第70話 奇襲されしオーガスター
「えっ?みんな襲撃されたって?」
「そうみたいだ。みんな共通してフィールドロックを掛けられていたようだ。骸帝って奴と凰姫って奴の仕業らしい」
オーガスターとアモレの中の人である柳星と芽威は学校帰りに、この情報が来た事を知った。
2人は夕日が沈む中、公園に行き、今の話を整理した。
「数日の間にあいつらは色々とあって、プレイヤー狩りの正体の一つ。そして俺たちの敵でもある奴に繋がっていたって訳だ」
「でも、プレイヤー狩りってランキング上位の人たちばかり狙ってるはずなのに、何でシーカーやSyoみたいなランキング関係ない奴まで襲撃を……」
「さぁな……一番可能性が高いのは刻印を狙っているからだろう。奪い方とかシステムがどんなのかは全く分からない。でも、人智を超えたパワーなのには間違いない。奴らにとっても脅威なのは間違いない。だから、刻印を持つシーカーらを狙っている──それが俺の仮説かな。どっちみち、奴らとはいずれ戦う事になる。油断は禁物だ」
「……うん。今はみんなと合流しよう。また、後でね」
「あぁ」
2人は別れてそれぞれの家で、いつも通りゲームにログインした。行き先はもちろんシーカーのホーム。ログインが完了し、フィールドに送られる──はずだった。
2人が送られた場所──それは、シーカーが仮面の男と戦った上下共に空中の世界。ビルが大量に浮かんでいる謎の空間に送られたのだ。2人は同じビルの上に降り、すぐに辺りを見渡した。
「ここは……」
アモレは今いるフィールドを検索した。だが、検索にヒットせず、フィールドから出ることは出来なかった。
「で、出れない……まさか」
フィールドから出れない。その答えはもう、2人は察していた。自然とオーガスターの表情はニヤリと笑みが自然と溢れていた。どこかしらワクワクしているような雰囲気であった。
「……そのまさかだ……やっと俺の元に来たな」
「もしかしてワクワクしてる?」
「当たり前だ、シーカーやメリクリの野郎と戦った奴らだ。それに多くの上位プレイヤーを倒してきた奴らだ。それくらいじゃないと腕が鈍っちまうぜ。懲らしめるついでに、肩慣らしと行くぜ」
オーガスターは上を見上げて、息を思いっきり吸い、大きく空に呼びかけた。
「俺の相手!出てこい!!」
「ご到着ありがとうオーガスター」
2人の背後に気配もなく現れたのは仮面の男だった。だが、攻撃する様子もなく、ただ呆然と立っていた。2人にとっては初対面。シーカーの話から聞いただけの存在。それが今、目の前に立っていた。
オーガスターはいつでも動けるように、警戒した。
「あんたが仮面の男かい……シーカーから聞いた通りだ」
「シーカーを知っていたか。あんな奴と仲間か……」
「俺の仲間だ……戦って、語り合った。大事な仲間だ」
「仲間、仲間──友情物語って奴か……くだらん」
オーガスターの話に徐々に手を握る力が強くなった。そして自分へ親指を立てて、問いかけた。
「俺の事を覚えているか?」
「誰だお前は……知らないな」
「知ってるわけない……か──まぁいい。ここであの時の恨みを」
「あの時の……恨み?」
刀を出し、そろりそろりと近づく仮面の男。何か異質な雰囲気を感じ、アモレに後ろへ下がるように手で合図した。
「お前は下がっていろ」
「で、でも……」
「コイツは雰囲気で分かる。異様な力を感じる……それに、どうやらコイツは俺に私用があるみたいだ」
オーガスターも刀を一つ出し、仮面の男へと歩いていく。二人とも構える様子を見せずに迫る。
するとオーガスターのメサからとある画面が現れた。それは決闘モードが強制的に発動していたのだ。だが、余裕の顔で答えた。
「なるほど、強制バトルって訳か……」
「ふっ、もう分かってるよな」
「あぁ……」
二人は一斉に動き出したが、コンマ1秒の速さで仮面の男の方が一足早かった。
お互いに刀をぶつけ合い、引くこともなく刀での攻防を巧みに繰り広げた。押しているのはどちらかと言うと仮面の男であった。
「前より鈍ってないかオーガスター。あの時よりも、遥かに弱い、弱すぎる」
「へぇ……そんなに言う余裕があるのか。少しは楽しめそうだ!」
オーガスターは力を入れ、仮面の男を後方へと弾き飛ばした。仮面の男は綺麗に宙返りして地面に着地して、再び刀を振るい、襲いかかった。
「はぁ!」
無数に振り回して、仕掛けてくる刀での連続攻撃。オーガスターは全ての攻撃をギリギリで防御した。攻撃は一見がむしゃらに振っているように見えるが、防御をして出来た一瞬の隙を逃さずに攻撃をしていたのだ。オーガスターも防御をして攻撃を追うのがやっとのほどであった。
だが、オーガスターは余裕のある顔で戦っていた。その顔を見て、仮面の男は攻撃しつつ言及した。
「ふん、予想以上に早いって思ってる顔だな」
「思ってる事が顔に出るタイプでね。分かりやすかったな?」
「分かりやすくてありがたいね」
「なら、これは読めるか──はぁ!」
オーガスターは防御しながら、左手からもう一つの剣を出し、仮面の男に攻撃する訳でもなく、地面に突き刺して、後方へと下がった。もちろんその剣は噴火龍の剣。
「それは……ちっ!」
地面に突き刺さると、地面は大爆発し、仮面の男も咄嗟に退いたが、爆発に巻き込まれた。ビルは亀裂が入り、半分に割れた。
爆発が治ると、オーガスターは大きな破片の上に飛び移りながら、浮かんでいる剣を拾った。そして煙の中へ目を凝らして仮面の男を探した。
「……あいつは──!?」
背後から殺気を感じた。振り向きながら防御の態勢を取った。振り向くと刀を勢いよく振り下ろしてきた煙の跡が残っている仮面の男がいた。
「くっ!」
咄嗟に防御したが、その強烈な一撃に防御は弾かれて背後の半分に割れたビルへと吹き飛ばされた。だが、飛ばされている最中に片方の剣を投げて仮面の男が立っている破片に刺した。
「ちっ」
再び大爆発を起こし、仮面の男はオーガスターとは逆のビルへと着地した。
剣は爆発の影響でオーガスターの元へと戻って来て、綺麗にキャッチし、片方の剣を仮面の男に向けた。
「これでも、弱いか?」
「やはり……強いなお前は」
「強さだけが取り柄だからな、俺は」
何処かしら楽しそうに戦うオーガスター。
2人は再び、にらみ合いながら様子を伺った。




