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第62話 襲い掛かる鉄の鬼神(2)

 

 大男はシーカーを見るなり、大きく拳を振り被った。

 正面からストレートのパンチが顔へと降りかかる。


 突如自分の顔よりも大きな拳が眼前に迫ってくる。だがシーカーは笑った。

 自ら敵の間合いに詰め寄り、降りかかる拳へと突っ込んでいった。

 微かに右へと顔を横に瞬時に動かしギリギリで攻撃を交わし、拳をもう一度腹へと振り上げた。


「うらぁぁぁぁぁ!!」


 先程よりも威力を上げた渾身を拳はそのまま腹に直撃し、身体全体に衝撃を走らせた。

 大男の動きは拳を振り下ろしてから動きが止まった。

 だが、シーカーは手を緩める事はなかった。その鉄壁のような腹を全力で殴り続けた。

 真っ直ぐと大男の腹を一点に集中し、壁に叩きつけても殴り続けた。

 一度距離を取り、拳を強く握りしめて巨大な炎を拳に纏った。ゆらゆらとその空間の空気に陽炎か起き、炎はシーカーを包み込んだ。


「だぁぁぁりゃぁぁぁ!!」


 そして一気に大男へと拳を突き出し、決死の表情で鉄の壁へと挑戦した。

 全身全霊に振りかぶった拳、それは野球選手がボールを投げる時以上の見えない速度だった。拳は腹に見事に直撃した。

 その瞬間、その階全域に大爆発と共に爆風が発生し、ビル全体が揺れ至る所にヒビが入る程の衝撃が走った。


「……どうだ、効いたかこのやろう……」


 シーカー自身にも今回の攻撃には自信があった。力を一気に噴出した攻撃が上手く通った感触があった。

 煙が舞う中、安心し警戒を軽く解いた。その瞬間、突如煙の中からあの大男の筋肉質な腕が出て来て、そのままシーカーの首根っこを握られた。


「……うガッ!!」

「……にぃ」


 そして握ったまま煙の中から大男の全身が現れた。その時、シーカーの目に映ったのはまさに悪に満ちた顔。笑っている、この戦いを楽しんでいる。

 必死に手足で、離させようとその腕を蹴ったり殴ったりするが、一向に離す気配がなく、むしろどんどん首を絞める力は強まっていくだけだった。更に一気に強めるのではなく、徐々に強めている。ゆっくりと苦しませて倒す気だとシーカーは確信し、必死に抵抗した。


「ふ、ふざけ……やがって……」


 刀を出し、大男の胸を出来る限り力を出し、ど突いた。だが、胸に当たった瞬間刀にヒビが入り、そのまま折れてしまった。


「!?……ぐはっ!!」


 徐々に強まる力に、シーカーの声は掠れて行き、声にならない声が雨の音にかき消されそうになった。

 大男は抵抗するシーカーを横目に、不気味な筋肉が強張った満面の笑みで首を絞める力を強めていく。


「にぃ……」

「う……ぐ……」


 次第にシーカーの抵抗する力を失ってとうとう手足の動きが止まり、ぶら下がっている状態になった。

 シーカーの意識が遠のき目の前が真っ暗になった。


「たぁぁぁ!!」


 勇ましい女性の声と共に大男の首元に一撃、蹴りが食らわされた。その蹴りがクリーンヒットしたのか、大男は悲痛な雄叫びを上げながらシーカーの首を掴む手を離した。


「うがぁぁぁぁぁぁ!!」

「うっ……」


 シーカーは地面に落ち、大男は後ろ頭を押さえながらその場に膝をついた。

 そしてシーカーが目を開けると大男の後ろに少し服が汚れているアルの姿があった。


「あ、アル……大丈夫だったか……」

「それはこっちのセリフよ……早く立って」


 優しくシーカーの肩を支えてゆっくりと起こした。

 そして動きが停止したかのように動かなくなった大男。その隙を見て、一旦近くにある鉄の柱の陰に隠れてシーカーの体力を回復アイテムで回復させた。


「何とか助かった……よく、あんな奴をぶっ飛ばせたな……」

「私はあいつの首元を、不意打ちしただけよ。正面からあんなの勝てる訳が……」

「……だが、何とかしてあいつを倒さないと……」


 そこでシーカーはとある疑問が浮かんだ。大男の腹に自分の全身全霊の力を出した攻撃をした時、一切ダメージなど効いていなかった。だが、アルが首に攻撃した時、また自分が獄炎を放って大男の全身を攻撃した時、両方とも頭を抑えて動きが止まった。

 そこでシーカーは思った。


「……なるほど、あいつの弱点は頭か」

「えっ?」

「あいつの頭にダメージを与えると、少しの間だが動きが鈍る……俺の予想だが」

「……貴方がそう言うなら信じるまでよ、少しでも希望が見えたなら、それに突っ走るわよ!!」

「あぁそうだな!!」


 2人は一気に士気を上げ、鉄の柱から一斉に飛び出てまだ動きが停止している大男目掛けて突っ走った。

 そして並行して向かう最中、シーカーのアルの方を見て指示を出した。


「お前は背後に回って頭を攻撃しろ!!俺は正面から攻撃を仕掛ける!!」

「そんなの危ないよ!!」

「危なくて上等!!やるっきゃねえからな!!」


 焦りの中にある笑いに、アルは信じるしかなかった。今のシーカーにやめろと言っても止まることはない。

 アルはそのシーカーの言葉を信じ、静かに頷いた。そして一足早く走り、大男の背後へと素早く回った。


「たぁぁぁ!!」


 背後に回ってすぐに身体を横に1回転させ、勇ましい声と共に、ヒールを履いたかかとの部分に回転を加えて威力の増した蹴りが、動きが止まっている大男の頰へと直撃した。


「ぐがッ!!」


 蹴りは今までの中で一番ダメージが大きかったのか、大男の顔が激しく横に向いた。そして頰に傷が出来、口から軽く血が流れてきた。

 今の一撃で弱点は頭だと確信した。あの大男の弱点は頭、確信したシーカーは正面より一気に攻めの構えで炎を纏った拳で攻撃を仕掛けようとする。


「ぐごぉぉぉ!!」


 苦痛の表情をしながら左手で頭を抑え、襲い掛かるシーカーへ残った右手で殴りかかる。

 だが、アルの蹴りによって受けたダメージが残っており、シーカーが走ってくる右側の床を殴り、的外れな場所へと攻撃をした。


「どこ殴ってんだよ!!」


 真っ直ぐと大男の目の前まで行き、その顔の真下で止まると同時に勢いよくジャンプして、膝を突き出して大男の顎に強烈な一撃を食らわせた。


「ぐぅッ!!」

「アル!!そこから離れろ!!どデカイ一発お見舞いしてやる!!」


 膝蹴りが直撃した大男の顔は大きく反り返った。

 そしてシーカーは大男を蹴ってそのまま後ろに跳ね帰りながら空中で一回転をした。その間に拳を握りしめ炎を一気に貯め始めた。

 空中を一回転し再びシーカーの目に大男が映った瞬間、一気に腕を突き出し手から獄炎が放たれた。


「獄炎!!!!」


 先ほどよりも力を溜め、更に相手がダメージを受けている。その状態で放たれた強烈な炎の渦は瞬く間に大男の飲み込み、大爆発が起きた。

 爆風も勿論発生し、瓦礫などを弾き飛ばした。アルは柱にしがみつき何とか耐えた。まだ空中にいたシーカーもその爆風に吹き飛ばされ、近くの柱に無理やりしがみついた。


「うわッ!!」


 煙が晴れ始めるその放った場所から地面と天井は一直線に焼け焦げているのが見えた。そして大男の姿が煙の中からシルエット越しに見え始めた。


「……倒したか……うぇ!?」


 煙の中からは頭部半分がえぐり取られて、脳みそじゃなくて機械が体内より丸見えになっていた。機械は故障しているのかパチパチと火花を散らしいる。


「機械……だと」

「うがッ……うがッ……うがッ……」


 口が痙攣しているように開いてたり閉じたりを繰り返し、地面には丸見えとなった頭から飛び出たであろう機械片や基盤などが落ちていた。更にシーカーを確認した瞬間、ゆっくりとぎこちない動きで手を伸ばし始めた。

 これにはシーカーも呆れて物も言えなかった。


「……しつこい奴だ」


 シーカーがもう一度顔を攻撃しようと構えた瞬間、突如大男が唸り声を出しながら胸を張り、身体の至る所から白い蒸気が噴き出し強風が吹き荒れた。


「な、何だ!?」


 更に辺り一面を白い蒸気に包み込まれ、そしていきなり地ならしがなり、ビルが大きく揺れ出した。


「何よこれ!?」

「……急いであいつを壊すんだ!!」


 何か危険を察知したシーカーはすぐさま片手に炎を溜め、大男に対して一気に獄炎を放った。

 炎の渦が大男を飲み込もうとした瞬間、突如大男の目が赤く光り出した。それと同時に大男を透明な球体が包み込んだ。そして獄炎をかき消した。


「何ッ、バリアだと!?」


 それはバリアだった。バリアによって獄炎は効かず、掻き消されたのだ。


「ぬおぉぉぉぉぉぉ!!」


 大男の唸り声は徐々に強まっていき、そして腕の筋肉が一回り膨張し鉄製のリストバンドが限界を超えて割れた。足の筋肉も一回り膨張し、その膨張により身体全体一回り大きくなった。

 シーカーらの細い腕とは比べものにならないほど腕は太く、シーカーらの顔さえも覆えるほどの大きだった。

 揺れが収まり大男のバリアが解かれた。大男は白い煙混じりの息を吐いていた。


「はぁ……はぁ……」

「くっ……状況が更に悪化したか」


 そしてシーカーを見つけた瞬間、思いっきり地面を凹ます程の大きく一歩を踏んだと同時にシーカーへと飛びかかった。


「うおあぁぁぁぁぁぁぁ!!」





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