122:一悶着
俺がオリヴァーと王城の中で戦闘をしている時、王都グラスではエッタさんたちが色々と忙しくしていた。その1つが、王都にやってきたクロスロード連盟軍の足止めだった。
「そこを退きなさい!! 我々は《オリヴァー=スタドール》の拿捕にやってきた、クロスロード連盟軍だぞっ!!」
「そんなのは知っているわ!! だから何なの!!」
「このままでは お前たちを拘束する他、無くなるぞ!!」
クロスロード連盟軍の軍人たちは、エッタさんたちに対して道を開けるように言うが、俺とオリヴァーの戦いを邪魔されないように断固と道を開けないと主張する。
エッタさんたちも殺気を出して凄む事で、軍人たちも少し後ろに引いてしまっている。どんな人間が来ようと、エッタさんたちは道を開けるつもりは無いのである。
「退け、退けと言っているんだ。こりゃあ、何とも言えない抗議をされているなぁ………」
エッタさんと軍人たちが口論していると、後ろの方から軍人の波をかき分けて、トラスト中将が現れたのである。
屈強の軍人たちが凄んでいるのにも関わらず、エッタさんたちが一歩も退かないのを見て、凄い奴らだと感想を述べた。
「そこに居るのは、十二聖王のフローレンか? フローレンも、そっち側に立っているのか?」
「えぇ私は、ミナト君がオリヴァーと戦う権利があると思っているので」
「そうかそうか………ならば、君との契約を打ち切るぞ?」
トラスト中将はエッタさんの方から、近くに立っていたフローレンの方に目を向ける。フローレンはクロスロード連盟軍と、契約している為に、こっち側に来るようにいう。
しかしフローレンは、俺とオリヴァーは戦闘する権利があるとトラスト中将に言った。それを聞いてトラスト中将は、フローレンの態度を鼻で笑って契約を切ると脅しを入れた。
「私たちとの契約を切ると脅していますか? それなら私たちから言わせていただきます。もうとっくに、私たちの中で結論が出ていました………連盟軍との契約を切らせていただきます」
「そうか。それじゃあ、この時をもってフローレンを含む4名との契約を切る………これで、お前たちを捕まえられる」
フローレンは、いつもオドオドしているが、今はトラスト中将の顔を見つめて契約を切ると言った。それを聞いたトラスト中将は、反復するように契約を切る事を宣言した。
これによってフローレンは、クロスロード連盟軍との関係が無くなった事になる。これでトラスト中将は、フローレンをオリヴァー拿捕の妨げをしたと捕まえる事ができる。
「それで、我々の指示を聞かないのは? 君たち6人と言う事で良いのかな?」
「えぇ我々は断固として、ミナト様の戦闘を妨害しようとしている貴方たちを通しません!!」
「ミナトか。最近で始めたルーキーの冒険者………かなりの速度で、SSランクに上がったみたいだな。齢16歳にして、トップ中のトップになるのは、確かに凄い才能を持っている」
エッタさんたちに対して最後の警告を行なう。するとトラスト中将は、俺の名前を聞いて優秀な冒険者だなと言った。まさかトラスト中将から、そんな言葉が出るとは思わなかった。
「しかしだっ!! どんな人間であろうと、世界の秩序を守ろうとしている我々の邪魔は何人たりともできん………それが期待のルーキーだとしてもな」
やはり俺であろうとも自分たちの邪魔をする人間たちを、トラスト中将は捕まえようと考えている。それもそのはず、トラスト中将たちは世界で唯一の連盟による平和維持組織なのだから。
トラスト中将の殺気というのかオーラというのか。体から放たれているものは、とてもじゃ無いが常人のそれじゃ無い。というか人間なのかも怪しいレベルのオーラを感じる。
しかしエッタさんたちも、俺のメンツを考えてトラスト中将を王城に向かわせるわけには行かないと気張る。
「絶対に王城へは行かせない!!」
「いいや、王城に行くのは決定事項だ………」
今にもエッタさんたちとトラスト中将は、乱闘が始まろうとしていたのである。
ほんの少しの緊張感とプライドの糸が張り詰める。
「ありゃ? これは何かの祭りが始まるのか?」
「ミナト様っ!? もうオリヴァーとの戦いは終わったんですか?」
「あぁ問題なく終わったよ。オリヴァーなら、城の王の間で伸びてるさ」
乱闘が始まろうとしたところに、俺はヒョコッと顔を出して何をしているのかと、わざとらしく聞く。そんな俺が突然に現れたのだから、エッタさんたちは驚く。
「オリヴァーを単体で撃破したのか? あの一時期、五大傭兵に数えられていた奴をか………これは、ただの期待のルーキーというわけじゃなさそうだな」
「そう思います? というか、そちらの方は………普通の軍人ってわけじゃなさそうだけど?」
「これは挨拶が遅れたな。俺はクロスロード連盟軍・本部中将の《トラスト=ハラダール》だ」
「これは丁寧に俺は冒険者の《ミナト=カインザール》です………長い付き合いになるかは、ちょっと分からないけど、よろしくどうぞ」
「これはカインザール………こちらこそよろしく」
オリヴァーの評価は、かなり高いものでトラスト中将は俺なんかルーキーが勝った事に驚く。まぁ16歳が伝説の傭兵に勝ったとなると驚くのは当たり前だろう。
そこからトラスト中将は、ハッとした顔をしてから自己紹介をして俺と握手を行なった。俺の苗字を聞いて、少しの間が空いてから挨拶を行なう。
「おいっ。直ぐに城の中にいるオリヴァーを拿捕………な なんだっ!?」
トラスト中将の部下が、オリヴァー拿捕に指示を出そうとした瞬間、地面が揺れて始めたのである。
王都にいる人間たちは地震に驚いていると、目の前にあった大きな城が崩れ倒壊した。どうなっているのかとクロスロード連盟軍も俺たちも白を見つめる。
「ん? あの城の瓦礫の上にあるのは………なんだ?」
「どれですか? アレは人のような………というか、裸の女でしょうか?」
「ゔっ!?」
「ミナト様っ!?」
俺が城の方を見ていると、瓦礫の上に人影が見えて何なのかと疑問を持つ。エッタさんも見てみると、裸の女性が立っているように見える。
本当に裸の女性かと思って、俺が目を凝らした瞬間に激しい腹痛に襲われて吹き飛んでいった。全員の視線は右から左に流れて、直ぐに全裸の女性に視線を集める。
そしてさっきは遠くて見えなかったが、全裸女性の手にはオリヴァーの首が持たれていた。つまりは謎の全裸女性にオリヴァーは殺されていたのである。
「全員、戦闘体制を取れっ!! この女の顔は………あの何年も前に排除された、スミカという女と同じだ」
「オリヴァーが愛したという女と同じ顔だって………こりゃあ、一悶着あるって感じかよ」
全裸女性の顔は何年も前に排除したはずのスミカの顔と一緒だった。しかしスミカがした事のないような下品な笑いを浮かべている。
「下等な人間如きが、この我を呼び寄せたのは失敗だったろうな」
「お前は誰だ」
「我か? 我は、この女の体に受肉された悪魔だ」
何とスミカの体に受肉した悪魔が正体だった。
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