第92話 集結
「リアルって……本気?」
アモレの問いに、アル本気の表情で頷いた。
「私は本気よ。集まるのよみんなで」
「で、でもみんな何処に住んでるのかも分からないし、それに集まる事自体が──」
「私は東京に住んでいるわ。それにパスポートもちゃんと持ってるわ」
アルの強気な言い方に驚く一同。
だが、シーカーは違った。シーカーは驚く様子を見せず、静かに手を挙げてみんなに言った。
「俺もアルと同じく東京だ」
「お、俺もシーカーと同じく東京だ」
「俺もどっちかと言うと集合賛成だ」
自分の住む場所を言うシーカーとSyoにオーガスターが反応し、二人の前に立ち、しかめっ面で顔を目と鼻の先まで近づけて来た。
「な、何か……?」
「お前ら日本に住んでたのか!?しかも東京!?」
「あ、あぁ」
「マジかよ!東京!?本当に東京!?」
「う、うん」
「大都会"支部哉"に行った事あるのかぁ!!」
近づけて来た時の顔とは打って変わって少年の様に目を輝かせて聞いてくる様に驚きを隠せないシーカーであり、オーガスターは鼻息を荒くして返答を待っている。
「あぁ……支部哉なら学校帰りとかに友達とよく行くけど……」
「映画もゲームセンターもいっぱいあるって聞いたけど?それにタピオカって今もブームなの?」
「街にはゲームセンターも映画館もいっぱいあるし、タピオカのブームは終わってよ。てか、お前どうしたんだよ」
「俺もアモレも日本住みだが、町は田舎でよ!!映画館まで何時間もかかるんだよ!その気持ち分かるかぁ!?」
「そりゃあ大変だな」
オーガスターに肩を掴まれ、本気の顔で言い寄られるシーカー。アモレもバカバカしくなり、頭を抱えながら尋ねた。
「まさかあんた東京に行く気でいるの?」
「ったりめぇよ!もうすぐで夏休みだし、東京に集合する事に賛成する!!」
「お金はどうするの?」
「そんなもん今年貰ったお年玉や、前借りで何とかなるさ!」
「……それに、私達含めて5人は日本でも、他の3人は?」
そう言ってマッキーらを見つめる日本住み5人。
メリクリも5人が日本住みと聞き、残った二人に尋ねた。
「シーカーらが日本に住んでいるのは分かった。他の二人は?」
新新とマッキーは答えた。
「私は中国」
「僕はアメリカ」
「んで僕はイギリス。流石はalter frontier。みんなバラバラな国だね」
流石は世界的ゲーム。3人共別の国であり、ゲームしている時は全然分からなかった。
全員バラバラの国にアルもびっくりであった。
「や、やっぱり世界的なゲームだけにみんなバラバラね……」
「確かに東京に集まる案はいいけど、念の為に聞くけどパスポートは持ってる?」
「私は一応持ってるけど……」
「他の日本組のみんなは?」
メリクリがさらりと聞くとアルは持っているが、シーカー・Syo・オーガスター・アモレの四人は首を横に振った。
「日本組はパスポートはなしか……」
「パスポートを発行しようにも今からじゃ、時間かかるしな」
「僕は持っているけど、新新ちゃんとマッキー君は持ってる?」
メリクリが二人に聞くと二人は頷いた。
「私は持ってるわ。何度か海外には行った事あるし」
「僕も持ってるよ」
その言葉を聞き、オーガスターは嫉妬した目でぼやいた。
「3人共いいよなぁ、海外旅行ってよぉ。俺なんて映画館行くだけでも凄い旅行なのによ……」
「みんな行く気なのね。しょうがない、私もついて行くわよ。あんた一人じゃ、迷って帰ってこられなくなるからね」
全員が行く気なり、アモレも渋々行く事にした。
全員の気持ちが一致し始め、その事を知ったメリクリはみんなに言い放った。
「なら、集合するのは東京だ。出来るだけ早く集合しよう」
「私は構わないし、すぐに行けるけど其方さんは?」
新新は快く了解し、マッキーを見つめた。
東京──その言葉にマッキーはノートパソコンを閉じて、先程のオーガスターの様に目を光らせてメリクリへと顔を近づけた。
「東京、僕も行きたかったんだよ!やっほう!!すぐにログアウトして準備だ!!」
すぐにログアウトしようとするマッキーをシーカーとSyoは真っ先に為に入った。
「ちょ、ちょって待てって!行く気があるのは良いけど、色々まで話がよ!」
「あ?」
「このままログアウトされたら、集合場所とか日にちとか分からんままだろうが!」
「それもそうだな……ごめんちゃい」
マッキーは納得してログアウトを止めた。
その後、全員で集合場所や、日にちなどを話し合って決めた。そして強制メンテナンス10分前に何とか決まり、決めた場所などをシーカーが全員伝えた。
「集合日は今から2日後の7月28日だ。俺らやアル、オーガスターら夏休みに入って大丈夫だが、他の3人は本当に大丈夫だな」
そう言うと3人は頷き、シーカーは説明を続けた。
「集合場所は新東京府の支部哉中央噴水広場。時間は午後0時から午後1時までの集合。宿は俺の家かSyoの家のどちらかだ。それは後で二人で話し合う。因みに集合する時に、誰か分からないだろうから、俺やSyoらで何か分かりやすい目印を貼っておく。
「胸に炎の刻印マークを貼る。炎の絵が書かれているシールか何かを胸に貼ってさ。それで噴水の前に立っているよ」
「という訳だ。他には?」
シーカーの問いにアルが前に出て、一人手を前に突き出した。
「今回の集合する意味は、骸帝を倒す為でもあるけど、ここにいるみんなの事をもっと知りたい。どんな人で、どんな性格で、どんな考えを持っているのかを。ゲームの中じゃなくて、目の前に立って聞きたい。お互いの目を見なきゃ分からない事をいっぱいある。だから、今会って深めたいの。みんなの絆を!」
その言葉は全員に突き刺さった。言葉通り、今の自分達に骸帝を倒せるかなんて全くもって無理だろう。お互いの素顔なんて知らず、本当の自分達を隠している。ゲームだからって何でも言える事でもない。実物を見て、何か新しい事も分かる。それに、新たなる交流にもなり、こことは違う仲が生まれる可能性もある。
その気持ちが今、全員の心に一致して、全員が無言でアルの前に立ち、全員でアルの手の上に手を重ねた。
「みんな……」
全員の顔は少しながら希望が湧いている透き通った眼になっていた。
メリクリは見えていた。未来の映像が少しながら変わっていた。全員が骸帝の前に倒れていた映像から全員が傷つきながらも立ち上がっている映像であった。小さな希望だが、未来が変わり始めていたのだ。
そしてシーカーはみんなの顔を見て言い放った。
「ふっ、みんな気持ちは一緒だな」
「えぇ、今ここからalter frontierと現実世界の命運を分かる逆転劇の始まりよ!!集合するわよ、東京に!!」
「「おう!!」」
アルの言葉に全員息のあったように一斉に手を挙げてハイタッチを交わして、全員はログアウトした。
ここから始まる十日間は骸帝を倒す為の十日間。全員の絆が一つになった時、未来は果たして変わるのか。それは彼らの8人の意思が決める。
シーカー達の戦いが、今始まる──




