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社畜から卒業したんだから異世界で自由を謳歌します  作者: 灰谷 An
第4章・ロリっ子な吸血鬼の女の子
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155:目が覚める一撃

 俺は先にある砦に関して情報を集めるべく、ルイちゃんに空からの偵察を頼んだ。ルイちゃんが出発してから30分くらいがだったところで、ルイちゃんが飛んで戻ってきたので報告を受ける。



「砦の様子は、どんな感じだった? それなりに攻略しやすそうだと良いんだけど………」


「城砦って感じで、外からざっと見た感じでは1000人くらいの兵士はいたでござる!!」


「城砦で1000人くらいの兵士か………ちょっと俺たちとしても武が悪いか? 個々の力が強くても数の暴力で押し切られる場合があるからなぁ」



 懸念点としては、やはり敵の数が俺たちよりも遥かに多いというところで、どれだけ強くても数に負ける時がある為、安易に作戦を考える事ができない。

 俺がうーんっと考えている時に、イローナちゃんがお手洗いから帰ってきて、ルイちゃんに俺が受けた報告と同じ報告を聞いて貰った。



「それでイローナちゃんは、この数の差を考えて作戦とか思いつく? どう頑張っても4人と1000人じゃあ桁が違いすぎると思うんだけどさ」


「なんだ、城砦なんていうから1万人とかいうのかと思ってた………1人頭250人くらいでしょ? それくらいなら私たちでもいけると思う」



 さっきは冷静に考えろと言っていた、イローナちゃんだったが打って変わって、今度は1000人くらいだったら勝てると言った。1人頭250人と考えればいけない事も無いような感じはするが、それでも強者の出現などのリスクを考えると少ない人数ではないと思う。



「ミナトは、そんなに迷ってるの? さっきの私は、もっと多いのを想定していたけど、実際の数は倒しきれないわけじゃない………それに城砦ってのが重要だよ」


「というと? いまいちピンッときてないんだけども」


「平野で1000人も相手にしてたら、さすがに苦戦するかもしれない。でも城砦は入り組んでいる場合が多いから、戦力がバラバラになってる」



 つまりイローナちゃんが言っている事は、城砦の中で1000人を一気に相手するわけではなく、数は限られて城中に分散しているので勝てない事は無いという。

 確かに言われてみれば理解できる理屈であり、いけるというのをイローナちゃんに言わせてしまったのが、ファミリーのリーダーとして恥ずかしいところだ。この冒険にイローナちゃんがいるのは大きいと心から感じる。



「ここで縮こまっていても仕方ないか。イローナちゃんがいうように、城砦を攻略していこうか………最初は門を派手に壊して城の中に入ったら、バラバラになってギルド・ボガードを捕まえよう」


「それで良いでござる!! そっちの方が分かりやすくて良いでござる!!」


「妾も問題ないぞ!! 暴れられるのは最高じゃ!!」


「うん。私の言った事を理解してくれて良かった………そうでないとミナトじゃない」



 こうやって自信を持った方が良かったのだと、イローナちゃんに教えられた。自分の力を過信するのではなく自信に変える事が必要だった。

 俺たちの気持ちが固まったところで、城砦に向けて再出発すると徐々に城西が見えてくる。確かに想定していたよりも小さく、この段階で俺は色々と考えすぎるのもダメなんだと理解したのである。



「良いか。これだけは絶対に守ってほしい………無理だと思ったら直ぐに戦線から離脱する事」



 俺は3人に戦線から離脱する事を、絶対に守ってほしいと言って約束させると、城砦から少し離れたところで馬車から降りると堂々と正門に向けて歩いていく。

 すると城壁の上から見張りをしていた兵士たちが、俺たちの存在に気がついた。明らかにノースカリクッパ王国の市民ではないと気がつくと、周りの兵士にも警戒するようにと促し始めた。



「そこの者たち!! 何者だ!!」


「俺たちか? 俺たちは世界中を旅している冒険者だけど、何か問題でもあったか?」


「問題も何も、ここはノースカリクッパ王国の《トゥデン城砦》である!! それ以上の接近は、この国に対する反乱罪として処分するぞ!!」



 兵士は俺たちに対して何者かと聞いた後に、これ以上の接近を禁止すると言ってきた。それでも接近するとノースカリクッパ王国に対する反乱罪になるという。そんな風に言ってくれると、何故なんだろうかワクワクする気持ちが抑えられないのである。

 ここからは馬車の中で作戦を立てたように、まずは城砦の正門を大きな魔法で攻撃して、城砦内に侵入するフェーズに移行する。



「ここはイローナちゃんに任せようかな」


「大っきいのを打ち込む………」


――豪雷の鉄鎚クラックダウン・サンダー――



 イローナちゃんに砦の門に向けて、強力な雷魔法を打って欲しいという。それなら大きいのを打つと言って、イローナちゃんは魔法を放つのである。強力な雷魔法の鉄槌が門を襲うと、上で見張っていた兵士たちは叫び声を上げて地面に尻餅をつくのである。

 門は完全に破壊されていて、俺たちが砦の中に入る準備が整った。ローズちゃんは指の骨を鳴らして、ルイちゃんは刀を少し出したりしまったりしてワクワクしているのが漏れ出ている。そしてイローナちゃんは、いつも通りにクールだが俺はあるものを渡した。



「イローナちゃん。これを持ってて欲しいんだけどさ」


「これって指輪? もしかして、このタイミングで告白してるの?」


「まぁそんな風にとって貰っても良いんだけど………これは女神の指輪である《エティーニャの指輪》だよ」


「え? 女神の指輪……そんな大層なものを渡してくるなんて。でもくれるのなら貰うわ」



 イローナちゃんならば問題はないと思っているが、もしもがあってはいけないので、神の加護を受けている指輪をイローナちゃんに渡したのである。そして完全に準備が整ったところで俺たちは砦の中に入る。



「ここからはバラバラになっていくよ!!」


「了解でござる!!」


「妾、やる気満々じゃ!!」


「私もやる気ある………」



 俺たちは4人に分かれて城の中に散り散りになっていく。イローナちゃんの魔法でビビり散らかしていた奴らが、もう立ち上がって城中に報告するのである。それによってゾロゾロと兵士が出てくるが、俺たちがバラバラに分かれた事で兵力も分散されている。

 俺のところには5人1組の形をとった隊が、俺の目の前に現れて剣を抜いて構えているのである。この国では魔法を使える人は、あまり多くは無いという。



「そこを動くな!! こんな事をして、ただで済むと思っているのか!!」


「それでアンタらの人数で、この俺を止められると思ってんのか? ここにギルド・ボガードの関係者がいるって聞いてるが………ソイツを連れてこいよ」


「そんな奴はいない!! お前が、この国の人間じゃない事は見ればわかる………国王陛下の明言によって、国を転覆しようとする人間は、国外の人間問わず粛清して良いと言われている!!」



 俺のオーラに押されているのか、兵士たちは言葉では強がっているものの剣を持つ手は震えている。それにしても国の転覆なんて、そんな大それた事をしたいわけじゃないのだが、向こうから大罪を押し付けてくるのならば受けてやろうと思っている。

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