021:VS魔人・中編②
俺は土魔法と炎魔法を合わせた、土の鎧と炎のメリケンサックでパワーやスピードを上回っているアランを翻弄する。
「ちょこまかと動いてんじゃねぇ!! こんな戦い方をする人間が、英雄になれると思ってんのか!!」
「その言葉をまんま返してやるよ。なんだっけか? スペリアル魔石だったか………そんなもんを使って、強くなったところで英雄になれると思ってたのか? なんなら今の お前は世界の敵だ」
「言っておけ。俺が世界を滅ぼして、新たな強者しかいない世界を作るんだ………それこそ俺の本望だ!!」
頭がイカれちまったのか、それとも最初から英雄になりたかった理由が、こんな頭のおかしい計画を実行する為なのか。
本当のところは分からないが、ここで止めておかなければアランは多くの人間を殺し、多くの人間がエッタさんの様に、心に治るか分かりもしない傷を負ってしまう。
そんなふざけた事だけは、俺の人生を賭けても止めなくては行けない事だ。
「お前の本望なんてのは知らないが、そんなモノの為に多くの罪のない市民が死ぬのなら………ここで、お前を殺すぞ?」
「やってみろ。俺は既に止まれないところまで来てるんだ………俺は何を犠牲にしようが、この世界の神になる!!」
アランは俺に向かって猛スピードで突っ込んでくる。
俺は身構えて深く深呼吸をしてから、身体強化を行ってアランの攻撃を敢えて受けてから、渾身の正拳突きをアランの腹に入れて反対側に吹き飛ばした。
「これで分かったか? お前の人間すらも辞めるという覚悟が、何の意味もない事だってな………人間ってのは犠牲の前には、何の価値も生み出せない生物だ。だが、お前がやったのは覚悟でも犠牲でもない………ただの自己満だ」
「ふざけた事を吐かすな………テメェは、何も分かっていない。そんな綺麗事で生きていける程、世界ってのは甘く作られてるわけじゃねぇぞ!!」
少しでも心を折れてくれれば良いと思っていたが、やはり気持ちまで魔力に持っていかれているな。
この男に何を言っても通じる事はない。
まさしく言語の違う人間であり、これ以上の話し合いは俺が不快になるだけの行為だ。
「そんなに言うのなら死んで、あの世ではなく地獄で後悔すれば良いさ………お前が人から奪おうをしている事を、今から体験させてやるよ!!」
・氷魔法Level4《氷の時代》
・炎魔法Level2《ファイヤーボール》
――――恐怖の爆発――――
俺は本気でアランが間違っていると否定する為に氷の時代を使って周囲を凍てつかせると、アランに向かってファイヤーボールを放って大爆発を引き起こした。
「弓矢の奴も無事みたいだな。この威力を食らったら、正直なところ遺体すらも残らないだろうな………な なに!? この大規模爆発を受けても生きてるのかよ………」
「気持ち良いなぁ!! 体の痛みで生きてるって実感してよぉ。お前からしたら、大きな攻撃だったのに悪いなぁ」
「ちっ。とことんムカつく奴だな………」
「良い攻撃を見せてくれたからな!! こっちも砂魔法の最上位魔法を見せてやる………それを冥土の土産にしろ!!」
・砂魔法Level6《巨神の一撃》
アランは砂で出来た20メートルを有に超える巨神を出した。
そのまま俺に向けて巨神は素早いパンチを出してきた。
大きいからスピードは遅いと思っていたが、大きさに見合わないスピードで俺は殴り飛ばされしまった。
「い いてぇ……」
砂で出来たとは思えない硬さをしてやがる。
さっきの傷口も、さらに深くなり俺の意識が遠くなる。
「これが砂魔法の最上位魔法だっ!!」
意識が飛びそうな中で、アランのドヤ顔が視界に入ってきて苛立ちのおかげで、気を失わずに済んでいる。
援護に回っているケヴィンは俺がやられたのを見て、自分が倒さなければと神器の弓を引いて矢を射た。
今度もクリーンヒットするかと思われたが、巨神によって弓矢が弾き落とされてしまう。
「ケヴィンっ!! お前を殺すのは後だ………先に、そこで寝ている奴を殺してやるよ」
ダメだ。
体が重たくて動く事ができない。
せっかく転生したっていうのに、こんなところで………道半ばで死ななきゃいけないのかよ。
俺が死んだら怨霊になって呪い殺してやる………!!
そう思った時だった。
俺の体は優しく温かい光に包まれた。
「俺は……死んだのか?」
「まだまだ死なせませんよ!! ミナト様には、私を幸せにするという仕事が残っているんですから!!」
「エッタさん? どうして、こんなところに………」
神様によって天国に連れててって貰えるのかと思ったが、女神だと思った女性は助けにきたエッタさんだった。
そして意識が飛びそうだったが、自然と意識がハッキリとしてきて貫かれていた傷が塞がっていた。
どうなっているのかと俺は困惑しながら立ち上がると、さっきまで泣いていたのであろう泣いていた跡が残っている。
「その女は、奴隷市で俺に無礼を振るった奴だな………ちょうど良い。お前も殺そうと思っていたからな」
「私も良かったです。ミナト様の手助けができないと思っていましたが………これで力になれます!!」
エッタさんは、ずっと俺の力になりたいって思っててくれたんだなぁ。
それだけで少し涙が出そうだが、こんなところで男である俺が泣いていられない。
「でも、エッタさんって奴隷の首輪で魔法が使えないはずじゃなかった?」
「それが事情がありまして、奴隷の首輪が取れたので魔法が使えます………魔法が使えたら、ミナト様を手伝えますよ!!」
「魔法が使えなくたって、エッタさんは俺にとって大切な人だけど………魔法が使えるのは、とても安心できるな」
エッタさんが手伝ってくれるのならば百人力だ。
体も治ったが心も安心感で、今ならアランの魔人だろうが負ける気なんて毛頭して来ない。
「何を勝った気になってるんだ? たかだかエルフが、1人増えただけじゃねぇか………そんなので、俺の巨神は倒されねぇぞ」
「ミナト様と私なら巨神なんて怖くないです!! ミナト様、手を握って貰えますか?」
「は はい!!」
アランはエッタさんが来たからなんなのかと、自分の出した巨神に最大限の信頼をしているらしい。
だがエッタさんも自信満々で、倒す為に手を握って欲しいと俺の方をウルウルした可愛らしい目で言ってきた。
あまりにも可愛らしい目だったので、俺は脊髄反射をする様に返事をしてエッタさんの手を握る。
「私はミナト様ほどは強くありません。しかし、貴方よりは遥かに強いです………いいや、違いますね。私が負ける理由が無いんです!!」
・光魔法Level5《ホーリーベール》
・風魔法Level6《ディザーム・ストーム》
――――女神の吐息――――
「そんな魔法が何だって言うんだ!! 俺に通用しな………なんだと、どうして俺の巨神がやられるんだ!!」
俺は驚いた。
エッタさんはアランがスペリアル魔石を使わなければ使えないはずの最上位魔法、しかも光魔法を使ったのである。
それに加えて光魔法の風が巨神に優しく触れた途端に、崩れ去って巨神は普通の砂に戻ってしまった。
これが魔法使いエッタさんの全力なのだろうか。
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