042:手繰り寄せた糸
ジャックは殴り飛ばされると、俺に優位を取られた事で少し焦ってオリジナルスキルを使い殴りかかってくる。
「舐めるなよ!! このガキがぁ!!」
「何回でも吹き飛ばしてやるよっ!!」
ジャックのパンチを俺は避けると、腹にパンチを連発して痛みに強いはずのジャックを後退りさせる。
グッと痛みに耐える顔を見る事なく、さらに距離を詰めて俺は炎魔法と闇魔法の合体魔法を使う。
「痛みを楽しめ!!」
・炎魔法Level1:ファイヤーボール
・風魔法Level2:ストーム
――――炎龍の吐息――――
「舐めるな!!」
俺の拳をジャックはプライドからか、避ける事なく顔面に受けると俺の拳は止まった。
「ふっ。この程度のこうげ……なに!? パワーが上がってるだと!?」
「舐めんじゃねぇよ!!」
俺は拳を振り抜いた。
俺のパワーが上がった事で、ジャックの顔は右側にブンッと振られて体勢が崩れる。
「こんなもんで終わらねぇぞ!!」
・筋力増強魔法Level2
・炎魔法Level1《ファイヤーエンチャント》
――――爆烈連打――――
「こんなところでぇえええええ!!!!!」
俺はジャックに目掛けて渾身のラッシュをかけた。
それを空中で避けられずに、ジャックは全身で俺の攻撃を受けて耐えられるダメージの量が遥かに超えた。
そのまま空中で気を失い俺によって殴り飛ばされると同時に、ジャックとのリベンジ戦を勝利した。
「見たか、この野郎ぉおおおおお!!!!!」
俺はジャックが気を失ったのを確認すると、地面に仰向けで倒れ込んでガッツポーズと共に大声で勝利を喜ぶ。
終わってみたら全身が痛くて、起き上がるのが精一杯でありエッタさんのところまでは頑張ろうと歩き始める。
「おぉ。まさか若い子に、この怪物が負けるとはねぇ………」
「だ 誰だ!?」
俺の後ろから声が聞こえたので、警戒しながら振り向くとマントを付けた男が気を失っているジャックを突いていた。
その男から殺気は感じられなかったが、気配に気が付かなかったので距離を取って警戒する。
「そんなに警戒しなくても良いぞ。この怪物を拿捕するのに、手伝っていただき感謝する………もしかして君が、エルバーグ王国で魔人化したアランを倒したルーキーか?」
「そ そうだが………アンタは誰だ!! ジャックの味方か!!」
「だから拿捕しに来たと言ったろ………しかし流石は、アランに勝っただけはあるな」
「さっさと名乗れよ!!」
「おっと、これは失礼した………俺はクロスロード連盟軍で中佐をさせてもらっている《ジョズエ=マレ》だ」
この男はジャックを拿捕しにやって来たらしく、クロスロード連盟軍の《ジョズエ=マレ》中佐らしいのである。
俺はクロスロード連盟軍の人間を生で見るのは初めてなので、こういう人間たちの集合なのかと怪訝の目で見る。
「とにかく君に、ジャックの懸賞金《大金貨20枚》だ」
「そんなに高いのか。さすがは大海賊だ………」
「こいつが大海賊か……いや、君を馬鹿にしたわけじゃ無い。確かに強いが、ここまで大きくなったのは、ある人間の下に着いたからだって事だな」
ジャックの懸賞金は日本円にして2000万円と高額だった。
流石は大海賊だとボソッと呟くと、ジョズエは少し笑ってジャックが大きくなれたのは、ある人間の存在があったからと話す。
「ジャックは誰の下で働いていただと? あの性格の人間が、人の下に着くとは思えないな………」
「単純な事さ。こいつは野心の為なら、プライドを捨てられる人間だって事だ………そして、こいつの上司は戦争仕掛け人と呼ばれている犯罪者《エルマー=フィーリッツ》だ」
「エルマー? 全くもって聞き覚えが無いな………」
「駆け出しなら仕方ない。エルマーは、種族や国に関係なく依頼を受けたら戦争の火種を作る………それ故に戦争仕掛け人と呼ばれている」
ジャックの上には戦争仕掛け人と呼ばれる男がいるらしい。
そして戦争仕掛け人は、種族や国に関係なく金さえ貰えれば仕事をする事で裏稼業の人間からしたら有名らしい。
「ジョズエ中佐っ!! 聖剣は保護いたしました!!」
「そうか。キチンと聖地まで護衛しろ………」
「あ あと1つ聞きたい事がある」
「なんだ?」
喋っているところにクロスロード連盟軍の兵士がやってきて、ジャックが盗み出していた聖剣を保護したという。
俺は聖剣という言葉を聞いて、聞いておきたい事があるのだと思い出してジョズエに質問する。
「聖剣も そうだが、この島に眠る兵器って何なんだ?」
「ふっ。やっぱり気になるか………だが、残念ながら聖人様以外は知る必要は無い………お前も俺もな」
「しかし!!」
「そこまでだ!! これ以上の詮索は、世界連盟に消される可能性があるぞ………それじゃあ、さっさと手当しろ」
俺が聖剣やアカシア島に眠る兵器について聞くと、ジョズエの表情がスッと変わって何も話してくれなかった。
そのまま俺は兵士に救護班のところまで案内してもらうと、エッタさんたちも救護してもらっていた。
「ミナト様っ!! ミナト様も無事でしたか………良かった」
「あぁ何とか疲れはしたけど、命には別状ないよ………エッタさんも、シュナちゃん・カエデちゃんも大丈夫かい?」
「私は大丈夫だわん!!」
「私もにゃ……」
「私も大丈夫です!!」
俺はミア&クロエとの戦闘で大怪我をしていない3人を見て、自分の事よりも遥かに安堵した。
そして3人も俺の事を心配してくれていたのかと実感すると、前世では感じられなかった温かい気持ちで満たされる。
「とにかくはアカシア島に戻ろう………少し休んでから、中陸のシュナちゃんとカエデちゃんの故郷を目指そうか」
「そうですねわん」
「分かったにゃ」
これからはアカシア島に戻って休んでから中陸に向かう事にしたのである。
アカシア島ではセイラちゃんたちが迎えてくれて、俺たちの手当てと休む場所を準備してくれていた。
「ミナトさん。ご無事で戻って来てくれて良かったです!!」
「心配してくれてありがとうね。なんとか4人とも無事で帰って来られた………」
「ご飯とかも用意してあるので、ゆっくりと休んで下さい」
セイラちゃんの目には少しの涙を浮かべており、本当に心配してくれていた事が伝わる。
そのまま俺たちは自室に戻って休息を取る事になるが、俺が部屋に戻って少しすると部屋をノックされる。
前日の様にエッタさんが来たのかと思って扉を開くと、海賊たちの根城から助けた人間の女の子だった。
「君は……神殿で助けた子だね? 良かった、目を覚ましたみたいだね」
「助けていただきありがとうございます。お礼が言いたくて、休んでいるところすみません………私は《イローナ=コバル》って言います」
「いや、全然気にしていないから良いよ。イローナちゃんね? それでイローナちゃんら、どこから連れて来られたんだい?」
「それは、ちょっと言いたくはありません………助けていただいなのに申し訳ありません」
「言いたく無いなら良いさ。人には人の事情ってのがあるんだからね」
この女の子はイローナちゃんというらしく、それなりの事情で連れて来られた場所は秘密にしたいと暗い顔を話す。
そこまで追求するつもりはないので、深くまでは入り込まない様に気をつける。
「それで、これからミナトさんたちの冒険について行っても良いでしょうか? 家族も帰る場所も無いので………」
「ついて来たいの? 俺は別に構わないよ。これから獣人の村に行くから着いてくるかい?」
「はいっ!!」
俺たちの冒険にイローナちゃんが加わった。
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