124:気になる文章
オリヴァーとの決着がついて2日が経った。
俺たちは長くに渡る、オリヴァーたちとの戦闘で負った傷を癒していた。それとは対照的に、クロスロード連盟軍は共和傭兵団の残党狩りに忙しく働いている。
「なぁカエデちゃんたちは、俺たちよりも遠くに飛ばされたのかなぁ?」
「んー、それは どうでしょうか。私たちが飛ばされた森が、この国の端だと思いますけど………」
「という事は、移動中に何かあったというわけか………ん? そういえば、イローナちゃんも居ないみたいなんだけど、何処かに出かけたの?」
「イローナちゃんでしたら、城の地下から遺跡のようなものが発見されたと噂に聞いて向かったみたいです」
「あぁそれなら俺も見たけど、古代文字みたいのが書かれてて分からなかったなぁ………」
カエデちゃんたちの到着に遅いと思っていたが、きっと3人とも少し手違いがあっただけで、直ぐにくると信じたいものだ。そんな風に思っているのと、イローナちゃんの姿も見れないと思ったら、城の地下で古代文字を見に行っているみたいだ。
場所は変わってイローナちゃんの方になる。城の中はある程度の警備をされていて中に入れない。
「私を、この中に入れて」
「そういうわけにはいかないんだ。この中に入れるのは王族か、クロスロード連盟軍の関係者のみだ」
イローナちゃんは入り口の見張りをしている人間に、中に入れて欲しいと頼むが丁重に断られる。それもそうだ、イローナちゃんは普通の人間なんだから。
それでもイローナちゃんは諦めずに頼み込むもんだから、見張りの人も困ってしまっている。すると、そこにトラスト中将が姿を現したのである。
「どうかしたのか? この子は?」
「これはトラスト中将っ!! こちらの女の子が、地下の神殿に入れて欲しいと言ってきて………」
「この子がか? 確かミナトとかいう冒険者のファミリーだったな………神殿に書かれているのは、古代文字で学者の中でも読める人間は少ないんだぞ」
「私は古代文字を読めるわ………」
「なんだって? その年齢で限られた人間しか読めない古代文字が読めるというのか………ふんっそれなら面白いな。その子は俺が神殿に案内する」
トラスト中将は何があったのかの理由を聞いてから、イローナちゃんが見たとしても古代文字で書かれているから読めないだろうという。だが、イローナちゃんはトラスト中将に古代文字を読めると話した。
そんな話を聞いて、15歳という年齢で古代文字が読めるのかと素直に驚く。それなら面白いと言って、トラスト中将が自ら中に案内するという。
「古代文字が読めると言っていたが、その古代文字は何処で習ったんだ?」
「私の両親が学者で、私も考古学を学んでる………」
「ほぉ君の両親が学者をしていたのか。だからと言って簡単に読めるもんじゃ無い………君の努力もあったのだろう」
世間話としてトラスト中将は、どうしてイローナちゃんが古代文字を読めるのかと聞いた。それに対してイローナちゃんは、古代文字を見せてもらうのだからと親が学者である事を隠さずに話した。
そんな世間話をしているうちに、古代文字が壁一面に書かれている地下に到着した。部屋は悪魔によって少し壊されていて文章として欠けているところがある。
「あの悪魔が壊したせいで、欠けているところがあるけど、それでも問題は無いのか?」
「うん。特に問題は無さそう………」
「そうか、それなら良かった。ところで、ここまで連れてきた礼として、読み解いた事を聞かせてもらおうか」
「それはできない。でも、ほんの少しなら教えてあげなくは無い………」
トラスト中将は連れてきたのだから文字の内容を聞かせるようにいう。しかしイローナちゃんからしたら、教えてあげるような内容じゃないと断る。だが、少しは誠意を見せる為に、ほんの少しだけ話すと約束した。
イローナちゃんは読めるところを、スーッと指でなぞらいながら読む。顔色1つ変える事なく読み進めているのをトラスト中将は、少し離れたところから腕を組みながら見ているのである。
イローナちゃんが古代文字を読み始めて、約1時間半くらい経った時に立ち上がって背中を伸ばす。
「なんだ、終わったのか?」
「終わった。さすがに疲れた………」
「それで、そこに何て書かれていたんだ?」
「1つ言える事は、あなた方が嫌う情報があった。それだけは教えておいてあげる………歴史は教えてもらうもんじゃなくて、自分から追い求めるものだよ」
「あ あぁ……」
読み終えたイローナちゃんに、トラスト中将は何が書かれているのかと食い気味に聞いた。イローナちゃんが教えてくれたのは、世界連盟が嫌っている情報が書かれているという事だけを教えてくれた。
そしてイローナちゃんは続けて、歴史とはという注意というか自分の気持ちというか、そんな風な事を言って地上に上がっていくのである。取り残されたトラスト中将は口の前に手を持って行って、うーんっと少し困ったような顔をしていた。
そんな事が城で起きている最中、俺たちが休憩しているところに、カエデちゃんたちが帰ってきた。カエデちゃんはシュナちゃんに肩を貸してもらって歩いている。
「3人とも無事でよかった!! ん? カエデちゃん、どこか怪我でもしたの………」
「ちょっと傭兵団との戦いの時に、私が油断してしまったんだわん………」
「違うにゃ。カエデは、私を助ける為に怪我をしたんだにゃ」
理由なんて何でも良いんだ。この3人が元気なまま帰ってきてくれたのだから。
そんな事を思いながら俺は2人に抱きつくと、最初は驚いた後にカエデちゃんはデレデレした顔になり、シュナちゃんは嫌がっていながら少し嬉しそうな顔をした。
ルイちゃんもドラゴンニュートの尻尾が、フリフリとしているのを見えて誘った。
「せ 拙者は大丈夫でござる!!」
「そんなの良いから、ルイちゃんも2人の為に頑張ってくれたんだよね? それなら遠慮なんてしなくて良いんだよ」
「そ それじゃあ。失礼するでござる………」
武士としてのプライドなのか、少し遠慮している姿を俺に見せてくれる。しかし遠慮なんて俺たちの仲では、逆に遠い存在の感じがするから嫌いだ。
だからルイちゃんに遠慮なんてしなくて良いと言ったところ、スッと俺の胸に飛び込んできてくれた。なんか動物が心を開いてくれた感じがして嬉しい。そのままルイちゃんは俺の胸に顔をつけて、ゴシゴシッと擦り付けて喜んでくれているみたいだ。
「あっ。そういえば、王都にルイちゃんのお父さんが来てるんだよね」
「本当でござるか!? 父上が、この街に………」
俺はハッと思い出したように、ルイちゃんに父親が街に来ている事を伝える。すると胸に埋めていた顔をパッと上げて、本当なのかと驚いた顔をしている。
表情の感じからすると驚きと、どうしたら良いのかという困惑の表情だった。確かに子供の頃に出て行った父親が、この街にいると言われても困惑するのは、俺にだって理解できる話だ。
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