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社畜から卒業したんだから異世界で自由を謳歌します  作者: 灰谷 An
第2章・モフモフで可愛いケモノっ子
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033:潰されたプライド

 最後の砦であったエッタさんも倒れ、ミナトパーティーはジャック大船団に敗北を喫してしまった。

 ジャックが自分の目で根城に入って来た人間たちが、全員負けたのを確認してからミア&クロエと話し始める。



「そいつらで俺の縄張りに入ったのは全員だな? たく、面倒なネズミが入り込んだよなぁ………」


「クロスロード連盟軍よりかはマシかと………」


「それは確かにな!! アイツらにバレる前に、さっさと事を進める必要があるか? こんなところで、変な奴に負けて捕まる事だけはダメだ………俺たちの野望の為にな」



 ジャックは倒れているエッタさんたちもみて、面倒な奴らと戦闘をしたもんだと大笑いしていると、ミアがクロスロード連盟軍の奴らよりはマシだと言って、さらにジャックを笑わせる。

 しかしジャックとしては、こんなところで確かにクロスロード連盟軍と戦ってる時間も下手したら、捕まるかもしれないと思ったら急いで作戦を遂行しなければいけないと言う。



「これから、どういたしましょうか?」


「この子島には、もうやる事はねぇからな。この先の島………親島《アキダクト島》に向かうぞ」


「もう用済みってわけですね? それじゃあ兎人族の輸送にも時間がかかると思うんですが………どうしましょうか?」


「兎人族だと? もうアイツらは用済みだ………あのカス共は、他の獣人に比べて力も弱いから金にならない。そんな奴らは、連れていくだけ足手纏いだ」



 ミアはジャックに、これから何をするかと聞いた。

 ジャックとしては、この子島《アカシア島》でのやるべき事は終えたから、次は親島《アキダクト島》に行くという。

 その際に人質に取っている兎人族は、どうやって連れていくのかと聞くと、兎人族の仕事は既に終わっており、売るにしても兎人族は他の獣人よりも能力が低く高くは売れない。

 その為、連れていくだけ邪魔だからとジャックは兎人族を置いていく様に指示を出した。



「それにしても、あの情報は本当なのでしょうか? その情報源は、あの男ですから………それなりに嘘の可能性もあるかと」


「確かに、そうかも知れねぇな。だが、アイツは間違いなく世界の真理を知る1人………あの戦争仕掛け人《エルマー=フィーリッツ》という男はな」


「そう……ですか」


「分かったなら、さっさと準備をしろ。クロスロード連盟軍に邪魔されちゃあ仕方ねぇからな」



 これからジャックたちが起こそうとしている事は、別の誰かから聞かされた事らしく、ミアは信用できるのかとジャックを心配して聞く。

 それに対してジャックは不安な要素はあるが、その情報を聞いた男《エルマー=フィーリッツ》という男は、世界の真理をしているから信用に値すると話した。

 そこまでジャックの気持ちが決まっているのならば、自分たちはいう事は無いとミアたちは頭を下げて出航の準備を開始する。




* * *




 ジャックたちがアカシア島を離れてから、少ししてシュナちゃんが気を失っていたところから回復して目を覚ます。



「いてててにゃ。一体、どうなったのかにゃ………み ミナトさん!? だ 大丈夫ですかにゃ!?」



 頭を抑えながら周りをキョロキョロして、近くで俺が倒れている事に気がついて駆け寄る。

 俺は完全に気を失っており、シュナちゃんの声掛けにも反応できずにいる。

 本当にヤバい状況なんだとシュナちゃんは感じて不安のあまり涙を流す。



「み ミナトさぁ〜〜ん!!!!」


「う うぅ……痛ぇ。何が起きたんだっけ?」


「よ 良かったにゃああああ!!!!」



 シュナちゃんが泣きながら俺の名前を呼んでくれたおかげか、俺は目を覚まし上半身を起こすが全身が痛すぎて驚く。

 そして強い衝撃を受けたからなのか、俺の記憶は曖昧になっておりシュナちゃんを見ても困惑する。



「あれ? あの男は、何処に行ったんだ?」


「私たちは、あの男に負けたのにゃ………多分だけど、この根城から敵の気配が無いにゃ」


「そうか。つまりは勝ち逃げされたってわけだよな………あんな力負けをするなんて」



 俺は周りをキョロキョロしてジャックの姿を探すが、周りにはおらずシュナちゃんの猫人族の特性で、この根城に敵の存在は感じられないから逃げられたという。

 少しの時間が経った事で俺の記憶も戻ってきて、ジャックに力負けした事がジワジワと戻ってくる。

 その悔しさから俺は地面を殴って、負けた事への悔しさが溢れ出てくるのである。



「そういえばエッタさんたちは? まさかエッタさんたちもやられてるのか………」


「意識がある状態なら察知できるけどにゃ。感じられないって事は、やられてる可能性が高いにゃ」


「急いで探さなきゃ手遅れになる可能性があるか………俺たちで2人を探そう」



 怒り心頭の中で冷静になり、エッタさんとカエデちゃんは、どうなったのかと気になってシュナちゃんに気配を調べてもらう。

 しかしシュナちゃんのセンサーに引っかからないという事は、センサーの範囲外にいるのか、それとも負けて気を失ってる可能性が高いとシュナちゃんは話す。

 俺は立ち上がるとシュナちゃんに2人を探そうと言って、俺たちは根城の中を片っ端から調べる。



「ちっ。俺が油断してたからやられたんだ………それにしても、あの力は何なんだ?」


「確かにおかしかったにゃ………素のパワーが強いのは分かりますにゃ。でも魔法は使っていなかったにゃ………すると考えられるのは、オリジナルスキルにゃ」


「それしか考えられないか………」



 あの男の顔は絶対に忘れない。

 完璧に倒したと思ったら、魔法も使わずに筋力を上げて俺に向かって戦いに来た。

 オリジナルスキルなのか、無詠唱の魔法なのかは分からないが俺が油断をしていたのは周知の事実だ。

 十二聖王の魔人化を倒したから勝てると思い上がっていた事が、今になって呪いたいくらいに悔しい。



「今度やる時は、絶対にボコボコにしてやる………」


「ミナトさん!! こっちに2人とも血まみれで倒れているにゃん!!」


「な なに!? くそ、やっぱりやられていたのか………」



 俺が周りをキョロキョロしながら探していると、シュナちゃんが血まみれで倒れている2人を発見した。

 急いでシュナちゃんがいるところに走って向かうと、エッタさんの体には斜めに剣で斬られた跡があり、カエデちゃんには全身を何かで突かれた様な跡がある。



「ど どうだ? 命の危機はあるか?」


「私に分かる事は少ないけどにゃ………傷は思ったよりも深く無いにゃ」


「それなら良かった。さっさと、ここから離れて2人を治療してもらおう………」



 俺はエッタさんを背負って、シュナちゃんはカエデちゃんに肩を貸して根城を後にしようとしたが、エッタさんは消え入りそうな声で俺に頼み事をしてきた。



「ち 地下室にいる人たちも助けてあげて下さい………あの人たちも早く、お医者様に見せないとダメです」


「そ そうだったね。分かったよ、直ぐに地下室に行って俺が連れてくるから、少し待ってて………」


「よろしくお願いします………」



 エッタさんは自分が大怪我をしているというのに、他者の事を思える優しい心を持っている。

 世界の全員が、この心を持っていたらと考える事もあるが、それと同じくらいに世界からは戦争は無くならないとも考える。

 そんな事を心の中で思いながらも、俺はエッタさんに言われた通りに地下室の人たちを助けに向かう。

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