010:奴隷市襲撃・前編
シュナちゃんとカエデちゃんとも合流する事ができ、遂に裏奴隷市にエルフがいるのを確認した。
エルフの人たちが地下室に投獄されていて、そこには常に見張りがいるので密かに侵入するのは難しい。
「面から潜入するのは難しそうだな。それなら俺が大々的に、暴れまくるから、俺が注目を集めている間に、3人がエルフの救出する作戦にしよう!!」
「だ 大丈夫ですか? ここは割と大きな組織っぽいから、人も多いと思うんですが………」
「俺なら大丈夫だって!! それよりもエッタさんの妹さんたちを助け出す事が最優先だからね。シュナちゃんも、カエデちゃんも手伝ってもらって良いかい?」
「全然、大丈夫ですわん!! 大船に乗ったつもりで、ミナトさんは暴れて下さいわん!!」
「私たちがバッチリ、エルフさんたちを助け出すにゃ………」
俺が大暴れすれば全ての見張りたちが、俺に集中するだろうと作戦を立てるが、エッタさんは少し心配そうな顔で俺の事を見ている。
心配する事なんて何も無いのだから、エッタさんは自分の家族を助ける事に集中すれば良いんだ。
それにシュナちゃんと、カエデちゃんも やる気になってくれてるし問題は無いよな。
「よし。それじゃあ作戦を実行しよう!!」
俺は目立つ為に暴れるつもりだが、さすがに顔を見られるのはマズイと考え買っておいた、ひょっとこの仮面の様なモノを付けて剣を握り覚悟を決める。
「よしっ!! 行ったるか!!」
俺は表のところに立つと扉を開けるのではなく、扉を斬って建物の入り口を崩壊させた。
その音に驚いた客たちは走って巻き込まれない様に逃げて、音を聞いた護衛の人間たちが俺を囲んだ。
「お お前は何者だっ!!」
「俺が何者かって? そんなの決まってるじゃ無いか………市民のヒーローだよっ!!」
「ひ ヒーローだと!? ふざけた野郎だ。さっさと捕まえて、ボスのところに子寝ていくぞ!!」
護衛の人間たちは騎士とか兵士とかの風貌ではなく、明らかにゴロツキか山賊の様な見た目をしている。
ここまで敵っぽい見た目ならば、俺としても躊躇なんてしなくて済むから良かった。
「さてと暴れるって言っても………ハードル高いな!!」
・炎魔法Level1:ファイヤーボール
・風魔法Level2:ストーム
――――炎龍の吐息――――
炎魔法の風魔法の融合技である炎龍の吐息を放って、護衛の人間を一掃してしまった。
「や ヤバい!? さすがに1発で倒すのは失敗だったか………もっと避けてくれると思ってたんだけどな」
「おいおい。護衛の人間は、少なくとも十数人は居たろ? ソイツらを一掃するなんてありえねぇ………お前は何者だ?」
時間を稼ぐとか言っておきながら手加減を間違えて、護衛の兵士たちを倒してしまった事に少し焦ってしまっている。
すると俺の名前に大きな太刀? の様なモノを持った黒服に身を包むドレッドヘアーの男が現れた。
誰が見たって、この男が護衛をしていた人間たちのトップに立つ男だろうなと理解できる。
* * *
俺が表で目立つ行動をしている時に、エッタさんたちは裏口で息を殺して見張りが居なくなるのを待っている。
すると俺が扉を壊した音に反応して、直ぐに自分たちの持ち場を離れて俺のところに応援として向かった。
「今のうちに入りましょう!!」
3人は見事に誰にも気付かれず建物に侵入した。
いきなり動いてもバレる可能性がある為に、物陰に隠れて地下室の入り口を探す。
やはり分かりづらい物と物の間に隠すようになっており、そこを見つけると周りを確認してから開けて地下に降りる。
「な 何者だ!! ここは立ち入り禁止だぞ!!」
「ここは僕たちに任せるわん!!」
「エッタさんは少し下がっててくださいにゃ」
・氷魔法Level3:氷の大地
地下に入るなり2人の見張りが、3人に向けて槍を構える。
それに対してエッタさんを後ろに隠して、カエデちゃんは瞬発的に飛び出すと綺麗な左ボディから右ストレートを、見張りの顎にクリーンヒットさせた。
それに動揺している、もう1人の見張りに対してシュナちゃんは、氷魔法で見張りの事を氷結させて簡単に倒してしまう。
「本当に2人とも頼もしいですね」
「そんな事ないですわん!!」
「当たり前の事にゃ………」
素直にエッタさんが褒めたからなのか、2人は胸を張って威張る様にニヤニヤしている。
そんなやりとりをしてから、地下室に降りると真ん中に通路があり通路を挟んで両脇に牢屋が作られている。
「カミラっ!! 居るなら返事をして!!」
地下牢にはエルフだけじゃなく、普通の人間の奴隷もおり臭いからしても劣悪な環境だとわかる。
エッタさんは妹の名前を大きな声で呼んで、居るならば返事をしてくれると無事で居てほしいと願いを込めて名前を叫ぶ。
「お姉……ちゃん?」
エッタさんの声が届いたのか。
妹さんの今にも消えそうか、か細い声で姉のエッタさんを呼ぶのである。
「カミラっ、そこに居るのね!! 本当に無事で良かっ………か カミラっ………」
エッタさんの目に映ったのは、村を元気に走り回っていた時のカミラでは無かった。
偽物かと見間違うくらいに痩せており、右手は鎖に繋がれているが左腕と右足が欠損していた。
エッタさんが妹さんと離れた期間は1週間くらいで、離れている間に右足と左腕を失ったのかと理解が追いつけないでいる。
「エッタさん!! 今は助け出すのが最優先だわん!!」
「そうだにゃ。生きてさえいれば、私たちの勝ちで終わるにゃ」
「そ そうですね。カミラ、他の子たちは?」
「あ…そこ」
完全に正気を失いかけているエッタさんに、シュナちゃんとカエデちゃんはカミラちゃんを奪取して避難しようと声をかける。
スッと我に帰ったエッタさんは、カミラちゃんに他のエルフは何処に居るのかと聞くと、震える手で向かいの牢屋を指差した。
「こっちの子たちは、なんとか無事な様です………あれ? あと6人くらいいなかったかしら?」
「その子たちなら奥に………」
カミラの向かいの牢屋に入れられていた子たちは、痩せては居るが比較的無事な様子で少し安心する。
しかし牢屋の中にいたのは5人で、残り後6人くらい居るはずだが見当たらない。
するとエルフの子が、地下室の1番奥にいると指を刺してエッタさんたちに教えてくれた。
「ぶ 無事なんですよね………」
「………」
エッタさんは嫌な予感がする。
牢を出てから言われた通りに、1番奥の牢に近づこうとするが近づけば近づく程、嫌な匂いが鼻にツンッと強くなっていく。
エッタさんが覚悟を決めて、牢屋の中を見てみると無造作に積まれた女の子たちの遺体があった。
「うぅぅ………うわぁあああああ!!!!!!」
遂にエッタさんの感情が限界を迎えてしまった。
怒り悲しみ哀れみ、どの感情もエッタさんの限界を遥かに超えているもので、発狂しない奴の方が頭がおかしいと言える。
シュナちゃんとカエデちゃんは、エッタさんの声を聞いて急いで駆け寄るが、匂いと遺体の山に吐き気が襲う。
「エッタさん………今は生きてる人だけでも逃すわん」
「そうですね。この子たちを逃して………私は奴隷商の男と、その部下を皆殺しにします!!」
どうにかエッタさんを立たせて生きている人たちだけでも逃がそうと、声をかけ続けるが2人はエッタさんの顔を見て震える。
エルフ族とは美しくしい種族として知られているが、エッタさんの顔は鬼の様に赤く怪物の様に歯を剥き出しにしていた。
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