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第83話 一人の戦い(2)

 

「僕には弟がいる……弟ももうすぐでゲームを買う。その為にもこのゲーム中だけでも、情けない姿は見せたくない!!だから、シーカーから強くなるコツを教えてもらいたいんだ!!」

「……」


 バーンズの言葉はまさに隼と同じ状況なのが分かった。強くなりたいと言う気持ちが悪い方向へと行ってしまった。その姿が隼と重なってしまう。その事を思い出してしまい、何も答える事ができなくなった。


「強い力が欲しいんだ。少しでも……だから──」

「強さを求め過ぎると自分という存在が分からなくなる……追求し過ぎて、周りの目を気付く事も出来なくる。注意力散漫になるぞ」

「僕は大丈夫だ、そんな事は絶対にないさ」

「本当か?俺は目の前で強さを求め過ぎて、自分を見失った奴を見た……


 すると、バーンズは冷静な表情になりシーカーに言い放った。


「君の持つ炎の刻印って、存在しないスキルなんでしょ」


 炎の刻印へと質問──シーカーは冷静に答えた。


「あぁ、そうだ」

「違法なら普通は運営から何かしらの罰を受けるはず。なのに君は何も罰せられていない。何かおかしいって思わないのかい?」

「……確かに最初の頃はおかしいと思った。でも、何も音沙汰がない所を見ると、この炎の刻印は正式なスキルだと言うことだな」

「そんな特別な能力を持って、君は強くなった。それは君自身の力?それとも君だけにしかないスキルの力?どっちなんだい?」


 その質問にシーカーは躊躇いもなく、真の通った声で言った。


「刻印の力だ」

「えっ」

「刻印が力がなかったら、お前とも出会うこともなかった。はっきり言えばこの力がなければ、今の俺もいない。その反面、嫌な事もあった。でも、この力が当たり前になった。その力があるから俺の闘志は今まで以上に燃え上がって行った」

「君だって力を求め過ぎているじゃないか!」

「そうだな……求めずきている。もちろん今もだ。前が見えなくなる時もあるが、それを止めるストッパーがいるのから、無理はしない。その事を忘れかけていた……」


 シーカーは自分の拳を心臓部分に当てた。手の甲から炎の絵がゆっくりと浮かび上がり、炎の刻印を発動した。

 バーンズの目は炎の刻印に釘付けとなった。


「それが炎の刻印……」

「あぁ、俺だけにしかない能力だ。この力には限界はないだろう。その限界を引き出すのは持っている俺次第だからだ」

「君自身……?」

「例え、俺以外の奴が持ってたとしても、その力を出し切れるのはそいつ次第だ。求める力次第で、刻印の力は大きく反映されるんだ」

「君は上手く使っているとでも言うのか」

「さぁな。刻印を作った誰かのみが知ってるんだろうさ。俺が使いこなせているのか」


 炎の刻印があり、水の刻印、風の刻印と3つの刻印がある。メリクリは最大限に刻印を使いこなしているが、隼はまだ手に入れたばっかりだが、十分に使いこなしている。使い方次第でここまで強くなる。


「強さは誰よりも理解出来るのは自分だけだ。お前は何度戦っても俺には勝てない」

「なら、僕がその刻印を打ち破ってやる。君が本当に使いこなせているのか勝負だ!!」


 その目の奥から燃え上がる闘志はあの時の輝いていた隼の目のようであった。希望があり、毎日が楽しかった隼のようだった。再び重なった思い出が蘇ってきた。自分がもっと向き合わなかったから、隼は道を間違えた。

 シーカーは前を向き、バーンズに言い放った。


「そこまで言うなら炎の刻印で戦ってやる。神経を尖らせて、俺の目を狙って戦え。全身の力を俺だけにぶつけろ!!」


 シーカーの拳が燃え上がり、一気に炎は身体全体へと広がって行く。その姿は先程とは別人のように見えた。圧巻されてバーンズは無意識に何歩も後ろへと下がっていった。


「まだ戦ってもいないのに、臆病になるか?」

「いや……僕は臆病じゃない!!」

「ならかかってこい!!」


 二人は拳を構えた。その威圧感は先程のやる気を一切見せなかったシーカーとは違う雰囲気であった。その姿に攻撃するを躊躇うが、今の自分を強くする為──弟の為に強くなる。


「うおぉぉぉぉ!!」

「来い!」


 先程のオドオドしていた顔とは違い、本気の真剣顔になったバーンズ。シーカーが手招きで挑発すると、真っ直ぐと突っ込んだ。。シーカーの眼前に到達すると拳を握りしめて力一杯振り下ろした。


「そんなワンパターンの攻撃じゃ、いつまで経っても攻撃を当てる事は出来ないぞ!」


 身体を軽く後ろに傾けて、拳を避けた。同じパターンの攻撃は相手からすればチャンスを生み出すことになる。反撃しようとバーンズのガラ空きの胴体へと攻撃を仕掛けようとした。その時、バーンズはニヤリと微笑んだ。


「ワンパターンも戦略ですよ!」

「!?」


 シーカーの拳が放たれた瞬間、バーンズは一歩自分を踏み込み、その場で高くジャンプし、一回転してシーカーの真後ろに体操選手の如く綺麗に着地した。

 シーカーは一旦距離を取り、バーンズの行動を褒め称えた。


「やるじゃないか。学習能力はあるほうだな」

「当たり前だよ」

「でも、こんなもんじゃないだろ」

「もちろん……はぁ!!」


 バーンズは咄嗟に刀を取り出し、槍投げのようにシーカーへと投げつけた。真っ直ぐとと飛ぶ刀──思わず避けたシーカー。その隙を見逃さずにバーンズは攻撃をしようと真横へと回った。


「あぶなっ!」

「好きあり!」


 真正面から来た刀を避けたのも束の間、今度は正面からではなく、真横から攻めてきたバーンズ。横を振り向くとそこには飛び蹴りを繰り出しているバーンズの姿が眼前に迫ってきた。その顔はシーカーの炎の刻印を恐れない勇敢な顔だった。

 シーカーは咄嗟に腕で蹴りを受け止め、その衝撃で怯んで数歩後ろへ下がる。蹴りが直撃し、上手く着地したバーンズは着地をしたその足をバネのよう伸ばして、そのままシーカーへと追撃を開始した。再び飛び蹴りを空中で2回繰り出し、その後はパンチと蹴りの連続の攻撃を繰り出した。シーカーはこの猛攻を、冷静に対処し、攻撃を一撃一撃受け止めていく。その内にシーカーは無意識に笑っていた。


「戦いの才能があるなお前は!先程とは大違いだ!」

「まだまだ君には程遠いけどね!!」

「戦いはまだまだだ!はぁぁぁ!!」


 身体全体から燃えだす炎を全開に吹き出し、その場からバーンズを弾き飛ばすシーカー。バーンズは何とか体勢は整えたものの、その熱い風圧を前に近く事が出来なかった。


「……あれが、本場の炎の刻印……でも!」


 熱さをもろともせず、先程投げた刀を拾い、そのまま真っ直ぐと突っ込んでいく。


「そうだ!恐れをなくしてかかって来い!!」


 シーカーも刀を取り出し、炎を纏い真正面より刀と刀がぶつかり合う。その勝負は一瞬であった。眼球まで激しく燃え上がっていたシーカーの力が圧倒的に押し切り、バーンズの刀を上空へと弾き飛ばし、刀は地面に刺さった。


「しまった!?」


 バーンズの一瞬の膠着にシーカーは炎を纏った拳を顔面に繰り出した。バーンズがその拳に気づいた時には眼前に迫っていた。やられると反射的に目を瞑ると拳は顔面に来なかった。


「……」


 目を開けると拳は顔面ギリギリに止まっていた。熱く燃え上がっているシーカーの拳が激しく目に焼き付いた。そしてバーンズは悟った。自分の負けだと──

 負けを悟ったバーンズは力が抜けて、その場に腰を抜かして両膝をついた。


「つ、強い……」


 あの攻撃のぶつかり合いの勝敗は明らかだった。自分の力ではどうする事もできなかった。それにあのぶつかる瞬間のシーカーの顔に恐れをなしていた。まさに鬼神そのものであった。

 バーンズが唖然としていると、刻印を解いたシーカーが手を伸ばしていた。その顔からは自然と笑っており、シーカー自身にとっで久しぶりに楽しい勝負であった。


「さっきとは別人みたいに強かったな。俺、びっくりしたぜ」


 シーカーの手を掴み立ち上がると、バーンズは照れ臭そうに話した。


「……勝負を受けてくれてありがとう。とてもいい経験になったよ」

「俺も感謝する。曇っていた気持ちが少しは晴れたよ」


 一ついいかな?おこがましいと思うけど、君が良ければフレンドになってくれないかな?しつこく会うとかじゃなくて、簡単なアドバイスをメッセージでたまにいいからやりとりをしたいんだ」

「……いいぜ。俺からも願ったりだ」


 二人は笑顔で握手を交わして、フレンド登録をした。


「もし僕が強くなったらいつかまた戦ってくれるかい?」

「あぁ、戦ってやる。そして自分の力を信じろよ。信じれば絶対に勝てる……信じろ。困った時は相談してくれ」

「もちろんさ。それに僕は間違った方向には行かない……約束する」


 バーンズは優しく微笑んでログアウトしていった。

 

「少しは何か分かったかもしれない。隼……お前がどんだけ苦しんでいたのか……」

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