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第76話 仮面の中にある真実


仮面の中の姿を見て、全身から力が抜け、刻印も自然と解けた。冷静になろうとするが、冷静になれる状況じゃなかった。

 目の前にいるのは昔からの親友であり、自分を狙ってきた敵。状況を整理するので精一杯な中、震える声で隼に語りかけた。


「……隼なのか?」

「そうだと言ったら?」

「……何をやっているんだお前」

「お前を倒し、炎の刻印を奪う事だ」


 感情を感じさせない淡々とした喋りで、返答する隼。

 戦いを見ているsyoもシーカーと同じく唖然としいた。他のメンバー達は何が起きているのか理解出来ず、困惑していた。そんな中、オーガスターが尋ねた。


「……誰なんだあいつは?Syo教えてくれ」

「あいつは、俺とシーカーの昔からの友達だ」

「友達?」

「あぁ……大昔からの友達だ」


 シーカーは気を確かにして、冷静さを保ち再び口を開いた。


「炎の刻印が欲しい、それがお前の目的なのか?だから骸帝に手を貸すんだ?」

「あぁだからこの風の刻印を貰った……それとお前らに復讐する為に」

「復讐って──まだお前、あの事を根に持ち続けているのか!」

「あぁ、あの事が俺達の全てを変えてしまったからな……」



 *


 約一年前……アルターフロンティアがオープンを待ちに待っていた悠斗・将呉・隼の3人は学校で机を囲み、仲良く話しをしていた。

 悠斗はウキウキ顔で2人に話していた。


「とうとう明日がアルターフロンティアがオープンするんぜ!!もう毎日ニュースだよ!アルターフロンティアをやるから休むとか、徹夜で店の前に並ぶとか、大変な騒ぎだぜ!」

「ふん、予約していた俺らに抜かりはないな」


 キザで足を組み、腕も組んでいる隼。

 3人は予約開始と同時に一斉に予約をしたので、余裕の表情で販売を待っていた。


「自分の好きなアバターを作って、虹の砂漠や空高く浮く天空都市や見た事も無い生物がいる深海──もう待ちきれねぇな!!こんちきしょう!!」

「俺は巨大なモンスターに3人に立ち向かいたいぜ!」

「落ち着けよ、悠斗・将呉──発売は金曜だ。楽しみはじっくりと待つもんだぜ」


 二人が盛り上がっている中、随分と余裕そうに二人を笑っている隼。だが、そんな隼を見て二人はニヤリと笑いながら隼の足元を指した。


「じっくりと言っているが──」

「隼、お前──自分の足元を見ろ」

「ん?足だと?」


 隼は指摘されて自分の足を見た。脚が自分の意思とは無関係に激しく足踏みをしていた。


「お前も待ちきれねえんだろ!」

「結局俺達と同じく待てねぇんじゃねえか!!」

「うっ……」


 図星だった。自分も楽しみが抑えきれない事がバレ、隼は自分の頭を気だるそうに掻き始めた。


「あったり前だ。待てるわけないさ。こんなビックなゲームをやる事がな!!」

「だよな!!」

「はっはっは!!」


 隼も大笑いし、3人は肩を組み、更に笑った。一気に笑顔に包まれ、ゲームのオープンを待った。

 3人は周りの生徒から見てもとても仲が良かった。このアルターフロンティアによって更に友情が深まった。だが、この時、アルターフロンティアによって友情が崩壊する事をまだ知るよりもなかった。


 アルターフロンティアをプレイする為のVR機器"AlterLink"が発売した金曜日の帰り、将呉と悠斗は居残り掃除当番。隼は2人がモップを掛け終えるのを教室の隅で待っていた。


「隼、お前先に買ってプレイしてても良いんだぞ」

「いや、お前らを待つさ。みんな同時に買って、同時にやるのがいいんだろ。俺1人先に始めて、俺だけが強くなったら嫉妬するだろ、お前ら」

「まぁな。ならすぐに終わらせるから待ってろ!」


 悠斗がそう言うと2人はモップをかける速度を上げて、あっという間に掃除を終わらせて予約券片手にゲーム屋に行った。


「すげぇいっぱい人が押し寄せているなぁ……これ全員AlterLink目当てなのか?」


 ゲーム屋には大人も子供も関係なく、我れ先にとゲームを買おうと集まっていた。

 予約出来なかった人は当日に少しだけ店内にて抽選販売が行われるので、それ目当てで突撃しているのだ。


「予約しないからこうなるんだよ。さっさと買おうぜ」


 予約した3人は悠々とした姿で店に入り、抽選待ちな人々を横目にAlterLinkを簡単に購入し、颯爽と帰路に着いた。VR機器な為、少し大きめの箱に入っている。

 ワクワクが止まらない悠斗は嬉しさのあまり箱を空高く掲げた。


「おいおい変なことすんなよ悠斗。早速落として壊しても知らねえぞ」

「大丈夫!大丈夫!落とすほど俺も馬鹿じゃねぇ──うわっ!!」


 突如、背後から現れた黒いサングラスとマスクと帽子を被った男が、悠斗のAlterLinkを奪い、その場からすぐさま逃げていった。一瞬の出来事に悠斗は盗まれた事すら分からず、何秒か固まり自分が奪われた事に気付いた。


「……お、おい!!俺のAlterLinkが!!返せ!!」

「ちっ……!言わんこっちゃねぇぜ!悠斗、俺の荷物持ってろ!!」


 隼はとっさに自分のAlterLinkとバッグを悠斗に投げ渡して、奪っていった男を猛スピードで追いかけた。

 心配そうに走り去っていく隼を見て、悠斗は不安そうな顔をした。


「隼を信じようぜ。あいつの足の速さは俺達が一番知っているだろ。あの速さならすぐに追いつけるさ」

「そうだけど……」


 小中とサッカー部に入っていた隼の足の速さは尋常ではなかった。相手が荷物を持っているとはいえ、物凄い速度で距離を縮めていった。

 男は暗く、薄汚い路地裏へと逃げ、隼も勢いを落とさずに侵入した。


「ちっ……どこまで逃げやがる」


 目の前にはフェンスがあり、隼は追い詰めたと確信した。だが男はAlterLinkを小脇に抱えて、片手でフェンスを掴み、軽々と乗り越えた。


「くそっ!!」


 隼も軽々とフェンスを乗り越えて着地した。再び男を追おうと足を踏み出そうとした。路地裏の更に奥から、AlterLinkを抱えた男と数人の不良がゾロゾロと集まってきた。


「ちっ……してやられたって訳か」


 身を包んでいた男はメガネやらを全て外し、不良としての姿を露わにした。


「痛い目に遭いたくなければ、ここから立ち去りな」

「ダチのもん盗った奴の言う事を聞くと思うか?むしろ、そのセリフをそっくりそのまま返すぜ」


 隼は至って冷静だった。今の自分のピンチをまるで分かっていないように微笑んでいた。

 男が顔で合図すると、他の不良達が隼を囲んだ。そして男は余裕の表情で最後の警告をした。


「これでもか?」

「あぁ……絶対にここから離れねぇ。全員、叩き潰しやる!」



 *



 何十分か経ち、外は夜になり黒く闇に染まっている中、悠斗は隼の帰りが遅いと不安になって将呉と共に街中を探し回ってきた。


「隼はどこまで行ったんだ?」

「連絡しても全く出てこない……大丈夫なのかよ」


 すると路地裏から男の悲鳴が聞こえてきた。そこは先程隼が入っていった路地裏であった。


「今のは?」

「もしかして……悠斗行くぞ!」

「おう!」


 2人は真っ先に路地裏へと走って行った。

 フェンスに差し掛かり、目を凝らして奥を見ると男が数名倒れており、男が1人立っていた。その立っている男のは隼だった。


「隼!?」

「……悠斗か。ふっ、奪還したぜ。お前のブツを」

「大丈夫なのか!!」


 フェンスを乗り越えて悠斗にAlterLinkを返した。隼の顔を見ると、あちこち殴られた跡が残っており、青い痣まで出来ていた。だが倒れている男達の方が倍以上にボコボコにされていた。


「隼……す、すまない。俺の不注意のせいで」

「大丈夫だって……全員揃ってないと、ゲームは面白くないからな。さっさと帰ろうぜ。ゲームが俺達を待ってるぜ」

「あぁ……」


 隼の顔は優しかった。悠斗は本当に感謝していた。家に着くまでずっと肌身離さず大事そうに抱えていた。


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