第64話 襲いかかる鉄の鬼神(4)
シーカーはある事を思いつき、アルに言い放つ。
「白麗を使え」
「え?」
「白麗を発動して、アイツの気を引いてくれ。その間に俺は、刻印の力を最大限まで溜めた拳で一撃でたおす。
そんな無茶で、成功する確率が見えないシーカーの作戦に困惑するアル。
「で、出来るの!?」
「お前は攻撃を避けているだけで良い。無理はしないでくれ。俺がこの一撃に賭けるだけだ。このフィールドから出れないなら、何としてでも出るんだ」
その握りしめている拳と、シーカーの真剣な顔を見て、アルはしっかりと頷いた。
「分かった……なるべく時間を稼ぐわ。だから、絶対に勝つわよ!!」
「もちろん」
アルはボロボロの体に鞭打つように身体へと力を入れて、左右に分かれた2色の髪を両方白一色へと染めた。
アルは白麗を発動して、一気にパワーアップした。シーカーの言葉を信じて、オーガスターとの戦いの時のように、ピンチにはやってくれると信じた。
シーカーは一旦、奥へと退避して腰を屈めて歯を食いしばり両拳を握り一点に力を溜め始めた。
炎の刻印から発せられる炎のオーラが火柱の如く燃え上がり、両手拳にも大きく炎を纏い、力を瞬発的に増幅させる。
「私に出来る事……それは」
アルは崩壊して下に落ちた大男を誘き出すために、下に降りていった。
「今、誰かのために頑張る事!!」
下へと降りると煙が舞っており、瓦礫が山のようになっていた。
大男の行方を探すと、突如瓦礫の山が崩れ始め、その中から目が赤く光り輝いているボロボロになっている大男が現れた。だが、十分に戦えるほどの余力はある。
「くっ……シーカーの為に、少しでも時間を稼いでみせる!!はぁ!」
身体を気張り白麗を発動して、両髪が白く染まっていく。その最中、身体からパワーが溢れて出してきた。
大男はアルの姿を捉えると一気に迫り、アルへと拳を振り下ろした。攻撃を紙一重に避けて、大男の顎へと拳を振り上げて思いっきりの一撃を食らわせた。微動だにしない大男だが、アルは更に右膝で顎を蹴り上げて一回転した後ろへと着地した。
そして着地と同時に手を重ねて前へ突き出して力を込めた。手の先から雷を帯びたバレーボールサイズのエネルギー球体を作り上げて一気に放った。
「凛窮弾!!」
大男もその攻撃に反撃しようとしたが、集中的な顎への攻撃に誤作動を起こし、一時的に行動が止まり、凛窮弾は大男の顔面に直撃して大爆発を起こした。
爆風でアルは吹き飛ばされたが、綺麗に片手を地面につけて着地して、様子を伺っていた。
「……」
*
「はぁぁぁ!!!」
右手に力を集中させて、力を溜めていた。
力を溜めているシーカーの身体中から湧き上がって来た。身体そのものが真紅に燃え上がり、背中に描かれている炎の文字の真上に囲むように火種が2個時計回りに現れた。シーカー自身、身体が少し軽くなったような感覚になった。
「……この力なら……行けるはずだ!やるしかない!!」
力が溜まった事を確信して、下で奮闘しているアルへと大声で叫んだ。
「アル、俺の用意はいいぞ!!こっちにこい!!」
「分かったわ!」
アルは大男の攻撃を避けると、背を向けてシーカーがいる階へと逃げていった。
もちろん大男はアルを捉えている為、逃げるアルを追いかけていった。アルがその階に着地するとシーカーがいつでも攻撃を仕掛けられるように拳を握りしめていた。そのオーラに圧倒されそうになるが、後ろからも迫る大男とシーカーを対峙させる為、シーカーの後ろへと駆けていった。その横切る最中、さらりと語りかけた。
「貴方の力を信じているわ……」
「信じてもらえるだけ、有り難いぜ」
そして大男もこの階に着地した。アルが視線から消えて目の前にいるシーカーを次の標的に決めた。
「うぐぅぅぅ」
「さぁ……デカブツさん、俺の相手をしろ!!」
見下すように、手でこっちに来いと挑発するシーカー。それにまんまと引っかかり、大男は右足を地面を凹ますそど踏み込み、シーカーへと飛びかかった。
「うがぁぁぁぁ!!」
「この力に全てを賭ける!!」
自分の顔の前に拳を出して見つめ、拳を構えた。狙うは一点大男の身体のみ。拳を眼も大男を捉えて、身体の炎を噴出させながら、一気に突撃した。
「うぉぉぉぉぉぉ!!!」
大男が拳を振り下ろし、シーカーも思いっきり拳を突き出した。そのまま大男の拳へと真正面から攻撃を仕掛けた。その時、火種が一つ消えた。
自分よりも遥かに大きな拳と小さな拳がぶつかり合った。シーカーの拳は大男の拳を先端から粉砕し、腕の付け根を辿るようにヒビ割れて粉々に割れた。大男が困惑する暇も与えずに、シーカーは殴りかかった勢いで固く覆われた大男の心臓部位を軽々と貫いた。
「ぐがッ……!?」
「はぁ!!!」
大男の動きが止まり、シーカーは貫いた状態で手の先に力を込めて、大男の身体の中から一気に大爆発を起こし、中央から一気に破壊されて、腕や足や体、更に基盤やチップなどがその場に飛び散った。
シーカーは爆風で後ろへと吹き飛び、背中の二つ目の火種が消滅した。シーカーは足をガクガクと震わせながら立ち、拳を上にあげた。
「か……勝っ──」
「シーカー!!」
異常なほどの大汗を搔いているシーカーはニヤリと笑いながら、死んだようにその場に倒れこんだ。すぐにアルが駆け寄り、膝に頭を乗せた。
「だ、大丈夫!?」
「いや……大丈夫だ。体力を使い過ぎたみたいだ。お前も大丈夫」
「私は全然大丈夫よ……シーカーは少し休んでいて。ちょっと調べる事が……」
アルはシーカーを横たわらせて、メサを操作し始めた。
「出られるようになっている……それに連絡も出来る」
「あいつに勝ったからか……」
「とにかくSyo君に連絡するわ。色々と調べて欲しい事があるわ」
「あぁ……頼むぜ」
Syoに連絡すると10秒もしないうちに、ニコニコしながらフィールドにすっ飛んできた。
「アルちゃん僕に何の──って何だこれ!?」
ボロボロになって倒れているシーカーと、顔に傷がついているアルの二人を見て状況が理解できなかった。すぐにシーカーの元へと駆け寄った。
「お、お前ら何があったんだ……」
「話すと長くなる……お前に色々と調べて欲しい事が……」
「ん?」
軽く状況を説明し、Syoは鑑識の如く大男の部品を一個一個丁寧に調べ始めた。すると一つのチップを見つけ、その名前を見ると突如目を尖らせた。
「SPチップだと……」
「……何?SPチップが使われていたのか」
「え?なんなのそれ?」
シーカーもそのチップに反応し、Syoはそのチップを知っているようだが、アルには全く分からなかった。
Syoは二人の前に持ってきて説明した。
「SPチップはいわゆる違法アイテムだよ。キャラクターに装備すると、通常ではあり得ない力やスキルが手に入るんだ。だからアルちゃん達はこのフィールドから出られなくなり、外部へと連絡も出来なくなったんだ。多分このチップで運営への連絡をシャットダウンさせるためだ」
「……そんなものが……」
「俺たちにとっても嫌な思い出だ」
「でも何でそんなものが」
アルが不安そうに言うと、Syoは更にもう一つあるものを拾い上げた。
「もう一つの手がかりはこれさ」
Syoはとあるディスクを拾い上げた。
「それは……」
「さぁね、転がっていたようだね。中身を確認したいからとりあえずホームに戻ろう。ここにいて、また何かに巻き込まれるかもしれないしね」
「そうね……戻りましょう。シーカーの様子もちょっとおかしいみたい」
「その事も後でじっくり聞こう……」
二人はシーカーを心配しつつ、ホームへと戻った。




