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社畜から卒業したんだから異世界で自由を謳歌します  作者: 灰谷 An
第4章・ロリっ子な吸血鬼の女の子
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188:敗北の味

 俺たちがブギーマンだと思って戦っていたのは、四本刀の主人でありギルド・ボガードの幹部である《ストレガ》だと分かった。そして俺たちの前に、本物のブギーマンが姿を現して、俺をボコボコにして立ち去った。

 ブギーマンとストレガが居なくなったところで、俺は倒れているイローナちゃんたちを安全なところに連れて行くのである。幸いにも、この城の中には無駄なくらいに多くのベットがある。



「まさかブギーマンが、あれだけ強いとは思わなかったなぁ………」


「拙者も手伝うでござる。ブギーマンたちとの戦いで、何もできなかったからせめてもの罪滅ぼしで」


「そんなに気にしなくて良いよ。あのブギーマンと、ストレガとかいう男の強さは異常だった。この際、命があっただけでも儲けもんだよ」



 俺がイローナちゃんと、ローズちゃんをベットに運ぼうとした時に2人に比べて比較的軽症なルイちゃんも手伝ってくれた。軽症とはいえどもルイちゃんの腹に、ストレガの拳の跡が残るくらいの怪我だ。

 ルイちゃんは自分が、ストレガとブギーマンとの戦いの際に何もできなかったと責めていた。ブギーマンとストレガは、俺たちが戦ってきた中でもトップレベルでチート級の強さを持っていた。そんな人間たちとの戦いの中で、命があっただけでも儲けもんである。

 ルイちゃんは大丈夫だというが、俺が押し切ってルイちゃんもベットに寝かせて休ませる事にした。そして俺も寝ようと思ったが、こんな時でも人間の体というのは不思議なもんで腹が減ってくる。



「しかたないか。寝る前に、キッチンに行って余ってるものでも食べよう………傷が治っても餓死したら、どうしようも無いからな」



 俺は3人を寝かしてから城の中にあるキッチンに足を運んだ。するとやはり誰もおらず、シェフもいなかったので貰っちゃおうと冷蔵庫を開けて中に入っていた、フルーツと肉を拝借する事にした。

 それにしても市民たちは貧困に遭えでいるにも関わらず、この城の中には豪華な食べ物があるんだなと感じて戦争が起きて当たり前だとも思った。



「さてと肉は見つけたけど、これをただ焼いて食べるのも味気ないよな………おっ!! 米もあるから炊いて、ちょっと一工夫してから飯にするか」



 俺は食うからには美味しいものを食べたいと思って、この肉をどうしようかと検討している。すると貯蔵庫で米も発見したので、この米とアレンジした肉料理にしようと頭の中でレシピを作る。

 そして米を水に浸してから米を炊き始める。ご飯が炊けるまでの間に、肉の調理をしちゃおうと俺は冷蔵庫と貯蔵庫にある食材を持ってきて並べる。



「本当なら高い肉だから塩とかだけで良いとは思うが、ここは疲れも吹き飛ばす為にソースを作ろう」



 俺は酒・酢・砂糖・醤油・ニンニクと集めてきた食材を、キッチンのテーブルに並べてソース作りからスタートさせるのである。

 まずは酒と酢をフライパンに入れて、軽く酸味とアルコールを飛ばす。そこからニンニクと砂糖を入れて前に入れたのと馴染ませる。最後に醤油を2回し入れてからフライパンの火を止めて予熱でかき混ぜる。これで簡単にできるステーキソースの完成だ。



「あとは肉を焼きたいところだけど、米が炊けるまでは待った方が良さそうだな………」



 俺はステーキを焼く前に米が炊き終わるのを待つ。キッチンの椅子に座ってテーブルにもたれかかって、目をゆっくりと瞑ってウトウトしてくる。すると数十分寝ていて、急いで火にかけていた米の様子を見てみると、自分が思っていたよりも遥かに美味そうだった。



「それじゃあ肉を焼くとしますか!! さすがは高い肉って感じだな………焼いてるだけでも、この肉高いって分かるぞ!! まぁ昔なら胃もたれとかして、そんなに多く食えなかったけど」



 俺がステーキを焼いてから作っておいた、ステーキソースをかけて米と同じく皿に盛り付ける。それをテーブルの上に乗せて、俺は水をコップに注ぎ食事の準備を整えるのである。

 そして食べようとすると廊下の方から、誰かが走ってくる音が聞こえてきた。誰かきたのかと思って、立ち上がって身構えているとローズちゃんだった。



「美味そうな匂いがしてると思ったら、やはりお主だったのか!! そんなに美味そうな物を、1人だけで食べようとしていたのか!!」


「いやぁ。皆んなには、別の傷に聞く優しいものを作ろうと思ってたんだけど………」


「そんなのは言い訳じゃ!! 妾は、お主が作ったそれを食べたいんじゃ!!」


「それなら別に構わないけど、傷の方は………って、あれ? さっきまで傷だらけじゃなかった?」



 ローズちゃんは自分たちを除け者して、自分だけ美味しいものを食べようとしているのではないかと、俺の胸ぐらを掴んで、前後にグングンッと引っ張る。

 もちろん俺だけが食べようと思っていたわけじゃなくて、皆んなには胃に優しいものを作ろうとしていた。傷だらけの人には、それにあった料理があるのだと言おうとした時、ローズちゃんの体にあった傷が消えている事に気がついたのである。



「妾は誇り高きヴァンパイア族だからな!! あんな傷は、擦り傷みたいに直ぐに回復するんじゃよ!!」


「へぇヴァンパイア族って、そういうもんなんだ………それで本当に食べるの?」


「もちろんじゃ!! そんなに美味そうな匂いをさせておいて、くれない方が卑しいんじゃ」


「まぁそういうわけなら、別にあげないってわけじゃないけどさ………ニンニクが入ってるんだよ? ヴァンパイア族は嫌いじゃなかった?」



 どうやらローズちゃんの全身につけられていた切り傷は、ヴァンパイア族特有らしく体の回復が異常なまでに高いらしい。そのまま胸を張って、自分にも肉と米を用意するようにいう。

 ローズちゃんの為ならば仕方ないとか言って、今食べようと思っていたものをローズちゃんに出すと、顔満面の笑みを浮かべながら、俺の作ったものを食べているので、これはこれで良いかと俺は納得する事に来た。




「美味ぞっ!! こんなに美味なのは、生まれて事方あり得ないぞ!!」


「それは良かった良かった。そんなに喜んでくれるとは料理人冥利に尽きるねぇ」



 ローズちゃんはステーキを切ってから口に運ぶと、目がキラキラさせながら美味しいと言ってくれた。俺のではあるが、こんなに喜んでくれるのならばローズちゃんにあげて良かったと思った。



「それで、これからどうするんじゃ? アイツらのアジトがトゥンシム王国にあるのは分かったけど、そう簡単にも行かなそうじゃが?」


「そうだなぁ。俺の頭の中の考えとしては、ここで休憩をとってからトゥンシム王国に行きたいところではあるけど、エッタさんたちを残しておくわけにはいかないんだよなぁ」



 ローズちゃんは美味しい美味しいと食べている時に、そういえばと思いましたかのようにモグモグしながら俺に、これからの方針について話を聞くのである。

 俺はうーんっと考える仕草をしてから、この状態だとローズちゃんの心臓を取り戻せないなら動きたいけど、エッタさんたちとは合流できないので困っている。

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