一掃された。
「ご ゴブリンたちに勝ったぞぉ!!」
『うぉおおおおお!!!!!』
ゴブリンが居なくなった瞬間に、獣人の兵士たちは涙を流しながら喜んでいた。
シュナちゃんは冷静な感じで喜んでいたが、カエデちゃんは顔をクシャクシャにしながら喜んでいる。
それを俺、エッタさん、イローナちゃんは良かったという眼差しで見つめているのである。
「ボーッとはしてられないな!! 直ぐに怪我人を治療しないと手遅れになるぞ!!」
俺は少し待ってから全員に怪我人の手当てをしなければと、促して直ぐに行動させるのである。
そしてゴブリンを討伐した日に、村を復権する為、村人は村に帰ってきた。
ゴブリンロードを倒した立役者として、俺たちは村長の家に呼ばれる。
「この度は、村の危機を救っていただきありがとうございますわん」
「いえいえ。カエデちゃんとシュナちゃんの故郷を助けたいと、俺が思って勝手になった事なので」
犬人族のだいぶ高齢な村長さんは、涙を流しながら俺の手を掴んで感謝を伝えてくれた。
「本当に、ミナトさんは強いんだわん!!」
「カエデちゃん、そんなに褒めないでよぉ」
「この感謝は、どれだけ伝えても伝えきれないわん!!」
カエデちゃんはピョンピョンッと飛び跳ねながら喜んでいる。
この光景を見ただけでも俺は、この村を助けて良かったと思えている。
「この村には、もう村人たちは帰って来ているのか?」
「もちろんだわん。村人は近くの村に避難していたが、もう帰って復興を行なっているだわん」
「それならシュナちゃんと、カエデちゃんは ご両親に顔を見せて来なよ。とても心配していると思うからさ」
「良いんですかわん?」
「良いに決まってるだろう。ご両親は絶対に心配しているから、顔を見せて安心させてあげな」
「お言葉に甘えるにゃ……」
俺はカエデちゃんとシュナちゃんの2人に、家に帰って両親に顔を見せて来なよと提案する。
パァッと2人の顔は明るくなって、俺に頭を下げてから2人は村長の家を後にするのである。
「エッタさんとイローナちゃんも、ご両親に会いたくなったんじゃないのかい?」
「そうですね。少し見たくなりましたが、冒険心っていうのも芽生えて来ましたよ」
「私は別に、昔から親離れしているので………」
「意外にも2人ともドライなんだね」
俺はエッタさんの腕を肘で小突いて、両親に会いたいんじゃ無いかというと照れながら話した。
イローナちゃんは親離れしているからとドライな対応を見せ、俺はクールなんだと思った。
俺たちが、そんな会話をしている時に、カエデちゃんたちは走って実家に戻るのである。
「お母さん、お父さんっ!! あれ? 2人とも、まだ帰って来て無いのかなわん………」
カエデちゃんが家の扉を勢いよく開けて中に入ると、そこにはシーンッとした風景が広がって誰もいない。
まだ出かけているのかとカエデちゃんは思って、両親が働いている店に行こうと家の外に出ると、そこには隣に住んでいるオバチャンが立っていた。
「か カエデちゃん………カエデちゃんが帰って来たって聞いたから、話さなきゃと思って来たんだぴょん」
「話さなきゃいけない事かわん? なんだろうわん………」
「カエデちゃんの御両親は、バラドンカンパニーの人間に奴隷として連れて行かれたの………」
「えっ……そ それは本当ですかわん!?」
オバチャンは言いづらそうにモジモジしながらも、カエデちゃんの両親がバラドンカンパニーに奴隷として連れて行かれな事を話した。
それを聞いて頭の思考回路が止まってしまって、少し黙ってから本当なのかと驚くと、オバチャンは首を縦に ゆっくりと振って事実である事を確認する。
「ぶ 無事ではあるのかわん!?」
「それは分からないぴょん……御両親が、バラドンカンパニーの人たちに抵抗したら連れて行かれてしまったんだぴょん」
バラドンカンパニーはゴブリンロードを村に話すだけではなくて、獣人を奴隷として連れていくのも作戦のうちだった。
「これはミナトさんに話さないといけないわん!!」
カエデちゃんは俺に話さなければいけないと、家を出てから村長の家までダッシュで向かうのである。
その時、俺は村長の家で食事をとっていたので、突然扉が開いてゼェゼェと息を切らせたカエデちゃんが来て驚く。
「ど どうかしたのかい? そんなに慌てて………」
「お母さんと、お父さんがバラドンカンパニーの人たちに奴隷として連れてかれたって!!」
「なんだと!? カエデちゃんの両親を………」
俺は食べていたものを吹き出して、両親が連れて行かれた事に驚いたのである。
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