028:息の詰まる現場
俺とシュナちゃんは根城に近寄る事に成功すると、トイレであろう場所の窓から根城に潜入する。
そして息を殺しながらトイレの扉を少し開けて、周りに見回っている奴はいないかと確認しながらトイレから出る。
「俺は細かくサーチをするから、シュナちゃんは魔法を打てる準備だけしてくれるかい?」
「了解にゃ」
ここからは室内を詳しく調べる為に、周囲探知を行って警戒しながら進む為に、シュナちゃんには魔法を打てる準備だけはしてもらっている。
周囲探知を行ってみると意外にも根城の中は広く大きな海賊団なのが分かり、多くの見回りたちが根城内を歩き回っているのが周囲探知で分かった。
「相当な警戒をしてるみたいだな………そう簡単に、これは動き回れないな」
「そんなに居るんですかにゃ?」
「あぁけっこう数いるよ……バレずに進むのも難しいな」
ここまで多くの見回りの人間たちがいると、中々にバレずに進むのは難しいかもしれないと考えている。
そのまま周囲探知を続けて隙を見つけようと探していると、地下室から数人の兎人族の存在を感じ取った。
「ここの地下室に、兎人族が何人か監禁されてるのか………これは覚悟をして進むしかないな」
「着いていくにゃ」
「よし。それじゃあ覚悟を決めていきますか」
俺は地下室にいる兎人族を救い出す為には、覚悟を決めて進むしかないと覚悟を決めて先に進む事にした。
特殊部隊が建物の中に潜入するかの様に、壁に背をつけて周囲探知を使って警戒しながら先に進んでいく。
見回りの隙をついているとはいえども、囲まれる瞬間があるので俺たちは急いで食料庫に飛び込む。
「ちょっと今は、さすがに振り切れ無いから隠れよう………」
「そんなに人数が居るのかにゃ」
「けっこう大きな海賊団みたいだよ………強さも未知数だから、無闇に行動ができやしないんだよ」
「そうですかにゃ。私の氷魔法で、全ての凍らせるかにゃ?」
「そんなに威力は出せないんじゃない? それに地下室には、兎人族の人たちが居るから被害が出かねないよ」
俺とシュナちゃんは急いで食料庫の奥に逃げ込むと、外の様子を見ながら待機していると、シュナちゃんが自分が凍らせた方が早いのでは無いかと俺に提案して来た。
しかしシュナちゃんの成長度的に威力も出せないだろうし、地下にいる兎人族の人たち的にも被害が出かね無いから一応止めておいた。
「私のオリジナルスキル《氷の女王》なら問題ないと思いますけどにゃ」
「オリジナルスキルだったのか。とにかく大きな魔法を使う時、周りにも大きな影響を与えるって覚えておいてね」
「はいにゃ……」
「落ち込む必要なんて無いよ。シュナちゃんなりに、この解決方法を考えてくれたんだろ? それなら俺としてはありがたいし、黙って事が過ぎるのを待つ人間よりかは幾分かは良いよ」
「はいにゃ!!」
俺としては大魔法1つで解決できるもんならしたいが、その場合の被害や敵の反応などを考えれば、そっちの方が何倍も面倒な事だって理解ができる。
シュナちゃんだって成長して世の中の事を理解できる様になれば、今現在の自分が幾らかの力を持っているのかを理解して、今何をすべきなのか分かる様になるだろうな。
「ミナトさん。誰か来たにゃ………」
「ん? 本当だ。足音が近寄ってくるな………というよりも何やらオーラが普通より違う?」
「そうにゃ。何かゾワッとするオーラを感じるにゃ………」
その通りだ。
足音が近寄ってくるよりも体が、ゾワッとする様な恐怖? に似た感じが体を襲っているみたいだ。
まさしくアランと対峙した様な強者が近寄ってくる感じ。
それにシュナちゃんも気がついて、冷や汗をかいてプルプルと震えているのを感じた。
アランの時は入れ込み過ぎて、逆にオーラが散々に散って怖いなんて思わなかったが、今回は適度の緊張感に適度な飽和と本当に強い人間だろうな。
「おい……ちゃんと言っておいた通りに、あの剣は用意してあるんだろうな?」
「はい。もう船長の部屋に用意してあります………」
「そうか。それは良かった俺が、また仲間を殺すところだったじゃねぇか………馬鹿ばかりは疲れるからな!!」
―――ジャック大船団:船長・ジャック=ラムズ―――
強者の正体は現在潜入している海賊団の船長《ジャック=ラムズ》という男だった。
2メートルを超える身長に、これ見よがしに膨れ上がった筋肉が服の隙間から見えて威圧感がある。
しかし男の恐ろしいところは目だ。
ジャックの目は明らかに闇を抱えている様に見えて、見続けたら目の中に引き込まれるのでは無いかと錯覚してしまう。
「そ それにしても、あんな古びた剣が大切なんですか? ところどころ錆びついていたり、凄いモノの様には見えないんですが」
「けっ。お前も海賊やってんなら、それくらいの情報くらい入れておけよ………まぁ説明してやるよ」
ジャックたちは何やら色々と喋りながら、俺たちが隠れている食料庫の前を通った。
話している内容は気になるところではあるが、こちらに気づかず通り過ぎてくれるのならありがたい。
そのままジャックが居なくなるのを見届けると、周りを確認しながら食料庫の外に出る。
「やっぱり、ネズミ野郎が隠れてやがったか」
「な なに!? 俺たちに気がついていたのか!?」
「舐めんじゃねぇよ。音を立てずに潜入しようが、殺気が全くもって隠しきれてねぇぞ」
「ちっ。殺気は消せてねぇか………」
ジャックは俺たちの殺気に気がついており、曲がり角で待ち伏せていたのである。
ヤバいと思って俺はシュナちゃんを後ろに隠して、立ち向かおうとすると別のところからも爆発音が聞こえてきた。
「あっちもドンパチを始めちまったか………」
「もう1匹、ネズミが潜り込んでいるみたいだな………まぁ良いか。俺はテメェを殺してやるよ」
「やってみろよ。俺は兎人族を渡してもらう!!」
「兎人族だと? あぁアイツらは、もう用無しだ………テメェを殺した後に、後を追わせてやるよ」
きっとエッタさんたちも潜入をバレたのだと分かる。
しかしエッタさんが居るから、相当な事が無い限りは負ける事は無いだろうなと、少しの安心を俺はしている。
今心配しているのは、俺の目の前にいる船長《ジャック=ラムズ》との戦闘だけである。
「おい、テメェは若いみたいだが………どこの人間だ? まさか世界連盟の人間じゃねぇだろうな」
「は? 違う。俺は世界を回っている、Aランク冒険者だ!!」
「なに!? Aランク冒険者だと………その若さで、あり得るわけがねぇ!! 冗談ってのは身分相応でいうんだよ!!」
「速い!? くっ……」
「ミナトさん!?」
俺がAランク冒険者だと言ってもジャックは信じない。
まぁ15歳のガキが言っていたら、俺だって信じないだろう。
そんな事を思っているとジャックが先手を取ってきた。
目にも止まらない速さで、俺との距離を詰めると高威力の右パンチを打ち込んできた。
俺は殴り飛ばされて廊下の隅まで吹き飛んでいき、シュナちゃんが心配そうに俺に駆け寄ってくる。
「くそっ!! 思ってたよりもスペック高いじゃねぇか………」
俺は何とか意識を保っていられたが、顔の至るところから血を流している。
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