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第77話 仮面の中にある真実(2)

 

 悠斗は家に帰ってすぐに箱を大雑把に開けた。箱からAlterLinkを取り出し、空高く上げた。お年玉を一切使わず大事に取って置き、無駄な物を買わずにコツコツをお小遣いを貯めた甲斐があった。一生もんの宝物にしようとたった今決めた。


「こ、これがAlterLink……この為に俺は生きてきたんだ……」


 生まれてきた意味をこの瞬間に知り、世界に──そして製作に関わった人全員に感謝した。数分間見惚れてから我に帰り、ドキドキしながらゆっくりと顔に装着した。装着するとそこは真っ黒な世界──だが、5秒ほど待つとAlterFrontierにLink中の文字が現れた。更に5秒待つと"接続完了"と現れた。初ログインなので目の形からプレイヤーを認証し始めた。そしてログインが完了し、このAlterLinkでは悠斗でしか出来なくなり、ゲームへとログイン出来る。


「よし!これで俺もAlterFrontierに──」


 その瞬間、悠斗の意識はAlterFrontierとLinkし、ベッドの上にぶっ倒れた。


 *


 意識がAlterFrontierへと入り込んだ。だが、そこはまだゲームの世界ではなく、自分自身が目の前にいた。

 そして機械音で作られた感情のない声が鳴り響いた。


『キャラクターエディットを開始します。自分の好きなように身体や服装を作ってください』

「ふ〜ん……好きなようにか……」


 キャラクターエディット──つまり、このゲームでのもう1人の自分を作り出すことである。悠斗は自分の姿を作るのにそこそこ悩んだ。


「背は大きくして、キリッとしたカッコいい目にせんとな」


 悩んだ末に作り出したのは、モデルのようなスラリとした体型で、目はキリッとした大人しそうでカッコいいキャラクターになった。

 そして次は服装──服装によって動きやすさが変わる。軽いのだと動きやすいが防御は薄い。厚い物だと防御は高いが動きづらい。


「動きやすい服となると、やっぱり忍者だよな。ええっと忍者っぽい服をと──」


 忍者っぽい服を探すも無かった。だから、しょうがなく派手な紫色の道着を着ることにした。

 そして何か足りないと思って、また悩み始め、装備を手当たり次第に調べ始めた。


「何か足りないんだよな〜。ん?これいいな!!」


 何か納得する物を見つけた悠斗。それは──


「マフラーいいね!!仲間のピンチに颯爽と靡かせて登場!ってやってみたいよな〜!こんな感じでいいかな?カッコ良ければそれでよし!!」

『貴方の姿を登録しました。最後に貴方のお名前を教えて下さい』


 名前──カッコいい名前だと狙っていると思われ、変な名前だと気味悪がられる。だが悠斗は一つの名前を半年以上前から決めていたのだ。


「名前……俺は前から名前を決めていた!この名前だ!!"シーカー"」


 シーカー──意味は捜索者であり、AlterFrontierの全てを探す者を指す意味でこの名前を決めていたのだ。将吾や隼には一切この名前を公表していなかった。自信満々に後で見せてやるとワクワクしているのだ。


「こんなカッコよく、自然な名前はこの世に存在しない!さぁ!AlterFrontierにlet's go!!」


 名前を決定すれば、ここからはAlterFrontierへと送られる。心臓がバクバクと脈動する中、決定を選択した。


『プレイヤー名を登録しました。これから貴方にはAlterFrontierの世界に送られます。大地を揺るがす巨大なモンスターや太古の巨大魚など未知なる生物がいる世界の探求者として貴方は名を残すことになるでしょう。では、ここからは貴方が主人公です。AlterFrontierにようこそ!」

「始まる……待ちに待ったAlterFrontier!!」


 暗闇の奥から光が差し、そこに吸い込まれて行く悠斗。その最中自分の姿が徐々にシーカーへと反映された。右腕に腕時計型の万能機器"メサ"が装着された。そして光の中へと吸い込まれ、何処かへと送られた。


 *


「うっ……こ、ここがAlterFrontierなのか?」


 目を開けるとそこは自分が生きてる現実とはかけ離れている世界であった。一見普通の草原だが、遠くに山があり、現実にもありそうな風景であった。

 後ろを振り向くとそこには崖があり、下は海。崖のそばには一本の巨大な木が聳え立っていた。


「……!?」


 呆然を周りを見渡していると、突如地面が大きく揺れ始め、それが何度も続いた。シーカーは何が起きたか分からず、慌てて地面に伏せた。大きな地鳴りがなり、この世の終わりと思ってしまうほどだった。


「な、な、な、何だ!?地震か!?」


 しばらく伏せていると、山の奥から二つ首のプテラノドンのような生物が大量に飛び出てきた。そしてその山の方角から木を踏み倒しながら進む巨大な生物の影が見えてきた。その中から現れたのは超巨大なドラゴン"草源龍ガイアプラトーン"であった。


「確かあのモンスターは……ガイアプラトーン。こんなにも大きいなんて」


 草源龍ガイアプラトーン

 ピュアース草原、討伐難易度☆5 HP120000

 全長50mの長巨大龍。1万年以上生きたと言われる大地を歩く四足歩行の伝説のドラゴン。背中は亀の甲羅のように硬く、巨大樹の森が生えている。

 動くのはとても遅く、おっとりとした顔をしている。攻撃自体はしてこないが、背中に生えている巨大樹からは猛毒の鱗粉が放たれており、プレイヤーにじわじわとダメージを与えていく。戦うときは毒を打ち消す解毒薬必須。


 その50mを超える圧巻な姿に口を開けて見上げていた。この非現実的な空間だが、今はここが現実なんだと自問自答を繰り返して、ずっとモンスターを見ていた。


「悠斗!」


 後ろから名前を呼ばれて、咄嗟に振り向くとそこには戦国武将のような重い鎧の姿をした男と、軽量な鎧を胴体や手足に纏い、口元を布で隠している男が立っていた。


「な、何故の名前を!?」

「おいおい、ダチの声忘れたのかよ。俺だよ隼ことファルコンだ」

「そして俺が将吾こと、Syoだ」


 2人は将吾と隼であった。戦国武将っぽい方が将吾で、軽そうな鎧の男が隼であった。


「何だ何だシーカーって変わったにしやがってよ〜」

「お前だってSyoだなんてダサい名前にしやがってよ!」

「2人共……そんなんじゃ後先真っ暗だな」


 隼──ファルコンは言い合いを繰り広げる2人の手を強引に掴み、崖の方へと引っ張って行く。


「何するんだ隼──じゃなくてファルコン!」

「いてて!まてまてまて!どこ行くだ!俺らを崖から投げ落とすつもりか!?」

「違うよ、俺達の結束をここに残すんだよ」

「「結束?」」


 意味がよく分からない2人はなすがままに木の前まで引っ張られた。そして手を離し、初期武器のナイフを取り出した。


「まさか殺す気じゃ!?」

「だから違うって……」


 シーカーの予想とは違い、ファルコンは木に向かってナイフで掘り始めた。2人は静かに見守って何をするか伺った。そして小声で話し合った。


「何をしてるんだろう?」

「藁人形の類だろうか。こんな事まで来てする事かね」

「よし出来たぞ」


 ファルコンが見せてきたのは英語で"Falcon"と書かれていた。そしてファルコンは無言でシーカーらにナイフを投げ渡してきた。


「さぁお前ら掘れよ。ここに名前を掘るのは初めてのようだしな」

「なるほど……いいね!」


 2人も夢中になって掘り始めた。そして"Falcon"の文字を囲むように"seeker"と"Syo"の文字で囲まれた。ファルコンはメサを操作してカメラのモードを探し、モードを選択すると小型のキューブがメサから飛び出てきた。


「最後に写真を撮ろうぜ。初めてAlterFrontierに来た記念としてな」

「そのキューブがカメラ代わりになってるみたいだな」


 カメラキューブを操作して、3人が映るくらいに遠ざけた。そしてファルコンが中心となり、二人の肩を組んで木の前に並んだ。そして10秒後にシャッターのタイマーをセットした。


「スタート」


 カウントダウンが始まったが、堅苦しい顔を見て、シーカーが助言した。


「みんな笑え!俺達の記念の一枚だ!」

「笑えって言われてもなぁ……」

「こんな堅苦しい顔──卒業写真じゃねぇんだからよ!笑え!笑え!」

「は、ははは」


 3人は作り笑いをした。不気味なほどの作り笑いだった。でも、その顔を3人が見て、思わず吹き出してしまった。


「あははは!!」

「何だお前!それ顔!!」

「お前らだってははは!!」


 自然な笑いのままシャッターのカウントダウンが0になり、写真が撮影された。

 その写真は3人の自然の笑顔がよく分かるほどのいい写真であった。仲睦まじいのが写真越しでも分かるほどであった。


「ふっ、これでいいな」

「写真も撮ったところだ。早速クエスト行ってみようぜ!!」

「おう!!」


 3人の戦いが今から始まる──だが、ここから少しずつ何かが変わり始めて行く……

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