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第69話 意外な標的達(2)

 

 とある暗い空間。巨大なモニターの前に一人、突っ立ている男がいた。その正体は仮面の男。

 そしてモニターにはオーガスターのデータが写っていた。強さ、ランキング、武器、プレイ日時、現在の場所など、あらゆるデータが載っていた。

 もちろんこれは違法なデータであり、通常では見れない特殊なデータである。だが、仮面の男はオーガスターのデータを見て、怒りを拳に表していた。あの事を思い出した。



 オーガスターの前に膝まづいている仮面の男になる前の姿の男。オーガスターに負けて、拳を地面に叩き込みながら悔しがっていた。


「くっ……なぜ、何故だ!!」

「お前みたいなチートを使ってまで勝ちたい奴などど、戦う意味はない。0からやり直せ」

「な、何故その事を……」

「それはお前の──」


 この事を思い出すと無性に腹立たしくなってくる。拳を握る手は強くなり、震えが止まらなくなって来た。あの後に全てが変わり、全てを失った。


 すると背後から凰姫がスッと現れた。


「あらぁ?仮面さん大丈夫?どうしたの、そんなお怒りで?」

「何でもない……お前の方は大丈夫なのか、一人シーカーにやられたようだが」

「それを言わないでよぉ〜一人は破壊されて、一人は逃げ帰って来た。本当に頼らないわねぇ〜。誰かもっと倒しやすい人いないかなぁ」


 凰姫は目の前のオーガスターのデータを見て、手を叩いた。


「あらっ!良いところに強そうな感じの子がいるじゃない〜!勝率99%?すごいじゃない!」

「こいつは俺の獲物だ……」

「えぇ〜こんな強い子の戦闘データを取れるなんて良い事じゃない?」

「どうせ送り込んだ所でやられるのが関の山だろ」

「言ってくれるじゃな〜い」


 凰姫はそっぽを向いて、仮面の男に背を向けて不敵に笑った。


「まぁ、それもそれで面白そうだからいいけど」

「ゲートを開けて戦う」

「嘘でしょ?」


 つまりフィールドの侵入や脱出を封じていた、能力を発動せずに戦うということだ。そうなると、逃げられる可能性や外部のプレイヤーからも発見される。


「ゲートを開けばシーカーも来る。そうすれば一石二鳥って奴だ」

「貴方の願望でしょ、シーカーと戦いたいのは」

「だが、戦闘データを取りたいんだろ。骸帝復活のために……ー

「それもそうだけど……」

「なら、決定だ。シーカーがログインしている時に銃撃する」


 そう言って仮面の男はモニターを消してゲームからログインした。


「やたらシーカーにこだわっちゃって……」


 一人残された凰姫はこっそり仮面の男のデータを調べた。そしてモニターに映されたデータを見てゾクゾクと体全体から震えが起き、ニヤリと笑った。


「なるほどねぇ……そうゆうことかぁ〜本当に面白い人ねぇ」



 *



 その頃、Syoと新新はコウモリ人間を囲んで銃を突きつけていた。


「さぁさぁ、観念しなよ。コウモリ野郎!」

「貴方も凰姫って奴の手下なの?」

「……」


 答える気を見せずに静かに佇むコウモリ人間。顔をライトで照らすと、コウモリのように鋭い目つきと牙のような歯を持った男がきつく睨み付けていた。その顔にSyoは怖気付くも、我慢して銃を額に付け、いつでも引き金を引けるようにした。


「睨みつけたって怖くねぇぞ!すぐに撃つことが出来るんだからな!立場をわきまえろ!」


 コウモリ人間は平然とした顔で額に付けられた銃に頭を擦り付けてきた。まるで挑発するように。

 その行動にSyoはご立腹となり、思わず引き金を引こうとするが、新新に止められた。


「あまり怒るな。貴重な情報源だろ。まっ、この顔つきじゃ簡単には言ってくれそうにはないがな」

「どんだけ待っても俺はコイツが言うまで動かんぞ!!」


 ・

 ・

 ・


 数分後、まだ吐かない。


「まだまだ待つぜ俺は」


 ・

 ・

 ・


 1時間後、全然吐く気配がなく、マッキーがあくびをしていた。


「ふわぁぁぁ〜」

「……結構我慢強いじゃないか」


 ・

 ・

 ・


 2時間が経った。何も起きない。待ちっぱなしの状態に、新新も呆れてきた。


「本当にこれで吐くものなの?」

「映画とかじゃ銃を撃とうとすれば、嫌でも吐くんだけどなぁ」

「これゲームだからだろ……」

「あぁ……そうか……」


 そして行き詰まったこの空間に、マッキーが話に混ざるように一つ作戦を提案した。


「拷問器具あるけど、それでやってみる?」

「それを早く言え……」



 銃を向けられているコウモリ人間に、マッキーは用意していた謎のヌルッとした透明な液体をぶっかけた。そして謎の虫かごを開けて放った。ゴキブリとムカデ混ざったような無数の飛ぶ虫が一斉に依然と平然を装うコウモリ人間に飛んで行った。

 その不気味な虫達が真横に飛んでいるのを見て、Syoは気分が悪くなってきた。


「コウモリダメなのに、これは大丈夫なのかよ……気持ち悪いよぉ……」

「僕が育てたムカブリって虫だ。ペット同然さ。ペットは可愛く見える、当たり前だろ?」

「……そうだけども、それとこれとは別だと思うが……」


 コウモリ人間の身体に引っ付き始め、その謎の液体を舐め始めた。新新はその液体の正体に疑問を抱いた。


「あの液体なんだ?」

「これは僕が色んな薬草を調合し、それを濾して物さ。結構粘膜があって作るの大変だったよ」

「……」


 その虫の事を結構興味津々に見ていた。

 でもSyoは内心、不安があった。もしコウモリ人間が今の状態で身体を振ったら、液体が飛び散り、自分たちに掛かって虫どもがこちらに来るのではと──そんな事、起きるわけないよ。多分──

 虫がコウモリ人間の服の中に入り、モゾモゾと蠢き始めた。


「うぅ、服の中にまで入ったぜ……」


 Syoが不安そうにコウモリ人間の顔を伺うと、未だ平然と装っている身体と表情。でも、額からはネバネバ液体とは違う汗のような水滴が異常なほど流れているのが一目瞭然だった。


「もしかして、虫が苦手?」

「……」


 段々目の充血が広がっていき、目全体が真っ赤になった。その瞬間、コウモリ人間はその場から突如消え、虫はその場に落ちた。

 あまりの呆気なさに三人共呆然としていた。新新が口を開く。


「帰った……の?」

「そうみたいだ……メサからも脱出出来るようになっている」


 マッキーは虫を大事そうに虫かごに戻しながら、二人に言い放った。


「まぁ、邪魔が居なくなっていいじゃない。素材を探しに行こうよ」

「……現実なんてこんなもんだな……」


 新新とSyoの二人は腑に落ちない態度で、洞窟の奥へと行き、本来の目的であった素材を手に入れたのであった。

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