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第71話 襲撃されしオーガスター(2)

 

 山の上にある公園。悠斗は柵に背中を預けて、空を見上げていた。そこにはプリントを持った将呉の姿もあった。


「何だそのプリント?」

「これか?隼のだよ。最近休んでるから、家が近い俺が届けているんだよ」

「……そうか」


 隼の話にはあまり興味がない悠斗。将呉は話をそらすように本題へと入った。


「俺を呼んだのは何だ」

「……とんでもない力を手に入れたんだ」

「とんでもない力?」

「あの大男との戦いで目覚めた刻印の限界の姿だ……」

「まだ上があるかもしれないのに?」

「……」


 一瞬、場は静まり返った。悠斗は将呉のツッコミを無視するように話を続けた。


「刻印の新たなる可能性って事だ」

「可能性?」

「つまり、今の俺は刻印の限界の通過点を通っているだけだ」

「通過点?」

「刻印はまだ謎が多すぎる。俺が知っている事が1%なのか100%なのかも分からない。でも、確信できる事は一つ。まだ上が存在するって事だ」

「名前とかあるの?せっかくだから名前とか……」

「もちほん決めてある。その名もえ──」


 名前を言おうとした瞬間、突如Zackから連絡が入った。すぐに取ると電話の主はアモレだった。アルターフロンティアから直接連絡して来ているようだ。

 でも何やら慌てている様子。悠斗はそんな事を知らずに普通に応答した。


「どうした?」

「た、大変なの!仮面の男が、オーガスターと……」


 仮面の男の名を聞いた瞬間、目の色が変わり、態度も一変した。


「何!?せ、戦局はどうだ?」

「オーガスターが押され気味で……」


 行きたいけど、行けない。フィールドへの侵入がロックされている。そう思ったが、ノートパソコン片手に将呉がゆっくりと言った。


「悠斗……どうやらお呼ばれのようだぜ」


 ノートパソコンには仮面の男より、招待が来ていた。もちろん今いるフィールドへの招待であった。


「……男に人気だなぁ、お前って奴は」

「男ばっかりに好かれても困るが、今は行くしかねぇね」


 2人は真っ先に家に走っていった。



 *



 2人の戦いは更に激しさを増してきた。ビルの破片を飛び移りながら、剣と刀が真正面からぶつかり合い、その度に大きな衝撃がフィールド内にこだまし、周りのビルに亀裂を走らせた。

 ぶつかり合う中、オーガスターはニヤリと楽しそうに笑っていた。


「はは、やはりバトルは楽しいな。自分たちの技量をぶつけ合い、そこからどうやって相手に攻撃し、トドメを刺す。その駆け引きが最高に楽しいぜ」

「ふっ、俺もだ。相手を屈服させる戦いをな」


 仮面の男は力任せに刀を押し込み、必死に耐えるオーガスターの顔へと徐々に剣を近づかせていく。


「その程度か、お前は」

「分かった風に言っても困るんだよ!」


 オーガスターも力任せに押して対抗した。すると仮面の男の刀に小さなヒビが入った。対して噴火龍の剣はヒビ割れる様子は一切なく、優勢になり始めた。仮面の男の刀は一般的な刀を強化した程度、噴火龍の剣はレベル99の頑丈な剣である。

 このままでは刀が割れて、押し負けてしまう。仮面の男はすぐに行動に移した。わざと身体の力を弱めて、オーガスターにそのまま力強く弾き飛ばされた。そして破壊されたビルの一室に入り込み、奥へと逃げていった。


「逃がすか!」


 オーガスターはビルに向かって剣を投げつけた。突き刺さると、剣は爆発し、ビルは一気に崩壊を始めた。

 だが、オーガスターは離れることなく、煙が舞う崩壊したビルへと突入した。危険なのは承知であり、その先が全く見えないのである。


「怖くて逃げたわけじゃないのは分かっている!出てこい!」



 煙の中から刀を突きつけて特攻してくる仮面の男が現れた。真っ直ぐと迫るが、軽々と避けられた。だが、その刀を地面に刺して、刀を軸として体重を掛けて時計の針のように横に身体を回転して蹴りを加えた。


「ぐっ!」


 オーガスター攻撃を腕を交差して防御し、そのまま足を掴み上げて壁に投げつけた。だが、仮面の男は体勢を立て直して、着地すると再びオーガスターの元へと行き、攻撃を繰り広げた。

 防御して攻撃を返す攻防を繰り広げ、オーガスターはパンチを受け止めて、もう片方の手で仮面を掴み、地面に強く叩きつけた。


「オラァァァ!!」


 そしてオーガスターは剣を上にあげて、思いっきり振り下ろした。その一撃は仮面の男の仮面に直撃してビルを真っ二つに切り裂いた。爆発が起き、再び煙が舞った。渾身の一撃は、確実に決まった。これで勝負が決したと、オーガスターもアモレもそう感じている。


「はぁ……はぁ……かっ──」


 煙の中から円盤状に渦巻いた飛来物が現れ、鋭利な刃物の如くオーガスターの肩を切り裂いた。


「ぐっ……!な、なんだ──」


 何が起きたか理解する間も無く、更に無数の飛来物がオーガスターの身体を切りつけた。

 そして足が切られて、破片から足を踏み外した。その瞬間、煙の向こうから小さな黒緑色の光が輝いていた。


「あれは……」


 そのまま下に落下して、オーガスターは大きなビルの破片の上へと倒れ落ちた。

 そこに仮面の男が煙の中から現れて、オーガスターの元へと降りていった。そして見下すように胸の部分を踏み込んだ。


「ぐっ!」

「ふっ、残念だったな……トッププレイヤーもここまでだ」


 刀を取り出し、心臓目掛けて突き刺そうとした瞬間、その手を強く握りしめられ、刀は動く事なくギリギリで止まった。もちろんそれはオーガスターではない。


「俺がいないところで随分とお楽しみだったようだな。俺も混ぜてもらおうか」


 その声を聞き、オーガスターは苦しい中、無理やり笑った。


「ははっ、やっと来たか……シーカー」

「久しぶりだな……オーガスター。それに仮面の男!」


 強めに言いながら刀ごと、仮面の男を投げ飛ばした。仮面の男は綺麗に着地して、腕を組み静かに様子を伺っている。


「ふん、やっと来たか」


 シーカーは真っ先にオーガスターを手で引っ張り上げて、立たせた。


「仲間のピンチに助けに来ただけだよ」


 オーガスターの肩を組み、アモレへと渡した。


「あ、ありがとう」

「このフィールドから出て、体力を回復しろ。俺のホームにSyoもいる。そこに戻ってくれ」

「う、うん……」


 いつにも増して真剣な表情を浮かべているシーカー。その目先にあるのは仮面の男──ただ一人だった。

 オーガスターはその二人の顔を見て、悟った。


「ここは奴に任せる。俺たちがいたら戦いの邪魔になる。ここは更に戦場となる」

「……分かった」


 二人はフィールドから立ち去った。二人が居なくなった事を確認すると、二人はゆっくり顔を見合わせた。そしてシーカーはニヤリと笑った。


「今度の俺は前よりは強いぜ」

「炎の刻印か……その力を味わってみたいものだ……あの時は味わえなかったからな」

「さぁやろうぜ……勝負を」

「あぁ……今度は手加減なしだ」

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