044:バイソン部長
俺たちはザザ森林のカロニ村に向けて出発すると、中間地点の村で補給をしようとした時に、俺はある事に気がついたのである。
「アレは、もしかしてゴブリンとの戦闘で怪我を負った………」
「そう見たいですにゃ。ゴブリンロードが率いている軍は、相当な力を持っているにゃ………」
「死者数も少なくは無いだろうな。俺たちは、こんなところで休んです暇は無いか………」
俺は村で包帯だらけになっている人たちを見て、こんなところで休んでいる暇は無いと感じる。
その為に直ぐに出発しようとしたら、進行方向から馬車に乗った人間たちが何人もやって来た。
「おいっ!! ここの村は今日から《バラドンカンパニー》が、取り仕切る運びになった!!」
「さっさと村長を出せや!!」
やって来たのは《バラドンカンパニー》という組織らしいが、何やら この村を取り仕切るとか言い始めた。
こんな忙しい時に面倒な事が起きたと俺は溜息を吐く。
しかし《バラドンカンパニー》と名乗る連中から、俺が聞いた事ある名前が飛び出す。
「この命令は社長である《エルマー=フィーリッツ》様からのお達しである!!」
「エルマーだと!? ジャックを裏で操っていたっていうフィクサーじゃないか………」
「なんだ、お前はエルマー様を知っているのか? なら話は早いか、ここから先に通りたくば金を払え!!」
「なんで、テメェらに金を払わなきゃいけないんだよ!!」
ジョズエ中佐から名前を聞いていた戦争仕掛け人が、この馬鹿野郎たちの社長らしい。
こんな会社は俺が勤めていた会社と同じくらいのブラック企業なんだろうなと容易に想像がつく。
そんな馬鹿野郎たちは俺に対して、先に進みたいなら金を出せの恐喝まがいな事をしてきた。
「今日から俺たちの村なんだ。ここから先に進みたいなら、通行料を取る事にしたんだよ!!」
「そんなに金が欲しいか。お前らのトップは、金の亡者なんだらうな!! というか、こっちも時間はねぇんだ………ちょっと避けてもらえるかな!!」
俺は面倒な事で時間を使って仕舞えば、ゴブリンとの戦闘で多くの被害が出てしまうと焦りがある。
その為に俺は馬車を降りると直ぐに倒してしまおうと、手をポキポキさせながら近寄っていく。
「ちょっと退けろや。さっきから話聞いてれば、何を社長に大きな口を叩いてんだ?」
「ば バイソン部長!?」
俺と馬鹿野郎たちの戦闘が始まりそうになると、馬鹿野郎たちの後ろから一際大きくゴツい男が現れた。
その男は部下の人間たちから《バイソン部長》と呼ばれているらしく、会社での階級は部長なのだろう。
俺は面倒なのが増えたと思って後ろを見ると、エッタさんたちも心配そうな表情で、こちらを見ているのである。
「大丈夫ですか? 私たちも手伝った方が………」
「いや。エッタさんたちも疲れてるだろうから俺の方で、何とか片付けておくよ………」
「私も手を貸します………」
「うおっ!? イローナちゃんか………そんなの良いのに。まぁ手を貸してくれるなら頼もうかな」
俺がバイソン部長と戦闘をやろうと来た瞬間に、隣から声がしてビクッとしたが、立っていたのはイローナちゃんだった。
イローナちゃんはアカシア島では助けられただけなので、今回は手伝いたいと名乗りを上げてくれた。
そんな子の手伝いたいというのを断るなんて、俺にはできないので手伝ってもらう事にする。
「俺が あのデカブツとやるから、イローナちゃんは周りの奴を頼めるかい?」
「全然問題ありません………」
イローナちゃんには雑魚狩りを任せて、俺はバイソン部長との一騎打ちに集中する事にした。
任せると言ってから数秒の間が空いてから、俺はバイソン部長に向かって殴りかかる。
「さっさと帰れデカブツっ!!」
・筋力増強魔法Level2
「生身で勝てると思うなよ!!」
・オリジナルスキル『牛変化』
俺が殴りかかろうとするとバイソン部長は、オリジナルスキルを使ってバイソンと人間のハーフの様な姿になった。
身長も体格も普通の人間の時とは異なり、2周り近くもデカく分厚くなったのである。
「そんなオリジナルスキルもあんのかよ………」
「かっかっかっ!! 生身の人間で、俺に勝てると思うんじゃねぇぞ!!」
「じゃあ、小手調べさせてもらうわ!!」
・炎魔法Level1《ファイヤーボール》
・風魔法Level2《ストーム》
――――炎龍の吐息――――
殴って見たがバイソンの筋肉では、そう簡単にダメージは与えられないのだと一撃で分かる。
ならばと耐久値を調べる為に、火炎放射器以上の威力の炎でバイソン部長を炙ってみた。
「暑いじゃねぇか!! こんなもん人に向けるもんじゃねぇ」
「やっぱり無傷じゃねぇかよ……どれだけの筋肉してんだよ」
「今度は、こっちの番だな!!」
――――牛の直進突進――――
バイソン部長は俺に向かって凄まじい速度で、タックルをかまして来て俺は吹き飛んでいった。
本当に闘牛みたいに来た事に少し驚いたが、時間が無い中で思っていたよりも強く苛立ってくる。
「ちょっとはやるデカブツみたいだな!! 急いでる中では、うざったらしい野郎じゃねぇか………」
「かっかっかっ!! 言っていろ。ここを通りたければ通行料を払え………というか、社長を侮辱して生きてられるかよ」
「そうかよ。そんなに俺を倒したいなら本気でやれよ………やるなら本気で倒しにこいよ」
「ふっ。そうか、そんなに強がりたいか……ボコボコにして後悔させてやる」
――――牛の直進突進――――
俺はバイソン部長に向かって戦うなら殺す気で来いと挑発をした。
それに乗ってバイソン部長は、俺に向かって牛の直進突進で突進してくるのである。
「そればっかりで芸がねぇだろ!!」
・炎魔法Level1《ファイヤーハンド》
・闇魔法Level2《ドレインハンド》
――――炎魔の拳――――
「ぐはっ!? 拳なんかに負けるだと!?」
「炎魔の拳だからな!! おら、もっと行くぞ!!」
・炎魔法Level1《ファイヤーハンド》
・闇魔法Level2《ドレインハンド》
――――地獄の連打――――
「こっちも負けてやられるか!!」
――――蹄の連打
俺とバイソン部長は互いにラッシュ技で殴りまくり、ここからは根性比べに等しいのである。
バイソン部長の方は体力が尽き始めて、俺の攻撃が当たり始めると全身が左右に揺れながら俺に殴り飛ばされる。
「どうじゃあ!! 根性が、こちとら違うんじゃい!!」
「くっそ……こんなはずじゃ」
「立つのか? それとも逃げるか?」
「ちっ。社長に報告して、テメェの事をバラドンカンパニーの全てで殺してやるよ!!」
なんとか気は失っていなかったバイソン部長に、まだやるのかと戦意について聞いてみると、既に戦意は失っていた。
捨て台詞を吐く様に立ち去ると、俺はイローナちゃんは大丈夫かと気になって見てみる。
「お おぉ……まさか無傷で勝つなんて凄いなぁ………」
イローナちゃんは無傷で5人以上いた馬鹿野郎たちを、ボコボコにして地面に倒していたのである。
俺は強さを見誤っていたので、見た瞬間に情けない声を出して驚いてしまった。
ご愛読ありがとうございます!!
宜しければ、感想や御意見をいただければ幸いです!!
こちらのTwitterの、フォローもよろしくお願いします。
↓
https://mobile.twitter.com/yusaki_noa




