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社畜から卒業したんだから異世界で自由を謳歌します  作者: 灰谷 An
第4章・ロリっ子な吸血鬼の女の子
141/202

136:辛い事

 ノースカリクッパ王国の首都レイアンにある王城にて、俺たちが撃退した国王軍が撤退しているというのを国王に報告する。

 国民が食糧にありつけず、痩せ細っていくにも関わらず、ノースカリクッパ王国の国王は何キロあるのかと思う程に肥満体型なのである。



「何だと!! あの街は、兵士も十分に育ってもいない街のはずだ………それなのに失敗したとは、どういう要件なんだ!!」


「それなのですが、突如として現れた冒険者たちによって撃退されたものと思われます………」


「冒険者に阻まれただと!? どうして冒険者が、我々の戦争に手を出したのだ………その冒険者たちの討伐を直ぐに行なえ!!」



 ノースカリクッパ王国・国王《ギン=オーイン》は、俺たちのような冒険者に撃退されたと聞いて席から立ち上がるのである。自分たちの戦争に手を出した事に、ギン国王は怒り心頭のようだ。

 直ぐに部下に対して俺たちの討伐を行なうように、全部隊に通達しろと指示を出した。そしてドサッと椅子に座り直すと、シーンッとした部屋の中で溜息を吐く。



「はぁ……このままでは、父上と祖父君に顔向けする事ができやしない………絶対に我の代で、この国を完璧な国に仕上げなければ」



 現在の状況にギン国王は、相当な疲れが見えているのである。そんなギン国王の前に、柱の影から1人のピエロマスクを付けた人間が現れた。



「きっきっきっ。随分と疲弊しているみたいで、俺たちが売っている薬を安値で渡してやろうか?」


「お前は……いつも当然に現れるな。何しに来たんだ、ブギーマンっ!!」



 何とピエロマスクを付けた人間は、俺たちが探しているギルド・ボガードの首領であるブギーマンだった。

 あまりにもピエロの姿が似合うくらいの笑い声と、テンションの高さでギン国王の前に歩いていく。そしてギン国王に対して危険な薬を売ってやると言った。

 そんな事を言われたら、普通の王様であるならば処刑が妥当なのであるが、ギルド・ボガードの後ろ盾があるからこそノースカリクッパ王国が成り立っている。だからこそブギーマンには強く出れない。



「きっきっきっ。何しに来たかって? そんなの決まってるじゃないか………最近になって、女神の雫の売り捌くスピードが落ちてないか?」


「そ それは……我々の戦況が関係しているのだ!! 少しくらい売り捌くスピードが落ちても問題はないだろ」


「そんな口を聞いて良いの? アンタらは、俺たちのバックアップがなきゃ市民軍に負けてるだろ?」



 ブギーマンはギン国王に対して、女神の雫を国外に売るスピードが落ちているという。それを聞いた瞬間に、ギン国王はピクッとなって少し焦るが、戦争があるからという理由で言い訳をした。しかしブギーマンは言い訳をしたのを聞いて、自分たちからバックアップしてるからこそ戦争が成り立っているだろという。

 さすがの国王という位にいる人間でも、ギルド・ボガードの手助けがなければ市民軍との戦争で、敗北しているだろうという負い目がある。そのせいでブギーマンの主張している事に反論する事ができない。



「それで今は焦ってるみたいだけど、何かあったのかにゃ? ちゃんと女神の雫を売り捌くのなら、俺からも手助けしてやっても良いぞ?」


「いや、ブギーマンには関係のない話だ。それよりも女神の雫を売り捌くスピードは、もう少し落とさせてもらえないだろうか………」



 ブギーマンはピエロのマスクをしているが、その下では笑っているだろうというのが伝わるくらいに、全身からテンションが高いというのが分かる。しかしギン国王が売り捌く速度を下げたいという頼みを聞いた瞬間に、ブギーマンは歩いて行きギン国王の前に行くと、髪の毛をガシッと掴んで自分の顔の前に持ってくる。



「調子に乗るなよ? 俺が、いつまでも優しい顔をしてると思うなよ………互いに楽しくやろうや」


「は はい……」



 ブギーマンはドスの聞いた声を出してから、ギン国王が涙目で頷かせたのである。そして直ぐに声色を元に戻して、陽気なブギーマンに戻った。

 そのままブギーマンは仕事を終えたので、帰ろうとした時にハッとした顔をして立ち止まる。



「そうだ。あの話を《チャーザック=ダートン》博士に話したところ手を貸してくれるみたいだ」


「なっ!? それは本当か!!」


「まっ。それなりに手を貸してやるから、女神の雫の件は任せたから……ね」


「わ 分かった」



 どうやらギン国王はチャーザック博士という奴にも協力を頼んでいたみたいだ。それの協力が見込めると分かったらしく、さっきまでの恐怖心が消えている。




* * *




 俺たちはレオ兄を見送った後、自分たちの部屋に荷物を置きに行ってから食堂に降りてくる。そして ご飯を食べながら街の兵士の男に話を聞くのである。



「この街の戦況は、どうなってるんだ? 前の街では、国王軍の人間が街に火を放ってたぞ」


「そうか、お前たちだったのか。電話で、お前たちが消火活動に手伝ってくれたと聞いた………俺からも礼をさせてもらう」


「な なんだよ!! 別に、そんなつもりで助けたわけじゃねぇんだよ………それで街は、そんなに被害が出ていないのか?」



 俺が兵士の人間に街の状況を聞くと、最初の街の人間から消火活動の話を聞いていたみたいだ。それに関して頭を下げて感謝してきたので、恥ずかしくなって兵士の男を座らせるのである。

 そして改めて俺は兵士の男に、この街での戦況に関して聞くと渋い顔をして答える。



「この街は何年も前から、怪我人が運ばれる場所になっているんだ。治る見込みのない奴らは、こっちで選別しなければいけない………それが何よりも辛い事だ」


「そりゃあ生命の選別ってのは辛いよなぁ………怪我が治った奴は、最前線に戻っていくのか?」


「そうだ、怪我が治り次第、自分の隊に戻って戦争を続行するんだ。それを30年も続けているんだ………そろそろ決着をつけなければ、さすがの我々でも力尽きてしまいそうだ………」



 話を聞く限りでは市民軍は疲弊し切っている。まぁ30年も前から戦っているのだから当たり前だ。ここら辺で白黒はっきりつけたいところだが、そうも簡単に内戦が終わるとも正直なところ思えない。



「直ぐに決着がつくとは思えないが、国王軍のやり方には俺にも思うところがある………この国にいる間だけだが、市民軍に手を貸させてもらう」


「本当か!? 分隊長を一撃で倒せるだけの実力がある奴が、手を貸してくれるとなると………こっちとしては千人力なんだ!!」



 俺的には俺らしくないとは思うものの、この市民軍に手を貸してやりたいと思っている。ローズちゃんとの約束もあるので、この国にいる間だけの手伝いになる。

 まぁ少しの間の手伝いではあるが、それでも無いよりはマシなんじゃないかと浅はかな考えをした。そんな考えだったが、兵士の男は握手をして感謝してくれる。



「自己紹介が遅れていたな。俺は市民軍の小隊長をやっている《ヤン=ドギュン》だ」


「ヤンさんね。こちらこそ、よろしくお願いします」



 俺は《ヤン=ドギュン》と固い握手をした。

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