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社畜から卒業したんだから異世界で自由を謳歌します  作者: 灰谷 An
第3章・残念なドラゴンニュートの女の子
130/202

126:動き出す世界

 ルイちゃんとユウト中将が感動的な出会いをするはずだった日から、約3日が経過して俺たちは順調に回復していた。もちろんカエデちゃんの治療も、並行して行なっているので回復の傾向を見せている。

 この3日間で起こった大きな事といえば、王なきフロマージュ王国にオリヴァーにとって変わって新たな女王が誕生した。



「フロマージュ王国と私たちが、前に進めるようにやったのは貴方のおかげです」


「そんなそんな。アーラ女王陛下が、国民の為を思っていたからこそです………それに、ここからがフロマージュ王国のスタートですよ」


「そうですね」



 こんな孤児出身の俺なんかに、女王陛下が頭を下げて感謝をしてくれている。こんな事が人生に、あと何回あるか分からないが、美人に感謝されるのは嬉しいな。



「それで、もうフロマージュ王国を出発してしまうんですか?」


「え? あぁはい。俺たちの傷も癒えたので、旅の続きをしようと思ってます。次に行こうと思ってるのは、隣国の《ノースカリクッパ王国》です」


「そこに行かれるのですか!? ノースカリクッパ王国といえば、世界連盟にも加盟していない国で内乱ばかりですよ!!」



 俺たちが出発するが寂しいのか、アーラ女王陛下は捨てられそうな子犬の顔をしている。それでも俺たちは、次の国に進まなければいけないのだ。

 っとかっこよく思っている時に、アーラ女王陛下は次の目的地であるノースカリクッパ王国は、危険だから行かない方が良いと忠告してくれた。そこは世界連盟に加盟していない為、クロスロード連盟軍は介入する事ができない。そして大きな特徴といえば、市民軍と国王軍が長い間、内乱が起きているというところだ。



「確かに危険かもしれないけど、世界の国々を回るって決めたからね………自由に世界を見たいんですわ」


「そうですか………それなら私から止める事はできませんね。皆様の健康を心から祈っております………」


「はい!! アーラ女王陛下も頑張って下さい」



 俺たちの健康を祈ってくれるのかと、俺は少し喜んだが社交辞令かと思ったら、ほんの少し寂しくなる。

 俺がフロマージュ王国城を後にして、皆んなのところに戻るとフローレンたちがいた。どうかしたのかと、俺は少し小走りになる。



「どうかしたのか?」


「どうかしたもクソもないだろ。俺たちは出発するから挨拶に来てやったんだろ」


「そうかそうか。アンタらは、次の目的地とかって決まってるのか?」


「そうですね。私たちは、クロスロード連盟軍との契約を切ったという事を、冒険者ギルドの本部に行って報告しようと思っています」



 フローレンたちは出発するからと、俺たちに挨拶しに来てくれたらしい。さすが十二聖王、そこの礼儀はキチンとできているみたいだ。

 それにしても冒険者ギルドの本部の話は聞いたりするが、その場所が何処にあるかは聞いた事がない。



「そういえば、冒険者ギルドの本部の場所を聞いた事ないんだけどさ何処にあんの?」


「お前ってSランクだったよな? 次のランクに上がったら、本部から通達くると思うぞ」


「そうなのか!? それじゃあ、その時の楽しみにとっておいてやるか………」



 冒険者ギルドの本部は気になるが、もう少ししたら本部の方から通達されるという事なので、今回は聞かずに楽しみにとっておく事にしよう。

 そんな会話をしてからフローレンたちは、冒険者ギルドの本部に向かってフロマージュ王国を出国した。




* * *




 トラスト中将たちが撤退している時に、寄った村でナミカゼ少尉とダフネ少尉が看病されていた。



「お前たちが、王都に来ないと思ったら………一体、何が起きたんだ? 少尉とはいえども、お前たちは将校クラスの軍人だろ」


「実は銀翼の夜明け団と戦闘していた時に、ギルド・ボガードの幹部が割り込んで来まして………」


「それで手も足も出ないで完敗したと? 情けない奴らだな。どれだけ修行してきたと思ってるんだ………まぁそんな事よりも世界連盟が加盟している国に、手を出してくるとは思わなかったな」



 トラスト中将はナミカゼ少尉の報告を受けて、訓練を積んでいる将校が簡単に負けるなんてと、驚きと情けなさの表情を浮かべるのである。

 しかしギルド・ボガードが、この国に入って仕事をしたのにも驚く。世界連盟に加盟していない、ノースカリクッパ王国を拠点に、同じく世界連盟に加盟していない周辺諸国を縄張りとしている。その為、基本的に世界連盟に加盟している国に手を出す事は少ない。



「今回、我々に手を出したという事は拿捕の許可が出るんじゃないんですか?」


「もう既に拿捕の命令は出ているし、手配書も世界中に配られている………しかしギルド・ボガードの首領であるブギーマンは、世界連盟に入っていないところに引きこもっている」


「というと捕まえられるところにはいないという事ですか………」


「そうだ。我々が勝手に、非加盟国に突入して問題になったらクビどころじゃないからな」



 ギルド・ボガードの拿捕は世界連盟としても視野に入れている事だが、いかんせん首領のブギーマンが世界連盟の加盟国に姿を現さない。非加盟国に乗り込んで、問題になったら世界連盟としても困るので手をこまねいているのである。



「だが、一歩でも加盟国に顔を出した時は捕まえる。全支部に警戒するように伝えろ………お前たちも、もう動けるところだろ」


「はい。数日休ませてもらったので動けます………今回は本当に申し訳ありませんでした!! ダフネさんも頭を下げるんだ!!」


「この度は申し訳ありませんでしたぁ………」


「帰ったら2人とも、俺の特別トレーニングをこなしてもらうから覚悟しておけ」



 2人は深々と頭を下げて、今回の失態についてトラスト中将に謝罪をする。それをみて孫のように思っているトラスト中将は、帰ってから鬼のようなトレーニングをすると言って出発や支度をさせる。




* * *




 大大陸の中央に位置する場所に、限られた人間のみが入られる《聖地ヴィルノブレス》がある。その聖地ヴィルノブレスの大きな城の最上階の一室に、この世で最も偉大な6人の人物がいる。



「報告いたします。フローレンを含む、数組のトップ冒険者が、我々との契約を切りました………」


「なに? このタイミングでか………」


「いや、いつ脱退してもおかしくはなかったぞ」


「これで冒険者の流れを扱いづらくなったな」


「いまさら操れるわけでも無かろう」


「また元に戻っただけの話。また新しい冒険者と契約して情報操作をすれば良いのだ」


「今は放置も良かろう………」



 ISOの人間がフローレンらの方向を、高そうな服に身を包んだ6人の老人たちに報告している。

 この6人の老人こそが、聖地ヴィルノブレス内だけではく世界連盟で最も権力を持つ人だ。そしてこの6人の老人たちを《六大天帝》と呼ばれている。

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