表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/149

2 死神になる

「死神って、そんな・・・・」

 初回プレイ時からそんな選択肢出てくるゲームなんてあるか?

 俺がやってきたゲームのスコアまで、認識してるキャラがいるなんて・・・。


 でも、近未来指定都市TOKYOにある最新のVRゲームならデータを引き継いでることくらいあり得るのか。俺もすべてのゲームを網羅しているわけじゃないからな。


「なんか疑ってる?」

「そりゃ・・・あ、いや、プレイヤーとしての条件なら、その職業選択するしかないけどさ・・・」

 ルーナが瞼を重くしてこちらを見ていた。


「はぁ・・・プレイヤーに説明って難しいのね」

 息を付いて、空中に浮かぶモニターを大きくした。

「じゃあ、まずこの『イーグルブレスの指輪』というゲームについて説明するわ」

 モニターにはゲーム内のフィールドが表示されていた。


 ・通常プレイヤーは最初、地図から失われた都市『アラヘルム』から始まる。


 ・現在『アラヘルム』には多くの種族が共存している。


 ・キャラ、もしくはプレイヤーたちは各フィールドにある謎を解き明かし、

 氷帝、炎帝、雷帝など自身の属性に見合ったエンペラーの称号を得ることを目指す。


 ・各フィールドのエンペラーとなり、

 過去の過ちにより封印されている『アラヘルム』を復活させる。



「ざっくり言うとこんな感じのゲームよ」

「お・・・おう・・・」

 ルーナがサクサクとモニターを切り替えて説明を受けていた。

 世界観は作りこまれていてわかりやすかったが、特に他のゲームと比べておかしいことはない。

 普通のゲームだと思った。


「ん? タイトルにある『イーグルブレスの指輪』って何のことなんだ?」

「そうゆうのはゲーム終盤でわかるものでしょ」

「そうだけど・・・」

 この話し方、どこかで会ったことある気がする。

 何かのゲームのキャラと被ってないか?


「君がどこまでプレイするかはわからないけど、この世界はもっと複雑なの」

「・・・・・・・」

「他のゲームとは全然違うから」

 天秤の皿を動かしたりしながら頬杖をついていた。


「で・・・どうして、俺を死神に?」

「蒼空がプレイヤーとして参加したら、この世界の均衡が崩れてしまう。神としていれば問題ないわ」

 天秤の皿を弾く。


「いや、んなこと・・・」

「いずれわかるときが来る。君はすごい力を持ってる」

 真剣な表情で言う。

「?」

「この世界はとても脆いの。他のゲームはどうだったのかわからないけど、『イーグルブレス』の指輪の行方は、神でさえも予測できない。見て・・・」

「!?」

 モニターを操作して、崩壊していく近未来指定都市TOKYOを映していた。


「何でこんな・・・・」

「ゲームの世界次第では、こうゆうことだって、可能性としてはゼロじゃない。ちゃんと、世界の均衡が保てなければね」

「だって、ゲームだろ? 現実世界に介入できるなんて不可能だ」

「近未来指定都市TOKYOは色んなVRゲームの幻獣を召喚してるんでしょ?」

「それは・・・・・」

「『イーグルブレスの指輪』の世界が現実世界に介入する可能性だってある。それくらい、このゲームの世界は未知のものなの。死の神をしている、私でさえわからないんだから・・・」

「・・・・・・・・」

 唾を飲み込んだ。

 崩れていくRAID学園や消えていくアバターが脳裏に焼き付いていた。

「・・・・・・・・・」 

 しばらく言葉出てこなかった。


「来て早々脅して悪いんだけどね」

 ルーナがぱっとモニターを消した。


「神々の中でも、死を司る神は、一人いなくなっただけでも大変で」

「・・・・・・・・」

「蒼空は適性ありそうだし、こんな感じで天秤で魂の重さを量って、命を奪っていく簡単な仕事なの。あ、報酬は・・・美味しい物食べたりできるし、どこでもぱっと飛んでいけるから、海見たりしても楽しいよ。この世界は美しい場所がたくさんあるから・・・プレイヤーでいるよりやりがいはあると思う」

 急に、身振り手振りで明るく話していた。

 死神のやりがいって・・・。


「どうかな?」

「わかったよ・・・・」

「本当? じゃあ、死神になってくれるの?」

「ただし、条件がある」

 腕を組んだ。


「まず、俺はRAID学園の生徒としてこのゲームをプレイしなきゃいけない。プレイヤーとしても参加させてもらう」

「えっ・・・」

「だから、5:5でプレイヤーと死神を両立するのが条件だ」

「ご、ご、5:5!?」

 ルーナが天秤を落としそうになっていた。


「無理無理、だって、死神って神よ。プレイヤーとは全然違うの!」

「でも、プレイヤーとしていなきゃ、RAID学園に目を付けられるんだよ。俺はそこそこ名の知れてる配信者だから、『イーグルブレスの指輪』だって配信しなきゃいけない」

「うっ・・・・」

 眉間にしわを寄せて、口をもごもごさせている。 

「じゃ、じゃあ、7:3で死神とプレイヤーで手を打つ」

「え・・・・・・・・」

「それ以上は、妥協できないから!」

 少しムキになりながら言っていた。

 そもそも、死神の仕事がどんなものなのか知らないから、ルーナが出してきた数値が妥当なのかもわからないんだけど。


「いい?」

「・・・あぁ、わかったよ」

「よかった」

 ルーナがほっとしたように、少し離れていく。

 両手を広げると、床にあった魔法陣が七色の光を帯びていった。


「そこにいてね」

「ん?」

 ルーナがしゃがんで床に手をあてる。


 ― 私、死の神ルーナは、今より天路蒼空を死の神として任命する。

 死の神としてふさわしい道具を、与えよ ― 


 カッ


「これは・・・・」

 目の前に分厚い本と、銀色の剣が現れた。

 どちらも同じ、戦士のルーン文字が刻まれている。

「やっぱり、テイワズのルーン文字が刻まれるのね。私はパース、秘密のルーンが刻まれてるの。神によって違うのよ」

「へぇ・・・戦士か」

「使い方は、フィールドに入ってから説明するね。普段は仕舞っておいて」

「うん」

 ルーナと同じように、指を動かすと本と剣が消えた。


「じゃあ、またあとで」

「えっ・・・ここから、どうすれ・・」

 会話の途中で、ルーナが飛び上がって見えなくなっていた。

 ここはゲームの前の部屋って言ってたけど、どうやったら設定画面に移るんだろう。


 もう1回、入り直したほうがいいのか・・・。

「!!!」

 耳に触れようとすると、いきなり目の前の景色が変わっていった。

 体がぐらついて、バランスを取る。




 ザザッ・・・


『ゲームをロードしています。少々お待ちください』

 機械のような声が聞こえた。

 視界が開けると、荒廃した神殿の柱の前に立っていた。

 男性アンドロイドが初期設定画面を空中に映している。


『はじめまして。『イーグルブレスの指輪』の世界へようこそ』

「あ、あぁ・・・・」

『まずは、本人確認させていただきます。天路蒼空でよろしいですね?』

「はい」

『顔を認証しました。住所、電話番号、メールアドレスは・・・』

 淡々と話しながらアンドロイドが情報を入力していく。

 個人情報の取り扱い、SNS連携についても説明があった。


 自分の手を見つめる。

 ここが初期画面ということは、やっぱり、ルーナがいたのは・・・。

『プレイヤーとして参加していただく前に、モニター画面の説明をさせていただきます。不明点がありましたら、説明を止めてください。1ページ目に表示されているのが・・・』

 アンドロイドの説明を聞きながら、ルーナとの会話を思い出していた。

 話していることは、全て一致している。


『心拍数が上がっています。何か不明点がございましたか?』

「いや、少し緊張しているだけだよ」

『そうでしたか。私は、この世界と現実世界を結ぶアンドロイドです。体調不良など、心配事がありましたら何なりとお申し付けください。プレイヤー専用の回復ルームにご案内することも可能です』

「あぁ、わかった・・・」

 アンドロイドが俺の表情を確認してから、説明を続けていた。


 ・・・ルーナの言っていることが間違っていないということは・・・。

 俺は本当に、この世界の死神になったのか。 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ