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社畜から卒業したんだから異世界で自由を謳歌します  作者: 灰谷 An
第4章・ロリっ子な吸血鬼の女の子
153/202

148:収入減少

 ギルド・ボガードのアジトでは、月に1回の定例会議のようなものを開いていた。そこにはブギーマンを始めとするギルド・ボガードの幹部が勢揃いしている。



「それでは今月の収支報告をさせていただきます。今月の司会進行は《アルバー》が勤めさせていただきます」



 不気味な仮面を付けているブギーマンは、司会進行役のアルバーが自己紹介したところで立ち上がる。いつもならば、このまま始まっていたのだが、今日はブギーマンの様子がおかしいと幹部たちはドキッとする。



「この中で俺の許可なく戦闘を行なった人間がいるな? 俺に対して隠し事が通用すると思ってる時点で、呆れてはいるんだが………自己申告するか?」


「も 申し訳ありませんでした!!」


「自分も本当に申し訳ありませんでした!!」



 ブギーマンが話題に出したのは、俺たちが滞在していた街での戦闘についてだった。無駄なトラブルを起こしたくないブギーマンからしたら、余計な戦闘はトラブルを引き起こす行為だと苛立っていた。

 その話を聞いて俺と戦闘したオフグッギと、イローナちゃんたちと戦闘になったアウワは立ち上がって誠心誠意の謝罪をブギーマンに行なった。



「お前たちだったのか。たった1回の小さなミスで、重たい罰を与えるのは鬼畜というもんだろう………今回は許してやるが、次にやった場合は首を刎ねるからな」


「「は はい!!」」


「分かれば良いんだ。俺は、お前たちを家族だと思っているんだ。そう簡単に罰なんて与えなくないからな」


「「ありがとうございます!!」」


「よし、次から気をつけろ。アルバー、お前の進行を止めて悪かった………続けてくれ」


「了解しました!!」



 2人の青ざめた顔を見て、溜息を吐いてから言うべき事は伝えて罰を与える事は無かった。その瞬間の緊張感と言ったら、これまで以上にない程と言っていい。

 そんな風に会議が凍りついたところで、ブギーマンが進行役のアルバーに謝罪をしてから進めるようにいう。それでアルバーは終始報告書のページをペラッペラッとめくって話を進めるのである。



「今月は先月よりも10%のマイナスでした。この原因は国外への《女神の雫》の売買が減ったからだと、我々は考えています」


「やっぱりノースカリクッパ王国での内乱が影響で売れていないみたいだな」


「はい、そういう事だと考えています」



 ギルド・ボガード的に女神の雫が、上手く売れていない事によって利益が減っている。ブギーマンはギルド・ボガードを使ってでも、ノースカリクッパ王国の内乱を終わらせなければいけないと考えている。



「そして利益が減ってしまった事によって、《あの方》への上納金の支払いが難しくなってきています」


「上納金を捧げなければ、俺たちの命が危ないところがあるからな………チャーザック博士に話を通して、女神の雫の納品数を減らしてもらおうか」


「それで失った分の利益は回収できるでしょうか? その分を上納金に回しても厳しいところが………」



 どうやらギルド・ボガードの背後に、けつ持ちがいるらしいが利益が少なく上納金を支払うのが厳しいみたいだ。どうにか金を作って上納金を払わなければ、このギルド・ボガードがけつ持ちに崩壊させられてもおかしくはない問題である。

 ブギーマンとしてはチャーザック博士に頼んで、女神の雫の買取を少し減らしてもらおうと考えている。そうすれば浮いた金で上納金が払えるからだ。



「エルマーの野郎との取引が消えてから、こっちはカツカツの生活しかできやしねぇ………」



 ギルド・ボガードは、俺が倒した戦争仕掛け人のエルマーとも取引していたみたいだ。その時は、それなりに潤っていたらしい。しかし俺が倒してしまった事で、取引が無くなって貧乏生活になったのである。



「これなら俺たちで、もっと外に女神の雫を売った方がリスクは増すが、それなりに利益は出るだろうな」


「それでしたら、良いところがありますよ? 中陸にある《ロコモコ聖皇国》が、前から女神の雫を欲しがっているという話を聞きました」


「ロコモコ聖皇国か。あそこも宗教的な問題で、世界連盟には加盟していない非加盟国だ………通路も考えれば問題なく運べそうだな」



 遂には自分たちで売りを行おうとブギーマンが言ったところで、アルバーが女神の雫を欲しがっている国があると情報を伝えたのである。それ聞いて、確かに良い取引先かもしれないと検討する事にした。




* * *




 エッタさんたちは街の兵士たちに頼まれて、南の方にある要塞を落とす為の作戦に参加する事になった。その前に俺に許可を取りたいからと、遺跡のあった街に戻ったのであるが目の前に驚きの光景が広がっていた。



「ど どうなっているの………昨日まであった街が、どうして消えているの」


「瓦礫の山だわん。ミナトさんたちは………」


「居るかもしれないから探すにゃ?」


「そ そうね。兵士の人たちと協力して、ここら辺の探索をしましょう………ミナト様たちならば、これくらいの事は大丈夫だと思うのですが」



 俺も驚いた瓦礫の山を見て、エッタさんたちも驚愕のあまりに言葉を失っていた。エッタさんも俺が、どうなったのかと不安が胸を過ぎって動けないでいる。

 するとエッタさんの様子がおかしいと、シュナちゃんが街の中を探索するかと冷静に聞いた。そこでエッタさんは我に帰って、兵士と協力しながら街の中を捜索する事にしたのである。



「しかし私たちが、立ち去った後に何が………」


「こんなに酷いって事は、国王軍が攻めて来て何かなったに違いないわん!!」


「ここまで徹底的にやるとは思わなかったにゃ………」



 そこら中に転がる死体に、顔を歪めながら捜索していると俺が死んでいるのではないかと、凄まじい不安に襲われて身体中に汗をかく。



「あっ!! エッタさん、こっちに来るわん!!」


「な なに!?」


「ここにミナトさんのメモがあるわん!!」


「本当!? どれ!!」



 カエデちゃんが俺の残したメモに気がついて、エッタさんに報告すると脱兎の如く駆け寄る。バッとメモを確認すると、確かに俺の字だと確認して安堵する。



「よ 良かったぁ………ミナト様たちは、無事に生きているみたいですね」


「なんて書いてあるんにゃ?」


「先に進むからメモを読んだなら、俺たちの後を追ってくれって書いてあるわ」



 安堵しているエッタさんに、シュナちゃんはメモに何て書いてあるのかと聞く。そこでやっとエッタさんは、メモの内容を確認して2人に伝えた。俺たちが無事に生きている事を確認したので、3人は何とか南の要塞攻略に気兼ねなく挑む事が決まった。



「そのファミリーのリーダーへの確認はしなくてよろしいのでしょうか?」


「この場に居ないのなら連絡のしようが無いので、後で私から報告します………それで怒られるようならば、私が全責任を負います」



 市民軍の兵士は俺への許可は取らなくて良いのかと、エッタさんに聞くが俺がいない為に、どうやっても許可は取れないので後で詳しく話すと言った。その際に責任を取る事になったら自分が取ると、エッタさんは男気ならぬ女気を見せたのである。

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