014:やり直せるのなら
俺の十二聖王のアランが剣を交えようとした瞬間に、この国の国王が突然に現れて剣をしまう様に命令した。
この国王こそが奴隷市についての情報を教えてくれます爺さんであり、とても感謝している1人だ。
しかしミレーヌやアランたちが直ぐに地面に膝を着けて、他の兵士たちが冷や汗を流しているのを見て本物なんだと理解する。
「こんなところで、強者たちが衝突すれば市民に、どれだけの被害が出るか理解できないわけじゃなかろう?」
「それは分かっております………ですがっ!! この男は、私を侮辱するどころか殴りかかって来たのです!!」
「なんじゃ? 余の聞いた事だけを答えろ」
「も 申し訳ありません!!」
国王は俺たちに向かって、剣を交える危険性について正論な注意をしてくれた。
それに対してアランは俺が悪いんだと言おうとした途端に、この世の終わりかというくらいの目で王様に睨まれて黙ってしまう。
「それでも お主も殴りかかったのは軽率だったのでは無いか?」
「そうですね。確かに、こちら側に対しての悪口を吐かれたくらいで手を出すのは………子供と同じだと反省しております」
もちろんアランが注意されたのなら俺にも注意されるだろう。
ここでアランの様に言い返しては、それこそ本当のガキになってしまうからな、大人として頭を下げる事にしよう。
俺が頭を下げた事に、国王はうんうんっと頷いているので、少しは許してくれたみたいだな。
「お主は、キチンと理解しているみたいじゃな。これで丸く納めるのは、余としても良いのだが………お主たち互いの気持ちも理解できないわけじゃ無い。それで、余から提案させてもらおう」
「提案ですか?」
「そうじゃ!! 明日から夏の収穫祭が始まる………そこで2人には模擬戦をメインイベントとしてやろうでは無いか!!」
「な!? 私と、この男で模擬戦ですか!?」
「なんじゃ? また お主は余に文句でもいうのか?」
「い いえ文句なんてありません………」
まさかまさかの提案で、俺すらも予想していなかった。
コロッセオにて俺とアランの剣ではなく、木刀を使った模擬戦をやってはどうかと提案して来たのである。
提案とは良く言ったモノだが、国王から満面な笑みで頼まれてしまったら、この国の何処を探しても断れる人間なんていない。
俺も冒険を始めたというのに、こんなところで詰んでしまうなんて事だけは、絶対に避けなくてはいけない事だ。
「私は一向に構いません。しかしGランクの私が、あの十二聖王さまと勝負になるのでしょうか?」
「Gランクだと!? あの力で駆け出し冒険者………」
「ほっほっほっ。全くもって問題はないだろう!! なんせ、Gランクと打ち明けるまで、アランは分からなかったくらいだからのぉ」
俺はアランに対して少し煽ってやろうと思って、自分とアランは釣り合うのかと国王に話す。
その弄りを理解したのか、国王はチラチラッとアランを見ながら問題ないだろうと言って、アランを赤面させるのである。
「それじゃな。もう ここは解散という事で良いじゃろ? 怪我をしたエルフさんや、不当に殺されなエルフさんたちの弔いなどは国を上げて行わさせてもらいますからな」
「弔いに関しては、私たちでやりますので怪我人の治療だけは頼っても宜しいでしょうか?」
「最高の医者を用意いたしましょう」
国王はエルフ族に対して深々と頭を下げて、怪我をしている人たちには国最高峰の医者を用意して治療をし、謝罪の一端として豪華な食事を用意すると約束する。
そのまま俺たちは王宮に呼ばれる事になっているが、エッタさんはカミラちゃんの治療に付いていると言って二手に分かれる。
「エッタさん。大丈夫かなわん?」
「精神的なところが心配だにゃ………」
「きっと大丈夫だよ。エッタさんは、本当に強い女性だから心配は無いさ………どこかで折り合いをつけて戻ってくるよ。俺たちは、何があってもエッタさんの味方でいれば良いんだ」
「そうだねわん!!」
「そうだにゃ………」
エッタさんは少し元気を取り戻していたが、それでもカエデちゃんもシュナちゃんも心配で、少し元気がないのが分かる。
それでも2人は王宮で用意してもらった、豪華なフルコースを食べ始めると元気を取り直してバクバクと食い意地を発揮する。
「カミラちゃんの切り落とされた足と腕は、普通の魔法どころか上級魔法でも厳しいよな………」
「やっぱりそうなんだわん………」
「特級魔法ならいけるのかにゃ?」
「ワールドクラス級なら可能だろうな。まぁそんな魔法を使える人間なんて世界中探しても片手に収まるくらいだ………」
残酷な事だがラノベや漫画の様にチートを使って、亡くなった腕を回復させる魔法使いなんて世界的に5人もいない。
その為に、この国の最高峰の医療を使っても手足を回復させるまでの医療はなく、メンタルのケアが先だろうと考えている。
そんな風にシュナちゃん・カエデちゃんと食事をしているところに、気持ち顔色の悪いエッタさんが食卓にやって来た。
「カミラちゃんは、どうだったか?」
「はい。手と足の傷口は綺麗に塞がって、栄養も食事をとって休養を取れば問題ないと………他の子たちも栄養失調気味ですが、それ以外は問題ないと言ってました」
「そうか。エッタさんも食事をとって休養を取ろう………休んで癒されるモノではないが、人間は食事して寝れていれれば簡単に死ぬわけじゃないからね」
「そうですね。ご飯いただきます………」
「たくさん食べると良い。俺は明日の決闘に向けて、ちょっと準備があるから席を離れさせてもらうよ………」
カミラちゃんが今直ぐ死ぬ状態でないのなら、メンタルケアさえすれば問題はないだろうが、問題といえばエッタさんの方では無いだろうか。
自分が逃げたせいで妹たちが、痛めつけられていたのかもしれないと思っているからだ。
そんな状態な人間に声をかけたところで、傷口を抉るだけで何の癒しにもなりやしない。
それなら男の俺は少し席を外して、女の子のシュナちゃんとカエデちゃんに任せようと目配せをして席を立ち上がると、エッタさんが急に立ち上がって俺に深々と頭を下げる。
「本当に妹を助けていただきありがとうございます………」
「エッタさん、頭を上げてよ。俺は助けるのが遅かったって思ってる………失った手足は、そう簡単に戻ってくるわけじゃないんだ。俺が少しでも早く助けていれば」
「そ そんな事はありません!! 私たちエルフは、ミナト様に助けられたんです………これは私の気持ちですが、これからもミナト様は世界を旅するんですよね?」
「あぁ王国を出たら、シュナちゃんたちの村を助けに行って世界を歩き回るつもりだよ………」
「それなら私も旅に同行させてもらえないでしょうか!! 妹の傷を治せる魔法使いを探したいというのもありますが………私はミナト様を愛しております!!」
まぁ何とびっくりする事だ。
あんなに気持ち悪いと言っていたエッタさんが、俺の事を愛しているって言ったのか?
そんな嬉しい事を言われたら助けられなかった罪悪感が、少し和らいでしまうじゃないか。
「俺を好きになるのは大変だよ? ここから先、俺はハーレムを作ろうとしてるんだからね………それでも良いの?」
「はい。ミナト様の側に居られるのなら………私はハーレムの1人でも構いません!!」
そんなウルウルした瞳で見ないでくれ。
元々女の人に弱い俺が、さらに弱くなってしまうよ。
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