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社畜から卒業したんだから異世界で自由を謳歌します  作者: 灰谷 An
第4章・ロリっ子な吸血鬼の女の子
192/202

187:正体

 俺の拳とブギーマンの拳は、互いに引く事なく殴り飛ばしてやろうという気持ちが込められている。しかしほんの少し微かな綻びをブギーマンから感じた。

 それはローズちゃんの攻撃と、俺が使ったシャドーアニマルによるダメージで痛みを感じた時に、顔を歪めた瞬間だった。俺はここを逃してしまったら、当分の間はチャンスなんて来ないと思った。



「この野郎っ!!」


「なっ!パワーが上がった!?」



 違うパワーが上がったのではない。ブギーマンは気付かぬうちに、体が自然と体を守っているから意識できないうちに力が落ちている。その為、俺の方が力が上がっているとブギーマンは錯覚するのである。

 そんな事を伝えてやる義理もないので、俺は思い切り全身に力を込めてオーラの流れも意識した。するとこの状態からでも、鉄拳に似たようなマーシャルアーツを使う事が、この土壇場でできるようになった。

 そして俺はブギーマンを殴り飛ばす事ができた。ブギーマンは王座の後ろにある壁まで、目で追うので精一杯なくらいの速度で飛んでいった。そのまま壁に衝突すると、地面にバタンッと落ちてきた。



「さ さすがはブギーマンだ………まさか、ここまで手こずるとは思ってなかった」



 俺は尻餅をついて地面に倒れて、白目を剥いているブギーマンを見てから決着がついたのだと分かった。ここまで強いとは思っていなかったので、俺は少し休みたいところだがローズちゃんの心臓の在処を聞かなければいけないので、ブギーマンを起こそうと立ち上がる。



「おいっ!! 寝るのはローズちゃんの心臓の在処を話してからにしろよ!!」


「………」


「これは完璧に伸びてやがるなぁ………どうしたもんかなぁ。このまま縛り上げて起きるのを待つか?」



 完璧に気を失っているので、今直ぐに心臓の在処を聞くのは難しそうだ。それならロープで縛り上げて、起きたところで聞き出そうかと考えた。それしかないだろうとロープを探しに行こうとする。



「ありゃりゃ。まさかストレガまでやられちゃうとは思わなかったなぁ………さすがは期待のルーキーだ」


「だ 誰だ!?」



 俺がブギーマンから背を向けた瞬間に、そのブギーマンの方から声が聞こえて見てみる。するとブギーマンと同じ仮面を付けた人間の姿があって、俺は誰だと疑問に思った瞬間、その人間から異様なオーラを感じる。

 そのオーラを感じた時に後ろに飛んで距離を取る。そしてその男はブギーマンだと思っていた人間を、ストレガだと言ったのである。



「す ストレガだと? そいつはブギーマンな筈じゃないのか………」


「やっぱり僕のスキルは良い感じだねぇ。ヴァンパイア族の目や感覚を騙せるなんてねぇ」


「まさか!? お前が本物のブギーマン………」


「正解だよぉ〜。君たちが相手してたのは、四本刀を失って悔しがっていたストレガ君だよぉ」



 こんな地獄があるのかというくらいだ。

 俺たちが倒したのは、四本刀のボスであるストレガという男だった。そして目の前に元気に現れた男こそが、本物のブギーマンだと分かった。明らかにストレガとは比べ物にならないくらいの化け物だ。

 俺は直ぐに身構えてブギーマンに拳を構える。この状況で、これからブギーマンとやり合うなんて生き残れれば勝利くらいな感じだろう。



「別に身構えなくても良いよ。今の君たちを、倒したところで僕の株が下がるだけだからねぇ」


「な なに……そうやって俺たちを下に見てるのか」


「残念ながら僕たちが見下してるんじゃなくて、君たちが見上げてるんだ………まぁそんなに戦いたいっていうなら、ほんの少しだけ遊んであげるよ」



 俺が舐めているのかと、本物のブギーマンに言ったところ少し遊んであげると言ってきた。遊びだと舐めてるのかと思った瞬間、ブギーマンは俺に向かって無詠唱でファイヤーボールを打ってきた。

 この世界でも無詠唱で魔法を使うなんて聞いた事がない。そう考えれば何らかのオリジナルスキルだと思いたいが、もしもこれが本当に無詠唱で発動させているとするのならば俺に勝ち目はない。

 急いでイローナちゃんたちを起こして、俺以外は避難するように指示を出す。その間もブギーマンは、俺に向かってファイヤーボールやウォーターボールといった魔法を打ってくるが、もちろん無詠唱でだ。



「どんなカラクリでやってるんだよ………無詠唱で、魔法を打つなんてあり得ない!!」


「その通りだよ。この世に無詠唱で魔法を打てる人間は存在しないさぁ………という事は、僕の無詠唱で魔法を発動させていたのは、魔法の力ではなくオリジナルスキルのおかげと言えるかなぁ」


「やっぱり無詠唱なのは、オリジナルスキルの影響か」



 やはり無詠唱で魔法を打てていたのは、ブギーマンのオリジナルスキルによるものだと分かった。しかし魔法を無詠唱にできるオリジナルスキルとは、一体何なのだろうと疑問を覚えた。



「もっと面白いものを見せてあげよぉ」


「なっ!? 消えた!?」


「消えてないよ。これもオリジナルスキルさ」


「ゔっ!?」



 ブギーマンは、もっと面白いものを見せてあげると言って俺の目の前から姿を消した。そして次の瞬間には、俺の背後から声が聞こえて振り返る。

 何が起きたのかと思って後ろを見た瞬間、俺はブギーマンに腹を殴られて地面に倒れる。魔法を無詠唱で打てたり、目の前から姿を消してみたりとオリジナルスキルの全容が見えて来ないのである。



「そんな不思議そうな顔して、これこそ僕のオリジナルスキルの真骨頂ってところだろうねぇ」


「お前の………オリジナルスキルは何だ…………」


「まぁどうせ知ったところで、君たちに何かするのは不可能だから教えてあげるよ。僕のオリジナルスキルっていうのは《手品師(マジシャン)》だよ」



 ブギーマンのオリジナルスキルは、マジシャンである事が明かされた。しかしマジシャンになるスキルなのかと、どんなスキルなのかはピンッと来ない。



「さっきの無詠唱は、事前に詠唱していたモノを僕のオリジナルスキルの効果で隠しておいたんだよ。そして任意のタイミングで、その魔法を出せるわけだよ」


「そういう事だったのか。前に詠唱させていたのをストックして、そこから出してたのかよ………」


「その通りさ。さっきの瞬間移動もオリジナルスキルの1つで、あれはミスディレクションと呼ばれる技だよ」



 やっとブギーマンのオリジナルスキルの効果が理解できるようになった。ブギーマンのオリジナルスキルは、マジシャンが使う手品の技を実際にタネも仕掛けも大有りで使用する事ができる能力だと分かった。

 その中でも事前に詠唱しておいた魔法を、任意のタイミングで使用する事ができるなんて、コスパも最強レベルのオリジナルスキルで、まさしく使い方次第では俺のオリジナルスキルと同等レベルのチート級なのでは無いだろうかと思ったのである。



「とにかく、そこのヴァンパイアの心臓を返して欲しいなら隣国のトゥンシム王国においで」


「トゥンシム王国だと………」


「そこで僕たちは逃げずに待っているからさ」



 ブギーマンとストレガは、それを言い残して俺たちの前から姿を消したのである。

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