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社畜から卒業したんだから異世界で自由を謳歌します  作者: 灰谷 An
第3章・残念なドラゴンニュートの女の子
116/202

112:引けない理由

 イローナちゃんはカルロと腕で鍔迫り合いのようになって、一旦距離を取りたいところだが、その隙を突かれるのを恐れる。カルロの戦闘経験は侮れるものではなく、距離を取る為に一瞬の隙を突かれるのは容易に想像ができる。



「どうしたんだい、お嬢ちゃん? そんなに俺の側にくっついていたいのかい?」


「そんなわけない………そんなに安い女じゃない」


――強制電撃コンパルション・スタンガン――


「おっと!! こりゃあビビビッと来る運命の出会いって奴だったりしてねぇ」



 自分にも多少のダメージが来るが、イローナちゃんはスタンガンのように周りに電撃を仕掛けた。さすがのカルロも痺れたくはない為、後ろに飛んで自分から距離を取ったのである。

 イローナちゃんは下手に近接戦闘をするよりも、エッタさんと連携をとって上手く距離感を保った方が良いと悟る。



「エッタさん。上手く援護してもらえる? そうしたら、私が気色悪いアイツを仕留める………」


「うん、分かった。援護なら任せて」



 エッタさんはイローナちゃんの頼みを聞いて、援護に自信があると目をメラメラと燃やしている。互いの意見を合わせたところで、イローナちゃんはファイティングポーズを取る。

 そしてカルロの方も軽く膝を曲げて、イローナちゃんたちの方を気持ちの悪い目でジロジロッと見る。少しの間が空いてから、カルロとイローナちゃんの拳が衝突し、周りにビリビリッと衝撃波が出るくらいの威力だった。

 そうやっているうちに、エッタさんは立ち上がって2人の間に割って入るように風魔法を放った。



「油断の隙もない危険なおん………おっと、今のは本当に危ないところだった」


「反射神経も悪くないみたい」


「えぇさすがは長いだけの時間を、戦いに当てただけはあるみたいね………」



 2人の間に風魔法を撃った事で、距離を取らざるを得なくなったカルロに対して、イローナちゃんは避けはするが姿勢を前のめりにして風魔法が通過したところで攻撃を仕掛けた。

 今のは完璧なタイミングで、普通の人間ならば倒していたかもしれないが、カルロは経験による反射神経で防いだ。

 イローナちゃんは今ので討ち取ったと思ったが、防がれた事にクールなイローナちゃんでも少し驚いた。意表を突いたつもりだったが、長年の戦闘経験で防がれてしまったのだ。



「確かに女性だって甘くみてたら、負けるって感じだなぁ。こりゃあピリピリし過ぎて、腹がキリキリしてくる」


「そのまま胃潰瘍にでもなってくれれば良いけど………」


「おぉ怖いもんだなぁ。少し本気を出した方が良いみたいだ、ちょっとの本気を見せようか」


――鉄の拳(アイアン・パンチ)――



 カルロは自分の右拳を鉄にして、さらに鉄拳を重ねるといったややこしい状態になった。鉄拳だけでも建物を破壊するだけの威力があり、そこに腕を鉄にするというパワーも入る。これらを考えるだけで、ゾッとする威力が出るだろう。

 さすがに高威力を出す分だけ、大振りになってしまう。という事はエッタさんとイローナちゃんは、真横に飛んでカルロの攻撃をギリギリで避けられた。



「敵ながら、こんな威力が出るなんて………これが当たっていたら、ゾッとするわね」


「鉄と鉄拳の合わせ技、これは反則じゃない………」


「さすがに大振り過ぎたかなぁ。腕を鉄にすると重たくてねぇ、これに慣れるのに何年も経ったよ」



 衝撃波がエッタさんたちの後ろにある建物に当たった、その瞬間に建物はドーンッと音と共に粉々に倒壊した。これが当たっていたらと考えると、本当に予想通りのゾッとしたのである。

 さすがは世界に誇る共和傭兵団の第1師団で、師団長をしているだけはあるみたいだ。2人がかりでもカルロに勝つ可能性は、限りなく50%に近いだろう。それくらいにカルロは強く、俺がやっていても苦戦するのは確実だ。

 そんな事実があったとしてもイローナちゃんは、直ぐに立ち上がると2発目の鉄拳を撃たせる前に、一気に距離を詰めて右腕に電気魔法を溜め込むのである。



「あんな大技が、ポンポンと出るわけがない………今度は、私がドンドン押していく番」


――雷豪の飛拳サンダー・フライング・オブ・ハンド――



 イローナちゃんは腕の形をした雷を、カルロに向かって放つと体を鉄にしたがビリビリッと感電した。しかし それだけではカルロは倒れないと分かっているので、イローナちゃんはカルロの懐に入って腹に連打を入れる。

 10発入れたところで腕に限界を迎えた。それもそのはず、鉄の腹を何発も殴ったら腕が折れたっておかしくはない。



「どうだい? 俺の自慢の腹筋は………あらあら、そこまで吹き飛ぶなんて女の子は軽くてたまったもんじゃないな」


「イローナちゃんっ!!」



 自分の腹筋に自信があるみたいだ。カルロは視線を下に下げるとイローナちゃんと目が合う。そして鉄拳と鉄の腕の合わせ技を使って、イローナちゃんを何メートルも殴り飛ばした。

 エッタさんはイローナちゃんが心配だったが、さっきみたいに視線をずらした時に殴られるのを避ける為にだ。グッと堪えてから目眩しの為に風を、カルロに向けて放った。その隙にエッタさんは、イローナちゃんのところに駆け寄る。



「大丈夫っ!?」


「腕でガードしたから、そこまでダメージはない………」


「良かった……イローナちゃんは、ちょっと見てて」


「どうするの?」


「ちょっとお灸を据えてあげるだけー



 エッタさんが駆け寄って声をかけると、思ったよりもイローナちゃんは元気そうで、ダメージはあるが戦闘不能というわけではなさそうで良かったと安堵する。

 前衛ばかりが披露して後衛にいる自分が、安全である事にエッタさんは耐えられなくなった。そこでイローナちゃんに見ててと言って自分が、代わりに前衛になると言い始めた。さすがに、イローナちゃんも止めたが意志は固いみたいだ。



「どうしたんだ? 後衛のエルフちゃんが、前に出てきて何をする気なんだい?」


「そんなの決まってるじゃない。私が前衛として、貴方を倒すだけなんだけど、それに何か問題でも?」


「いいや、それに問題はないけど………本気で前衛として、俺とやり合う気でいるのかい?」


「何回も言ってるでしょ。もしかして傭兵っていうのは、言葉が理解できないのかしら?」



 カルロからしたら前衛のエッタさんが、自分の前に立ってさも前衛として戦おうとしている事に疑問を持った。それもそうだろう、魔法を上手く使えるエルフは基本的に、前衛は絶対にやらないのが常識的な事である。

 しかしエッタさんは、その例外として前衛でカルロを倒してやると豪語しているのである。それに2度目の驚きがカルロは感じて、しつこく聞くように聞き返すと、エッタさんはカルロの事を軽く馬鹿にするように言い返した。



「オッケー、オッケー。じゃあ本気でやるけど、それでも後悔しないかい? いいや………これは野暮ってもんか」


「それが野暮って事なんじゃないの? 私がやるって言ってるんだから後悔なんてないわ………逆に貴方が、私に負かされて、名誉も何もかも失うわよ? それこそ後悔しない?」


「面白い。それくらい強気じゃないとダメだな」



 カルロは最終の確認を取ってから、エッタさんの本気の目を見て全力で倒してやると決めた。

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