011:奴隷市襲撃・中編
俺が護衛のボスと対峙している時に、地下室の方からエッタさんの悲鳴が聞こえてきた。
エッタさんの悲鳴には絶望やらの色を感じざるを得ず、捕まっているエルフたちに何かあったのだろうと察する。
「おいおい。ここに入り込んだ、ネズミはテメェだけじゃ無いみたいだな」
「そうだとしたら、どうだってんだ? お前に何か関係してるってのか?」
「多額で雇われているもんでな。テメェを殺して首を、ボスに渡せば増額してもらえんだよ」
ここを早く片付けてエッタさんのところに行ってやりたい。
暴走して復讐するのならまだ良い。
暴走して自分の命を自ら断つ可能性がある、それだけは俺の手で止めなければ絶対にダメだ。
「申し訳ないが、お前に構ってる時間はねぇんだ………さっさと終わらせてもらう!!」
・炎魔法Level1:ファイヤーボール
・風魔法Level2:ストーム
――――炎龍の吐息――――
異世界にきて初めて強敵と対峙しているが、コイツに時間を使っているわけにはいかない。
とても味気ないが炎龍の吐息で周囲を焼き一撃で倒してしまおう。
「初めての敵とは、もっと互角とかっていう風にやりたかったが事態が事態だしな………」
「おっと何処に行くのかなぁ? まさか、こんなもので死ぬとでも思ってるのか?」
俺が一撃で倒したと思ったが、ドレッドヘアーの男はニタニタした顔で、しかも無傷のまま炎の中から姿を現した。
「ちょいちょい。丸焼きにしたつもりだったが………思ったよりも強いじゃん」
「はっはっはっ!! テメェだって、まだ若く見えるが………相当なスキルを持ってるみたいだな!!」
「危な!?」
俺が無傷な事に驚いていると男は、身長くらいある太刀を持ちながらも瞬間移動したのかと思う程の速さで距離を潰してくる。
そして木の棒を振るかの様に、普通の人間なら振り上げるのも至難の業である太刀で斬りかかってくる。
それをギリギリで避けたが、頬は斬りつけられており、ツーッと血が流れているのを俺は人生初感じた。
「お前の その剛力はスキルかなんかなのか? それとも、ただ単に馬鹿力なのか………どっちかな?」
「テメェに説明する筋合いはねぇが、まぁどうせ死ぬんだから冥土の土産に教えてやっても良いか」
こういう戦闘狂の男は少し煽ってしまえば、自分の力を自慢したいが故にペラペラと説明し出すんだ。
俺のオリジナルスキル《コピー》は、触れれば良いものではなくてコピーしたい相手が、スキルを使ってからじゃないとスキルをコピーする事はできない。
アレがスキルならばコピーして、俺の力の糧にしてやろう。
「これは俺のオリジナルスキル《豪剣》だっ!! どんな巨大な剣を持ったとしても普通の剣と同じ重さに感じ、さらに重ければ重い程に移動速度が上がるんだよ!!」
「思ってたよりも馬鹿みたいな能力だな………だから、そんな太刀を持ってるってわけか」
このドレッドヘアー男のオリジナルスキルは、大きい剣を装備しても自分に来る負荷を普通以下にできるらしい。
それでも建物内での戦闘も多い為に、巨大すぎたら逆に不利になりかねないからと、この太刀を長年使っているらしい。
「スピードが上がるだけのバフなんて、見た目騙しの残念スキルじゃないか………少しガッカリしたよ」
「そうか? これでテメェは一刀両断されて、1人から2人に増えるんだ………面白いじゃねぇか!!」
やっぱり速度だけはオリジナルスキルでバフされており、俺の高速移動魔法に匹敵するみたいだ。
しかしパワーは普通に太刀の性能だけで、筋力増強魔法を使っているわけでもないので、そこまで当たっても問題はない。
「ちょこまかと逃げてんじゃねぇよ!!」
・火魔法Level3《火ノ太刀》
「うわ!? 炎魔法じゃないが、ここまで強い火魔法は見た事ないな………これは当たれば、火傷じゃ済まないな」
火魔法とは炎魔法の下位互換となる魔法であり、大体は火魔法をマスターしてから炎魔法を習得する。
その前段階である火魔法を、かなりの高威力で出してきた事に俺は少しの驚きを感じている。
さすがは王都の違法奴隷市で護衛をしているだけあり、確実に人生最大の難敵とも言えるだろうな。
「そんな火魔法程度で大きい顔されてたまるか!!」
・炎魔法Level1《ファイヤーボール》
・光魔法Level1《ライトボール》
――――餓狼の咆哮――――
「なんだと!? 光魔法が使えるのか!!」
この世界で光魔法とは神官や一部の人間またはエルフにしか使えない事から貴重な存在とされている。
俺も神父様からLevel1ではあるが、コピーさせてもらって俺の強大に魔力を通す事で神父様以上の強さを出せる。
炎の玉と光の玉を混合させな事で、ダメージも入り神聖魔法なので裏の闇魔法でしか対処ができない。
「ちっ!! この〈ディエンテ〉様が逃げる事しかできないなんてあり得ない………調子に乗せすぎたな!!」
コイツの名前は〈ディエンテ〉っていうのか。
呼び名に困っていたところだから、ディエンテと呼べるのなら良い事だ。
まぁそんな事よりも高速移動で、俺の光の玉と炎の玉をスルスルッと抜けて俺の懐に飛び込んできた。
「くそっ!! 筋力魔法でも限界があるか………思ってたよりも太刀の威力が強いな」
「当たり前だ。この太刀は、剣として単体でバフされているんだからな………たかだか少しの筋力増強魔法では、俺の太刀の前には、ただの木刀程度になるんだよ!!」
相手の太刀は能力としてバフされているらしく、普通の剣と鍔迫り合いになれば相手の剣の方が簡単に壊されてしまうらしい、
だから俺の筋力増強魔法を使っても弾かれてしまうのか。
面倒な武器をディエンテは持っているかと思っていながらも、エッタさんたちの事が気になりすぎている。
「ちょっと荒くなってしまうかもしれないが………ちょっと試してみようか」
・土魔法Level2《土鎧》
・炎魔法Level1《根性の拳》
――――炎土の鎧――――
俺は少し荒くても良いからと剣を鞘にしまうと、土魔法を使って鎧の様なモノを体に纏った。
そして拳にはメリケンサックの形をした炎を装備したが、これは少し前世でメリケンサックに興味があったとは誰にもいえ無いよな。
「ちょっと歯を食い縛れよ!!」
・高速移動魔法Level2
「は 速い!? ぶふぁ!?」
俺は高速移動魔法で距離を潰して懐に入ると、前世の実家が空手の道場をやっていた影響で体が染み付いている。
信じられないかもしれないが、前世で空手を習っていた事もあって不良とかに絡まれても勝ちまくっていた。
その時の容量で俺は、ディエンテの溝尾に向かって綺麗に正拳突きをクリーンヒットさせる。
これは痛いわ。
あまりの衝撃にディエンテもゲロを吐いた。
「俺の事を馬鹿力だの言っていたが、テメェの方が馬鹿力じゃねぇかよ!!」
「どうも お褒めに預かりました」
「褒めてねぇよ!!」
「それじゃあ時間もないからさ。ちょっと無理矢理にやらせてもらうわ!!」
俺のパンチを喰らって地面に膝をついているディエンテだったが、俺の怪力に動揺の色が隠せないでいる。
どうでも良いけど、早くエッタさんのところに行ってやりたいから、このディエンテとは決着をつけよう。
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