128:おもてなし
俺たちはノースカリクッパ王国に入国して早々、街の火事を皆んなで協力して消火にあたる。火事の原因が人為的なモノだとわかって国王軍の卑劣さを痛感する。
「お 終わったぁ〜。けっこう時間かかったなぁ………」
「そうですねぇ。1時間ちょっとはかかりましたね」
俺たちは時間がかかったものの何とか街の消火活動を終了させた。1時間を過ぎるくらい時間がかかった為、終わった瞬間に尻餅を着くくらい疲れた。皆んなで頑張ったおかげで、死者を1人も出さずに済んだ。
「この街を助けていただき誠にありがとうございます」
「いやいや、死者が出なかったのは良かったですよ。それにしても放火をしたのが、国印の鎧を着た騎士だという情報があるみたいです」
「そうです。犯人は国王軍の人間だと思います………ここには市民軍の会議場があるので」
俺たちのところに市長がやってきて、火を消してくれて感謝するとお礼をしてくれた。どうやら街が狙われたのには、この街には市民軍の会議場があるかららしい。
俺らは市民軍と国王軍との戦いについて詳しい話を聞きたいからと、市長の家まで連れて行ってもらう事になったのである。そこで詳しい話を聞いて、この国での旅の仕方を考えようと思った。
市長の家は国の現状からして、そんなに大きいものではなくて質素な家だった。俺たちが中に入ると、綺麗な奥さんと男女の子供がいた。
「この国の現状は、どんな事になってるんですか?」
「ここ数年で、この国は悲惨なものになってますよ。内乱が激化していまして………国王軍の市民軍に対する対応が、酷いものになってきているんですよ」
「そんなに悲惨な事になってるのか。それで市民軍の隠れ家は、ここ以外にもあるんですか?」
「はい。ここ以外にも多くの隠れ家が、この国中に確保されています………それが何でか、国王軍の奴らに築かれ始めているんです」
この話を聞く以上、俺でも分かる事と言えば、市民軍の中にスパイがいる可能性があるという事だ。それが元々根っからの市民軍が、お金で雇われて情報を流していたのか、それとも国王軍の人間がスパイとしてやってきているのか、同じようで全くもって違う。
まぁ俺がそんな事を考えていても、この国を救えるわけじゃないので情報として知っておく事にしよう。とりあえず今日は、この街に泊まる事にした。市長さんが俺たちに豪華な料理を振る舞ってくれるらしい。
「どうなんだ? この街も食料が少ないのは、同じなんじゃないのか?」
「そうですね。確かに自分たちの分を削って、私たちに振る舞ってくれるのは心痛いですね………」
「でも、無下にしてメンツを潰すのはダメだよなぁ。それなら施しを受ける事にしようか」
「そうでござるなぁ。情けは武士の恥とは言ったものでござるが、受けないのも失礼でござる」
この街の食料を俺たちに譲ってくれるのは助かるが、自分たちの分を削ってくれていると思ったら心痛い。
しかし断るのもメンツを潰す事になって、失礼だと思ったので全員で受ける事にした。それでも食糧難な事から大した料理は出ないだろうと思っていた。
「うわぁ!! 美味しそうだわん!!」
「確かに凄い料理にゃ………」
「食糧難とは思えないな」
食卓に並べられた食べ物は、食糧難とは思えないくらいに豪華な品々だった。これらを見て、この街が食糧難だなんて思えない。骨付き肉に、新鮮な野菜と焼き魚という献立を見れば分かるだろう。
俺たちは飢えた狼のように、豪華な料理をバクバクと食べ進めていくのである。そして完食したところで、俺は市長に何故に豪華な料理があるのかと聞く。
「食糧難だって聞いたんですけど、どうして豪華な料理を出せたんですか? あぁもちろん、下に見ているとかではないので悪しからず」
「あぁそれでしたら、貯蔵している分ですよ。皆様のような助けていただいた人々に振る舞うだけの貯蓄はしているんです………もちろん、痛み始めたものは我々が自分たちで食べますけどね」
「そういう事だったのか。素晴らしい料理を頂いて、本当に感謝しかないですよ」
俺たちは美味しい料理を食べさせてもらった。ご飯を食べた後に部屋に案内してくれた。長旅で疲れているのもあるし、家事を消火活動した疲れもある。
もちろん俺たちは1人1人別の部屋を用意してくれたみたいで、俺は部屋に入った瞬間にベットにダイブして久しぶりのフカフカを満喫する。そして数分もしないうちに眠りについた。
* * *
オリヴァーを拿捕できなかった、クロスロード連盟軍のトラスト中将・ケニー少将・ナミカゼ少尉・ダフネ少尉の4名は元帥の元に呼ばれた。
「トラストがついていながら、どうしてオリヴァーが死ぬなんて事が起きるんだ? アイツをヘルアースに、ぶち込めたら犯罪の抑止力になるってのにな」
「ネルマ。今回は予想外の事態が起こった………まさかオリヴァーに、悪魔を召喚するだけの力を持っていたとは知らなかった………」
このトラスト中将と《ネルマ=アムール=グレーリング》元帥は、同期入隊のいわゆる腐れ縁である。しかしネルマ元帥は俺から手柄を奪う為に、トラスト中将を送ったというのに、このザマかと怒っている。
だがトラスト中将からしたら、まさかオリヴァーが悪魔を召喚するとは思っていなかった。それを知っていれば、オリヴァーは拿捕する事はできたはずだ。
「オリヴァーを拿捕できなかっただけじゃなく、そっちの若造はブギーマンの部下にやられたんだろ?」
「も 申し訳ありませんでした………」
「別に俺たちのメンツを守れなんて言わないが、仕事はちゃんとやってもらわなきゃ困るわな………ナミカゼもダフネも未来有望な軍人だから期待してんだ。その期待を裏切って欲しくはないな」
「はい。次は必ず成功させます………本当に申し訳ありませんでした」
ネルマ元帥はブギーマンにやられた事を指摘すると、ナミカゼ少尉たちは深々と頭を下げる。しかし怒っているというよりか、ナミカゼ少尉とダフネ少尉に期待している為にガッカリしてしまった。
それを聞いてナミカゼ少尉たちは、2度目の深々とした謝罪を行なったのである。そして戻って良いと言われて4人は元帥の部屋から退出する。
「トラスト中将っ!! 今回は中将の顔に泥を塗ってしまう形になって、本当に申し訳ありません………」
「良いんだ。どう過ぎた事を、言ったって過去に戻れるわけじゃない………切り替えて新たな仕事をこなすしかないんだよ」
「は はい!!」
「それとケニー。ネルマもあんな風に言っているが、俺たちに新しい仕事を振ってくれた。その仕事についての資料を、お前の部屋に送ってあるから確認して部隊を編成しろ」
「はっ。了解しました………あっそれとブギーマンに関しての資料が手に入りましたので、そちらは後でお渡しいたします」
トラスト中将は怒ってはいたが切り替えて、次の仕事に取り掛かるようにと肩をポンッと叩いて慰める。
それに感動してナミカゼ少尉たちは、歩いていくトラスト中将たちに頭を下げて感謝するのである。
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