191:面倒
トゥンシム王国の国境にやってきた俺たちは、その国境でトゥンシム王国兵と一触即発の空気になる。すると後ろから野太い男の声が聞こえて振り返ってみると、そこにトゥンシム王国兵よりも上等な鎧を着た人がいた。
「どうしたんだ? ここで、そんなに騒いだら問題になるぞ?」
「オーウェン隊長!? こ この冒険者たちが、俺に難癖付けてくるんですよ!!」
「はぁ? 何が難癖つけてくるだよ。テメェの方こそ、俺の大切な人の事を差別しやがって」
現れた男は、どうやらオーウェン隊長というらしい。
隊長というのだから、この生意気でイラッとする兵士の上司にあたる人間なんだろう。兵士から話を聞いた上で、俺の事を下から上にジロッと確認してくる。
「若いガキじゃねぇか。その歳で、女共を侍らせてるなんてクソ野郎だな」
「なんでござるか!!」
「中々の言い分じゃのぉ」
オーウェン隊長は俺の事を、若いのに女を侍らせているクソ野郎と言ってくる。あまりにも口の悪い言い方だったので、ルイちゃんとローズちゃんはオーウェン隊長に掴み掛かろうとしている。
「まぁまぁ俺の事を言うくらいなら、別にどれだけでも耐えられる………けど、ルイちゃんたちの事を悪く言うのであれば、誰であろうと許さないけどね」
「ほぉ大きい事を言うじゃないか。それで、お前たちはトゥンシム王国に入りたいんだろ? それなら俺たちのルールに従ってもらうが?」
「郷に入れば郷に従えって言うからな。だけど、ルイちゃんたちに何かをすれば黙っちゃいない………それで良いよな? それじゃあダメなのか?」
「まぁ良いだろう。この国は外部からの入国には厳しいが、俺たちの国のルールに従えば極楽の国だ」
オーウェン隊長は、トゥンシム王国に入国したいのならば国のルールに従ってもらうと言ってきた。郷に入れば郷に従えと言うので、それに関しては致し方ないと思っている。しかしルイちゃんたちに、何らかの危害が加わった場合は暴れ回る気でいる。
こんな人間たちがいる国に入るのは嫌ではあるが、ローズちゃんの心臓を取り戻す為と覚悟を決める。するとオーウェン隊長は、この国が極楽の国だと言った事に、俺は少し引っかかるのである。
「それじゃあ入国させてもらうが良いな? それ以外に何か問題があるか?」
「いいや、何もないさ。だが、そっちの亜人種に何があっても自己責任って事でな」
「あいあい。その忠告を胸に入れときますよ………入国するから道を開けてくれ」
オーウェン隊長は不敵な笑みを浮かべながら、ルイちゃんたちに何があっても自己責任と言ってきた。その言葉に嫌な予感はしながらも、何かが起きた時は俺が自分で何とかすると覚悟している。
俺はオーウェン隊長たちに道を開けさせて、馬車でトゥンシム王国に入国する。ブギーマンとの決着が最優先ではあるが、オーウェン隊長が言っていた極楽の国であるという言葉が引っかかっている。
「あの隊長とかいう奴が言ってた、極楽の国の意味って何なんだろうな………」
「この国が極楽には見えないでござるが」
「世界連盟に加盟していないから、この国の情報は外に出ていないのよ………」
馬車に再度乗って入国すると、俺はルイちゃんたちに極楽の国と言った発言の意味が分からない。国の様子を見る限りでは、このトゥンシム王国が極楽という言葉が合うような感じがしない。
その言葉にルイちゃんたちも賛同してくれて、この国は世界連盟に加盟していないので情報が海外に出ていない為、この国は秘密でいっぱいだとイローナちゃんは冷静にいうのである。
「確かに良い言い方をしたら、そういう事になるだろうけど………世界連盟に入らない理由って、どんな理由があるの?」
「世界連盟に入ると、ルールというか規則として戦争や侵略行為の禁止になってるみたいよ。それに世界連盟に加盟したら、軍人をクロスロード連盟軍に入れる事が義務付けられてるみたい」
「クロスロード連盟軍って、そういう理由で集められているんだ」
世界連盟に加盟したら、加盟している国に対する戦争行為や侵略行為は禁止される。そして世界連盟に加盟した際に自国の軍人を、クロスロード連盟軍に徴兵するというルールがあるらしい。
それらのルールというか規則というのを提示されて、トゥンシム王国は利益よりも不利益の方が大きいと判断して加盟していないみたいだ。だからこそトゥンシム王国は隣国のノースカリクッパ王国に、侵略行為などを行なっていたと考えられる。
「まぁとにかく、ギルド・ボガードのアジトを探さないとダメだよなぁ………」
「四本刀の言い分的には、ギルド・ボガードの幹部や団員は貧乏育ちだと聞いたでござる」
「確かに生まれも育ちもスラム街だって聞いたなぁ。どこのスラム街かまでは話を聞いてないもんな………」
「それを探すだけでも、中々に骨が折れそうな感じがするんじゃないかのぉ?」
俺的には極楽の理由を探す前に、ギルド・ボガードのアジトを探し出す方が先だろうと考えている。それにしてもギルド・ボガードのアジトを探し出すのは、かなり骨が折れるのでは無いのかと皆んなで話している。
しかし俺たちは四本刀の奴らと戦闘を行なった時に、ギルド・ボガードの団員と幹部の全員がスラム街の出身であるのを確認している。それならスラム街を探し出せば良いのでは無いかと思っているが、こんなに広い土地の中でスラム街の全てを探すのは不可能だろう。
「とにかく近くの街に行って、スラム街のある場所を聞いてみた方が良いよな」
「そうでござるな。時間がかかっても、その方が確実に見つける事ができそうでござる」
俺は近くの街に到着したら、そこで聞き込みを行なってスラム街の場所を聞く事にした。時間がかかる方法ではあるが、確実にスラム街の場所を調べられてギルド・ボガードのアジトを突き止められる。
「あっあそこに街に見えるでござるよ!!」
「そうだね。とりあえずは、あそこの街の飲み屋にでも行って聞き込みに行こうか」
「そこで聞くよりも確実に情報を聞ける場所があると思う………」
「えっ!? こんなところがあるの?」
街が見えたので、そこの街の飲み屋で話を聞ければと思ったのであるが、イローナちゃんがこんなところよりも確実に話を聞ける場所があるという。俺はそんなところがあると思わなかったので、どこで聞けるのかとイローナちゃんに聞いた。
「それは冒険者ギルドよ。そこなら確実に情報を持っていると思うけど?」
「あぁ冒険者ギルドかっ!! えっ? でも、この国にも冒険者ギルドってあるの?」
「多分ね。冒険者ギルドっていうのは世界連盟とは全く関係のない組織で、ほぼ全部の国に設置されてるからトゥンシム王国にも置かれてるはずよ」
イローナちゃんは冒険者ギルドに話を聞けば、それなりの情報を聞けるはずだと提案してくれた。確かに冒険者ギルドに聞けば良いのかと思ったが、非加盟国のトゥンシム王国に冒険者ギルドはあるのかと聞いた。
するとイローナちゃんは、どこの国にも冒険者ギルドはあるからと提案してくれた。
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