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3 最重要機密事項

 武器:鉄刀

 防具1:グライダースーツ

 防具2:グライダーブーツ

 アクセサリー:無し

 道具:小ポーション×2


 モニターで初期の配布武器を確認する。

 ルーナから受けた死神の道具は記載されていないみたいだ。ルーナの真似をすれば道具は出せるんだろうが、アンドロイドが見ているから何もしないほうがよさそうだな。


『装備品の確認はできましたか?』

「あぁ、大丈夫だよ」

『では、実戦してみましょう』

 男性アンドロイドがボタンを押すと、大きな泥の塊のような土人形が現れた。

 鉄刀を持ち直す。


 ゴウンゴウン・・・ゴウンゴウン


 土人形が棒を振り回しながら走ってくる。

 初回モンスターにしては動きが機敏だ。

 空気から予想するに、一撃は軽く、攻撃を連打してくるタイプだな。


『操作確認用の敵なので、途中で止めることも可能です。また、ここで受けるダメージは無効となります』

「ふうん」

『この敵は、『アラヘルム』周辺の敵の強さと同じになっております。まずは、敵の攻撃を避けつつ、弱点を確認してください。攻撃態勢に入り、集中すると、弱点の部分が赤く光って見えるはずです。弱点が見つかりましたら・・・・』


 ザッ


 土人形がこちらに向かってきたと同時に、鉄刀を突き刺す。

 さらさらと地面に崩れていった。


『あ・・・・・』

「配布武器にしては、使いやすいな。防具も付与効果はほぼ無いに等しいけど、攻撃をかわしやすそうだ」

『・・・・・・・・』

「防具3以降は身に着けるべきか迷うな。敵にもよるけど、他のゲームでは、防具を増やして攻撃速度が落ちた例もあるし、配布武器同士のバランスがいいだけかもしれないから、今後の装備は様子見か」

 モニターを見て、土人形の討伐時の最大攻撃力を確認する。

「プレイヤーって最初はみんな同じ武器を配布されるの?」

『は、はい。そうですね。ご要望によっては、大剣などに変換も可能ですが・・・』

「俺は、このままでいいや」

 初回はプレイしやすいように動きやすいものが配布されるからな。


 鉄刀を仕舞う。他のゲームと比べて動きやすい気がした。


「弱点は常に表示されるゲームじゃないよね?」

『はい、ある程度敵が強くなれば、弱点は自分で探していただくことになります。弱点がない敵もいますので、臨機応変な対応をお願いします』

「わかった」

 このゲームは随分親切だな。

 動作確認なく、フィールドにぶち込まれるゲームもあるのに。


『・・・・・・』

「どうした?」

『さすがです、天路蒼空様。驚きすぎて、自分の情報処理能力を疑ってしまいました。説明から攻撃まで、0.1秒、どこにも記録はありませんね。今まで一番早い方で3分20秒でしたから』

「そりゃどうも」

 アンドロイドが乾いた拍手をしていた。


『これは最速の攻略が期待できそうですね。私も楽しみにしております』

「俺の他にもプレイヤーは入ってるの?」

『もちろんです。どうゆう方が入っているのか、詳細はお伝え出来ません。機密事項となっておりますので』

「・・・そうか」

 ゲームの中に入れば、プレイヤーの所属はわからない。

 ヒナの言う通り、近未来指定都市TOKYOのプレイヤーもいる可能性が濃厚だな。


『他に何かご質問はありますか?』

「いや、無いよ」

『そうですか。とても大切な注意点が1つあります』

「何?」

 配信用のゴーグルの位置を確認する。特に変わったところはないな。

 いきなり配信も可能みたいだし、あとで接続確認してみるか。


『この『イーグルブレスの指輪』というゲームはリアリティを求めています。人が感知する五感は現実世界と連携しており、セーブ場所以外ではゲームを切ることはできません。簡単に言うと、攻撃を受けたら、痛みが発生するという意味ですね』

「まぁ、他のゲームと同じだよ。そのつもりで、プレイしにきてるし」

 アンドロイドがモニターを消してこちらを見る。


『大きく違うのは、こちらのゲームでの死は、現実世界での死を意味します』

「え?」

 背筋が冷たくなった。


「・・・死って・・・ゲームオーバーで強制的に戻されるわけじゃなくて?」

『いえ、現実世界の、プレイヤー自身の心臓が止まります』

「は・・・・」

 額に汗がにじむ。


『その点を想定せずに、『イーグルブレスの指輪』に入るプレイヤーは非常に多いようです。これは、たった1つの最重要機密事項です。SNSや配信などでこちらに転移してきたプレーヤー以外に伝えることは不可能となっておりますのでご注意を』

「・・・・・セーブして現実世界に戻ることもできるんだろう?」

『はい。セーブ場所では現実世界に戻ります。こちらの世界に来たときは、セーブ場所からのプレイとなります』

「じゃあ、その時に伝えることは・・・」

『できません。このゲームに入った時点で、脳に特殊な電磁波を流しております。外に出た際に、ゲーム内の死について話そうとしますと、即死するため伝えることはできません』

 淡々と話していた。いつの間に、脳にそんなものを・・・。


「・・・そんなゲーム、聞いたことないが?」

『『イーグルブレスの指輪』はリアリティを追求したゲームとなっております。ご了承ください』

「・・・・・・・」

 心臓がバクバク鳴っていた。


「・・・今までに亡くなったプレイヤーはいるのか?」

『もちろんでございます。口外はできませんけどね』

 機械的に言うと、くるっと後ろを向いた。


「・・・・・・・あ・・待っ・・・」

『では、私はここで。時間ですので』

 言葉を探していると、アンドロイドが無視してお辞儀をした。




 サーッ


 周囲の風景が切り替わって、アンドロイドがいなくなっていった。


「・・・・・・・」

 プレイヤーが現実世界でも死ぬゲームはやったことがない。

 VRゲームに慣れたプレイヤーでなければ、即死もあり得るということか。

 ヒナが来なくてよかったな。俺も、今回ばかりは気は抜けないな。



 顔を上げる。

 ここが地図から失われた都市『アラヘルム』・・・。

 木造の建物が点在していて、中央に倒れた柱があった。

 住人はまばらで、人間、ドラゴン族、魔族、エルフ族がいるようだ。

 栄えているとは言えないが、街自体はきちんと整備されていた。

 様々な能力を使える者がいるみたいだ。時折、ちらほら飛び交う魔法が見える。

 

 少し離れたところに、巨大な木があった。透き通るような青空に、赤い鳥が羽ばたいていく。

 どこか『ユグドラシルの扉』に似ている世界観だ。自然に溢れていて、空気も気持ちがいい。


 やっぱり、VRゲームの世界は清々しいな。


 まずは、この辺を散策して情報を・・・・。

『ソラ―あわわわわ・・・』

「リネル!?」

 

 バサーッ


 小さい羽根をパタパタさせたリネルが、近くの草花に突っ込んでいった。

 慌てて、草をかき分ける。

『ソラ・・・・た、助けて・・・・。動けない』

 服が茎に引っかかってもがいていた。

「だ、大丈夫か?」

『んー』

 茎と草を避けて、リネルを救出する。


『あはは。勢いあまって、突っ込んじゃった』

「リネル・・・どうしてここに・・・?」

 リネルが頭に花びらを付けたまま、ふわっと浮いていた。


『ごほん。引き続き、RAID学園からソラのお世話を頼まれたの』

「世話ねぇ・・・・」

『い、今のは、ちょっと新しいゲームに来たばかりで失敗しちゃったの。私がいたほうが配信準備もしやすいし・・・それに!ちゃんとセーブポイントとかわかるから、ソラは安心してプレイに集中して』

「はは、冗談だよ。頼りにしてる」

 リネルにはこのゲームの死については、何も言わないほうがいいな。

 明るく振舞っていても、裏でため込んでしまうタイプだ。



「ねぇねぇ。ここ、僕たちの敷地なんだけど・・・」

「うわっ・・・ごめん!」

 ドラゴンのような目を持つ同い年くらいの少年が話しかけてきた。

 リネルがぱっと後ろに隠れる。

 転びそうになりながら、草花から離れた。


「えっと・・・君は、見かけない顔だけど、最近ここに来た人?」

「あぁ、プレイヤーのソラだよ。よろしく」

「なるほど、プレイヤーか。僕はラグー。ドラゴン族だ」

 ラグーが周囲を見渡してから、近づいてくる。眉をぴくっと動かした。


「?」

「・・・・君は何者?」

「何者って・・・職種なら剣士だけど・・・」

 鼻を少し突き出して、匂いを嗅いでからこちらを見る。


「違う。ソラからは、神の匂いがする」

「え?」

「死に近い神の・・・・・」

 ぎくっとして、思わず一歩下がった。

 鋭い瞳が、刺すように俺の動きを捉えていた。

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