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社畜から卒業したんだから異世界で自由を謳歌します  作者: 灰谷 An
第3章・残念なドラゴンニュートの女の子
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103:避けられない関係

 ナミカゼ少尉とダフネ少尉の隊の前に、何故か分からないが銀翼の夜明け団が向かってきていた。銀翼の夜明け団は交戦的な組織な為に、ナミカゼ少尉たちは急いで隊の陣形を作る。

 ドドドドッと大きな音を立てながら騎馬隊は、ナミカゼ少尉たちの方に向かってきている。見るからに、そこそこの人数が向かってきていると確認できた。



「おいおい。こんなところで戦闘になったら、マジで首都に着くのが遅れるぞ………ダフネさん。気を引き締めた方が良いぞ」


「んー。どうして、こんなところに銀翼の夜明け団が来てるんだぁ? もしかしてテロ行為でも?」


「それも考えられるけど………まぁ直接、話を聞けば分かるんじゃないか?」


「それじゃあ話をするのは、ナミカゼに任せるわぁ。戦闘になったら、私も手助けするからさ」



 ダフネ少尉は面倒な為に、ナミカゼ少尉に大半の事を任せて椅子に座り、戦闘になるまでは手を出さない方針らしい。ナミカゼ少尉としては戦闘は避けられないと思っている為、さっさと戦闘の準備をして欲しいと思っている。しかしそんな事を言ってもダフネ少尉は起き上がらない事は予想できるので、ナミカゼ少尉は深く溜息を吐いて説得を諦める。

 そんな事よりも向かってきている銀翼の夜明け団に対して、スーッと深く息を吸い込んでから叫ぶのである。



「警告するっ!! それ以上、我々に接近するのならば戦闘の意思ありと判断して、即刻攻撃を仕掛けるぞ!!」



 休憩しているダフネ少尉が耳を塞ぐくらいの声量で、銀翼の夜明け団に向けて警告を行った。するとドドドドッと音を立てながら向かってくる騎馬隊が、その声を聞いて速度を緩めた。

 もしかしたら戦闘は避けられるかもしれないとナミカゼ少尉が思っていると、騎馬から1人のフードで顔を隠した人間が降りてきて近寄ってくる。フードで顔を隠している為に、性別も感情も読み取れず、ナミカゼ少尉は不気味に思っている。



「どこの誰だ? どうして、ここにいる? 俺たちには時間がねぇんだ………端的に答えてもらうぞ」


「ここを黙って通せば、お前たちには手を出さねぇ………どうするんだ?」


「なんだと? 俺たちを誰だと思ってるんだ? 正義の軍隊が、怪しい奴を見逃せって言うのか?」



 ローブ人間の声質から男である事は分かったが、それ以外の事は分からず不気味さが漂っている。

 そんなローブ男はナミカゼ少尉たちに、ここを通すのならば戦わないであげると上から目線で言ってきた。そんな事がクロスロード連盟軍の軍人に通用するわけがない。ナミカゼ少尉は普通の軍人よりもプライドが高い人間である為に引く事はできない。



「そうか。お前たちは、そんなに我々と戦いたいみたいだな」


「それは、こっちのセリフだ。お前らは、俺たちに捕まって地上の地獄ヘルアースに行きたいみたいだな」


「あそこにブチ込まれるなら箔が付くってもんだ………テメェら、コイツらを皆殺しにしろ!!」


「クロスロード連盟軍、1人残らず確保しろ!!」



 ここにきて緊張感がマックスになり、互いの大将が相手に向かって開戦合図を出した。銀翼の夜明け団は、騎馬隊が進軍を進めてクロスロード連盟軍は隊列を組んで向かい撃つ。



「たくっ……こんなところで油売ってる場合じゃないってのに、面倒な事には面倒が重なるなぁ」


「ちょいちょい。そうも言ってられんべ? やるからには、憂さ晴らしをさせてもらわんと………私は行くよ?」


「えっ!? ダフネさんが、自分からノリノリで行くなんて。明日の天気は雪か………」


「どんだけ馬鹿にしてんだよ。しかも砂漠で雪は降らないから、まぁやるからにはストレスはっ………任務達成しないとな」


「お おい。今、ストレス発散って言おうとしてなかったか? まぁ前のめりにやってくれるなら理由は良いか………とにかく、相手は侮らないでよ」



 どうやらダフネ少尉は思ったよりもやる気があるみたい。そんなダフネ少尉をみて、ナミカゼ少尉はやる気がない事がアイデンティティなのにと思っている。しかしやる気がある分には、理由はなんであれ良いかと割り切った。



「さてと最初からフルスロットで行こうか!!」


・オリジナルスキル『猟豹変化(チーター)


「変身系のオリジナルスキルか………他のオリジナルスキルとは異なり、独特なオリジナルスキルだ」


「何をブツブツ言ってんだよ!!」


「ま 待てっ!!」



 ダフネ少尉はチーターに変身して、ローブ男に向かって突撃していく。そんな時に後方で様子を見ている、ナミカゼ少尉は異変に気がついた。

 それはローブ男がダフネ少尉に見えないところで、魔法の準備を行っていて、それに気がついたナミカゼ少尉は声をかける。しかし時すでに遅しだったのである。



「飛んで火に入る夏の虫って奴か………」


・火魔法Level1《ファイヤーボール》

・風魔法Level1《ウィンドボール》

――火炎放射(フレイムスロウアー)――


「ゔわぁああああ!!!!!」



 火炎放射器をぶっ放したような炎が、向かってきているダフネ少尉を真っ正面から襲うのである。走る勢いを遅める事ができずに、ダフネ少尉は炎を全身に浴びてしまった。

 その炎の中からダフネ少尉の叫び声が聞こえて、ナミカゼ少尉は助ける為に水魔法を使って炎を消す。炎を消したところにあったのは、丸焦げになった黒い物体だった。



「ダフネ少尉っ!? どうして、こんな事に………俺が、もっと早く気づいていれば!!」


「まずは1人目だな。こうなりたくなければ、降参しろ………そうすれば苦しむ事なく殺してやる」


「お前だけは、絶対に許さない!! 絶対に地獄に送ってやるからな!!」



 ナミカゼ少尉が取り乱しているところを見て、フードの下から見える口角が上に上がるのである。ダフネ少尉を瞬殺した事で、ナミカゼ少尉に対しても上から目線で調子に乗っている。そしてナミカゼ少尉は絶対に、ダフネ少尉の仇を取ってやると怒りを露わにしている。

 ジリジリッとナミカゼ少尉は、ローブ男との距離を縮めると、相手の間合いギリギリに入ったところで走り出す。そしてナミカゼ少尉はローブ男に殴りかかる。



「魔法を使わない近接系のタイプかっ!!」


「うるさい!! そう簡単に魔法は撃たせねぇよ!!」



 ナミカゼ少尉のジャンプをしながらの右拳を、ローブ男は顔の前に腕を持ってきてガードをする。しかし強さが半端ではなく、後ろに数メートル飛ばされる威力だ。そのまま休ませる事はさせずに、右左の連打を打ち込んでいくのである。

 ナミカゼ少尉のオリジナルスキルは、向けられた魔法を鏡のように跳ね返すというスキルな為に、自分も外に魔法を打つ事ができずに、どうしても肉体重視の戦闘スタイルになってしまう。



「肉弾戦なら上の下と言ったところか。その若さで、これだけやれれば死んでも誇れるだろ………心置きなく死んでくれ」


「本当に、そう思ってるのか? それならダフネさんよりも、遥かに残念なおつむだな」


「なんだと? お前は何を言って………」



 ナミカゼ少尉は自分の事を下に見てくるローブ男に対し、ダフネ少尉よりも馬鹿だと言った。どうして殺した人間よりも馬鹿なのかと、ローブ男が疑問を持つと地面からダフネ少尉が勢いよく現れたのである。

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