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社畜から卒業したんだから異世界で自由を謳歌します  作者: 灰谷 An
第4章・ロリっ子な吸血鬼の女の子
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168:画面の下の涙

 ローズちゃんは、四本刀の1人である《ソロウ》と戦闘になっていた。しかしソロウはビクビクしている性格の割に空間を切り裂くという能力で、ローズちゃんと互角に渡り合っている。



「まさか互角にやり合うとは思っておらんかったわ。ここまでバチバチにやりあえるのは久しぶりじゃ………血が激ってくるわ!!」


「悲しいぃ悲しいよぉ。私の攻撃が読まれて、避けられちゃってるよぉ………」



 自分の血が強敵を前にして激っているのを感じるローズちゃんである。まさかソロウが、ここまでやれる相手だとは思わなかった為か、ローズちゃんは良い獲物を見つけた時の獣のような目をしている。

 そんな目で見つめられたら、蛇に睨まれるカエルのように動けなくなるものだが、ソロウは全くもって怯むどころかドンドンと、ローズちゃんを煽っていく。しかしメソメソしているところとのギャップがあって、どこか不気味な感じを醸し出している。



「もっと動きを見せて欲しいものじゃな!!」


「き 来たっ!! もっと私の攻撃を当てないと………」


「そうじゃ!! その空間を切り裂く奴じゃ!!」



 向かってくるローズちゃんに、毎回のようにソロウは空間を切り裂くスペース・クラックを使う。それによって距離を詰められずに止まるが、直ぐにローズちゃんは進行方向を変えて突撃していく。その都度にスペース・クラックを使って、ローズちゃんの進行を止める。

 しかしローズちゃんのペースが上がり始めると、ソロウのスキルを使う速度が間に合わなくなってくる。そして遂にはソロウは間合に入られて、ローズちゃんに顔面を殴り飛ばされた。

 そのままソロウは地面に数回バウンドしてから、ズーッと転がって止まった。顔につけていた泣いている鬼の仮面は、半分割れて目が見えた。ソロウの可愛らしい泣いている目が見えたのである。



「お主中々に可愛らしい顔をおるではないか。それなのに変な仮面で、顔を隠し折るなんて勿体無い」


「この画面を馬鹿にしないで下さい………この仮面は、大切な人から貰った仮面なんです!!」


「そんなに大切な仮面なのか? そうかそうか。それが大切だと思えるのならば、妾の大切な心臓を返してもらえると嬉しいんじゃがな」



 ローズちゃんがソロウの付けている仮面を、変な画面だと指摘したところボロボロのそろうは、立ち上がって大切な人に貰った物だから馬鹿にするなという。そんな風な意見を言えるのかと、ローズちゃんは少し驚いた。

 それならばとローズちゃんは、自分の大切な心臓を返して欲しいと上手く揚げ足を取れたと笑みを溢す。ソロウはフラフラになりながら壁に寄りかかりながら、ローズちゃんが言った事に言い返す。



「それはダメです。あの心臓は、我らがボスであるブギーマン様が必要としているので………貴方に返すわけにはいかないんです」


「そうじゃと思ったわ。それで、お主にとってブギーマンは、どんな存在なんじゃ? あんなクソ男には、良いところなんて無いと思うんじゃが?」


「良いところならありますよ。あの人はストレガ様が子分になるに相応しい人だと、お認めになられた事です。あの人には着いて行きたくなる才能がある………私たちが、あの人を信じている限りは、絶対にあの人は裏切りなんてしないんです!!」



 ローズちゃんの心臓は、どうやらブギーマンが必要だから返さないという事らしい。ルイちゃんやイローナちゃんとは異なり、ローズちゃんが意外にもソロウからブギーマンの情報を聞き出している。

 そんな聞き出したブギーマンの話は、悪魔的なカリスマ性によって色々な人間をたらし込んでいるように見える。カリスマ性というのは、正義のヒーローだろうが悪のカリスマだろうが、トップに立つ為には必要な要素であるのは理解できる。

 しかしそんな要素がブギーマンの場合は、異常なまでに周りに影響を与えているのだ。この人の為ならば死ねるというのは、普通ならば狂気の沙汰と言える。それを言わせられるだけの才能は寒気がしてくる。



「そうかそうか。大体良いところ分かったわ………可哀想になってくるわ」


「私たちが……可哀想? どこが?」


「どこがって、そんなクソ野郎の下で働かされてるのが可哀想って言ってるんじゃ」



 ローズちゃんは完全にギルド・ボガードに、心酔しているソロウに対して可哀想だと言った。そのソロウは、ローズちゃんの発言に対して目をかっぱらいて、どうして可哀想だと思うのかと聞いてくる。

 その発言も理解できないという感じで、ローズちゃんはブギーマンの下で働かされている事だと言った。それを聞いたソロウは、ピクリとも動かなくなったと思ったら、今度は急にローズちゃんに向かって動き出す。



「さっきの発言を取り消してもらう!! ストレガ様とブギーマン様の名誉の為に!!」


「名誉とな? 全くもって話にならんな………お主らからしたらカリスマかも知れんが、世間一般的には悪魔のような犯罪者なんじゃからな!!」


「うっ!?」



 完全に自分たちのボスを馬鹿にされた事でキレてしまったソロウは、さっきまでの冷静で対応力のあった攻撃ができなくなっている。力任せにローズちゃんを倒そうとばかりに、重点を置いてしまっているのでローズちゃんを捉える事ができない。

 それに対してローズちゃんは、ソロウの動きが単調になった事で完全に動きを掌握する。フェイントで、わざと誘い込んでからカウンターの攻撃を入れたりして、完全にさっきまでの良い均衡が崩壊してしまう。



「お主の良いところは、冷静に対応するところじゃったのに、もう見る影も無いのぉ」


「アンタが、ストレガ様たちを馬鹿にするからだ!!」


「そんなに馬鹿にされて悔しいのなら、お主が妾に勝つ他ないのぉ。お主が負ける事があれば、妾の言った事が正しいという事になってしまうぞ」



 始まりを見ていなければ完全に、ローズちゃんの方が悪役に見えてしまうだろう。それでもローズちゃんの言っている事は、真理をついているところである。それはソロウも理解してぐうの音も出ない。



「まぁさっきまでの事は忘れても良いぞ。そうしないと戦いが面白くならんからのぉ」


「じゃあアンタを倒して、私が言っていた事が正しいと証明してやりますよ………」



 ローズちゃんは色々とソロウに言っていたのだが、このまま挑発を続けたところでローズちゃん的には、楽しい戦いができないから集中するようにと促した。それを聞いて、これはさっきまでの舐められた事へのお返しができると思ってソロウはやる気になる。



「普通に戦うんじゃあ面白く無いじゃろう。少し面白いものを見せてやる………ヴァンパイアの秘術じゃ」


「ヴァンパイアの秘術っ!?」



 ローズちゃんは普通の戦い方をしても面白くないだろうと言い始める。ソロウは何をやろうとしているのかと身構えたところで、ローズちゃんはヴァンパイアの秘術を出して戦ってやるというのである。

 全くもってヴァンパイアの秘術を知らないソロウは、どんな美術なのかと後ろに数歩下がって警戒する。

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