表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/149

8 レベル上げ

 ドドドドーン


 固い鱗で覆われたモンスターに鉄刀を刺す。ざざっとその場に崩れて消えていった。

『ソラ! 危ない!』

 軽く飛んで、羽を広げた鳥型のモンスターの攻撃をかわす。

 銃のように連続して、炎の球を吐いていた。土への窪み具合を見る限りだと、あまり威力はないようだ。


 シュッ


 剣での攻撃しようとすると、羽を畳んで逃げられてしまう。

 さすがに、剣だと飛んでる鳥型モンスターは倒しにくいな。


 素早くモニターを操作して、武器を鉄弓矢に切り替えた。片目をつぶって、射程距離を確認する。


 パーンッ


 矢を放った。弓矢が鳥型モンスターの心臓に命中すると、一瞬で消えていった。

 鉄弓矢は威力に問題ないが、少し重いな。


『ふぅ・・・びっくりした』

「あのくらいの攻撃大丈夫だよ。獲得経験値は・・・こうやって見るのか・・・・」


 討伐数:3体

 経験値:125ルビー

 獲得ゴールド:30G

 獲得アイテム:なし


『序盤、レベルは1000ルビー単位で区切られているみたいね。結構長い道のりになりそう。一気にレベルアップできる、裏技的なものがあればいいんだけど』

 リネルが自分のモニターを確認しながら言う。


「レベルを1上げるのに、8回今のを繰り返さなきゃいけないのか。一気に10体くらいと遭遇できればいいんだけど・・・なんか、面倒だな・・・」

 俺がゲームで一番嫌いなのはレベル上げだ。

 レベルが上がらないと、覚える魔法や技も違うから上げなきゃ話が進まないのはわかっているけど、効率が悪いんだよな。

『ソラはレベルが低くても、技術でどうにでもなっちゃうもんね』

「まぁな。慣れだけど」

 指を動かして、武器を仕舞った。



「ソラー」

 ラグーが空から降りてきて、駆け寄ってくる。

「すごいな。空から戦いを見ていたけど瞬殺か。苦戦するようだったら手伝おうと思ってたんだけど・・・」

「このゲームは操作性も優れてるから、プレイヤーにとってはやりやすいんだよ。それよりも、昨日大丈夫だったか?」

「あぁ・・・俺はね。かすり傷程度で済んだよ。1人重傷を負ったけど、エルフの治癒魔法が効いたからすぐに治った。結構叩きのめしたから、あと1か月は来なければいいんだけど」

「・・・そうか」

 ラグーがただ・・・と続けた。


「ソラに言っておかなきゃいけないことが・・・。プレイヤーの1人が犠牲になったよ。まだ経験値積んでなかったから、攻撃にうまく対応できなかったんだ」

「そうなんだ・・・」

『えっ、プレイヤーも参加したの?』

 リネルがぐんと近づいてくる。


「うん。一気にレベル上げができるからって。彼の勢いにリーダーが押されてOK出したみたいなんだけど、もう初期プレイヤーの参加は禁止にするって。魔族の動きは、俺たちでも読めないことがあるからさ」

「そうだよな。初期プレイヤーはまだ体の感覚が馴染んでない場合が多いし・・・」


「でも、プレイヤーだからしばらくすれば戻ってこれるんだろ?」

「ま・・・まぁね」

「だよな。安心したよ。でも、ソラも気を抜かないようにね」

 ラグーがほっとしたような表情を浮かべる。


 適当に頷きながら、戦場でのことを思い出していた。

 彼が戻ってくることは、もう無い。本人だって本当に死ぬつもりはなく、ある程度の勝算があって参加したんだろう。危険があっても、ゲームだとどうしても麻痺してしまう。

 俺も、この世界で死んだら・・・。


『ねぇ、ラグー、話変わって悪いんだけど・・・・。『アラヘルム』を襲う魔族ってどっちの方角から来るの?』

「アラヘルムの木の西のほうだよ。西側をずっと行ったところに、魔族が住む場所があるんだ」

「西側か・・・」

 ルーナが強い敵が多いって言ってた方角だけど・・・。想像通りだな。


「そういや、ソラは何の属性究めるんだ? まだ決まってないかもしれないけど、氷属性なら北、雷属性なら、北東、炎属性なら南・・・」

「えっと、俺はまだ決まってないから、敵を倒していって決めるよ」

『・・・・・』

「そうだよな。ま、今来たばっかりで属性固定するのは難しいかもしれないけど、北と南がお勧めだよ。何より敵が弱いし、氷と炎は基本だしね。プレイヤーもみんなどちらかで情報収集してるみたいだよ」

「そうか。ありがとう」

 ルーナが言っていた通りだ。


「俺もレベル上げ手伝おうか? 俺といれば、強めのモンスターも倒せるから、経験値上げやすいと思うけど。俺、こう見えて結構強いほうなんだ」

 尖った歯を見せる。


「いや、いいよ。ラグーだって昨日の戦闘で疲れてるだろ?」

「まぁ・・・無傷だって言ったら嘘になるけど・・・・雑魚キャラくらいなら余裕だよ」

『ソラは強いから一人で大丈夫。それに、私っていう優秀な妖精もついてるんだから』

 リネルが腕を組んで自信ありげに言う。   


「気持ちはすごく嬉しいよ。でも、俺もこっち来たばかりだし、色々自分自身で試してみたいんだ」

「それもそうか。もし、何かあったら呼んでくれよ」

「ありがとう」

 ラグーが地面を蹴って、『アラヘルム』の敷地内に飛んでいった。



『ラグーって本当に優しいのね。普通のゲームなら、序盤からプレイヤーを気にかけてくれる人たちなんていないのに』

「・・・・そうだな」

 ラグーの場合、プレイヤーが目の前で死んだことに、どこか罪悪感があるのかもしれないな。

 死んだのは、どのプレイヤーだったんだろう?


『ソラ、ラグーには黙ってたけど、西の方角に行くんでしょ?』

「あぁ、とりあえず、もう少しここ周辺のモンスターを倒して、ゴールド集めてから出発するか。レベル上げはともかくせっかくゲーム内に来たんだから、美味しいものを食べたいしな」

『さんせーい』

 リネルがにこにこしながら手を挙げていた。


「次の戦闘から試しに配信してみよう。リスタート繋いだほうが、有力な情報とか収集できるかもしれないし」

『RAID学園の地位向上にもつながるしね』

「リネルはやっぱりRAID学園の妖精だよな」

「もちろん。RAID学園から派遣されてるんだもん」


 ん? そういや、リネルって・・・。



「ねぇ」

 澄んだ声がした。

 はっとして振り返る。気配が全然なかった。

「やっほー」

「な!?」

 ルーナが人間が着るようなラフな服装で立っていた。

 ふさっと揺れる白銀のショートには、赤いリボンがついている。


「驚かせてみた」

「つか、その恰好どうしたの?」

『ソラ、この子誰?』

「リネル、見えるの!?」

『見えるにきまってるじゃない。私、そんなに目悪くないんだけどー』

 小さく頬を膨らませていた。


「えっと、そこの妖精さんにははじめましてだね。私、ルーナっていうの」

『ルーナ・・・?』

「最近入ったばかりの魔導士ギルド『リーネスの馬車』のルーナだよ」

「は?」

 ルーナがにやっとする。

 頭が混乱してて、何言ってるのかわからなかった。

 魔導士ギルドって・・・んなこと、一言も聞いてないし、そもそもルーナは死の神しかやってないはずで・・・。


「一緒に行動してもいい? 私はプレイヤーじゃないんだけど、エンペラーを目指すのに、一緒に行動する人決まってなくて・・・」

「え・・・ルーナが?」

『ソラ、この子、ものすごく可愛いけど・・・なんか、どこかで会ったことあるような気がする』

 リネルがじとーっとこちらを見てくる。


『まさか、RAID学園の有名な配信者だったりしない? すごーく似てる子がいるんだけど』

「まさか、私はこの世界の者だもん。よく誰かに似てるって言われちゃうけどね」

『ソラー、いつの間にこんな美少女と知り合ったの?』

「知り合ったっていうか・・・」

「昨日の夜、ラムの酒場で話したんだよね?」

「ら、ラムの酒場・・・・?」


 どこだよ、それ。


『昨日の夜!?』

「いや、えっと、昨日は情報いろいろくれてありがとう。よ、よろしく・・・・」

『ねぇ、ソラ・・・昨日の夜、酒場行ってたの? 全然聞いてないんだけど・・・・いくらプレイヤーとはいえ、未成年でしょ? もうっ・・・だから私もついていくって言った・・・』

「・・・・・・・・」

 リネルの視線が痛かった。ルーナがにこっとして、髪についたリボンを結び直している。


 何の目的なんだ? 

 昨日は何も言ってなかったのに。

 ルーナが魔導士になって、俺と行動しようとするとか・・・。 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ