第59話 新しい仲間は砂の上(2)
「遠慮なく来い……」
「行かせてもらうよ」
新新はナイフを構えたまま、真っ直ぐに直進して来た。
その顔は先程とは違い真剣そのものだった。
「たぁぁぁ!!」
オーガスターは軽々と横に避け、新新の足に自分の足を掛けて、新新はその場につまずき地面に倒れかけるも、軽く前転して再びナイフを構え直した。
「くっ……簡単には当たらないか……」
「そうだそうだ、その調子だ!!もっと来い!!」
「くそッ!!」
悔しさに包まれ、再びオーガスターの元へと向かう。そしてオーガスターの目前で何度もナイフを振りかざした。
だけど、オーガスターは身軽に体を横に避けまくった。全ての攻撃を読んでいるように、避けていた。
新新はそのまま拳銃を取り出し、眼前で銃撃を放った。
「あぶねっ!!」
撃つ直前で避けて、頰ギリギリで横を通り過ぎた。
だが、オーガスターは至近距離での銃声に耳がキーーンと鳴り響き、耳を抑え苦しみ悶えた。
「うぅぅぅ……耳が……」
「隙あり!!」
そんなオーガスターは隙だらけだった。新新はすぐさまナイフへと持ち替えて、すぐに攻撃へと移し替えた。
だが、耳が軽く麻痺しているオーガスターはまだ治っていないが、すぐに反応して攻撃を避けて
後ろに一回転し距離を取った。そしてやっと耳が少し治って来て新新に言い放った。
「そんなもんじゃダメだ!!スナイパーで獲物を狙う時のように集中するんだ!!」
「なら……それッ!!」
そう言うと手榴弾を取り出して、多少時間を置いてオーガスターへと投げつけた。
「おいおい……マジかよ」
オーガスターは少し呆れるが動く事はせず、手榴弾は地面に落ちると同時にタイミングよく大爆発を起こした。
爆風が舞い、オーガスターは砂にまみれて辺り一面の視界が封じられた。
「なるほど視界を封じる……為の爆弾か」
オーガスターは思いっきりジャンプした。そのジャンプで砂の中から抜けて、空中10mへと飛んだ。そして限界まで飛ぶと、ゆっくりと地上へと落ちていく。
その最中、新新の居場所を探る。だが様々な色が混じった虹の砂から新新はすぐ発見出来ると思ったが、全く見つからなかった。
「ふっ……砂の中に隠れたか」
そして砂の上に綺麗に着地し、辺りを見渡した。
「さぁ何処から来るかな〜」
新新は砂の中に隠れて、何処からともなく狙っていた。オーガスターの足を狙っていた。確実に狙いを定め撃つ。今度は必ず狙うと……
そして一呼吸をした。ゆっくりと標準を合わせた。
「当てる……当てるんだ……」
引き金を引こうとした瞬間、フィールドに軽い風が吹き砂が舞い上がった。
オーガスターの姿は見える状態でスナイパーから姿が捉えられている。
「な、何!?」
オーガスターの目に砂が入り、視界が遮られた。
新新はそれを見逃さなかった。そのフィールドが起こした奇跡と、念密なる標準が重なり合った。
「今だ!!」
引き金を引いた。
スナイパーから銃弾が飛び出し、オーガスターへと一直線に飛んで行った。
オーガスター自身も銃声が聞こえて、すぐさま空へとジャンプしてまた銃撃を避けた。だがジャンプした瞬間、砂の中からゆらりとスナイパーを構えた新新が現れた。
「予想通り……狙う」
先程ジャンプした高さを予測して、その場所を狙った。
「くっ……こんな時に砂が……」
「今だ!!」
銃口も標準も完全にオーガスターを捉えた。
そして再び一呼吸置いて放った。
オーガスターは目を擦り、やっと見えるようになった。だが、その時にはその銃声が聞こえていた。
「狙い通りって訳か……うぐッ!!」
その銃弾は当たった。それも足の付け根へと当たった。
オーガスターにヒットし、そのまま逆さに地面へと落下した。
シーカー達もそれには驚いた。
「当たった!?」
シーカーはこの状況を簡単に説明した。
「なるほど、あの手榴弾を投げてオーガスターがジャンプした間にフィールドに風を起こす爆弾、倉風弾を地面にセットして撃つ前に倉風弾で風を起こし、オーガスターの目を封じた。そして銃を撃ち、オーガスターの逃げ道を上だけに絞った。さっきジャンプした高さを計算して目が治る前に足元を撃つ……」
「でもオーガスターには鬼ノ目が」
「何か訳がありそうだな」
新新は倒れているオーガスターの元へと寄った。
だけどオーガスターは銃撃で攻撃による負傷で足から血が流れているが、頭を掻きながら呑気に笑っていた。
「あいたたた……こりゃあ痛いなぁ」
「よく笑っていられるな」
拳銃をオーガスターの頭に突きつける新新。だが、オーガスターは突きつけられてもなお笑っていた。
「いやぁ……今のは参ったな。予想外な攻撃だったぜ」
「少しは効いたか……私の攻撃」
「あぁ結構効いたぜ、今のは……今回はお前の勝ちだ」
「はっ?」
いきなりの敗北宣言に呆気に取られる新新。
「で、でも……まだ」
「俺はただお前の信念を知りたかった。やればちゃんと出来るじゃないか。真っ直ぐ向き合えば、キチンとした戦いが出来る。それが観たかった。いやぁ油断してたぜ。そんなに強い力があるなら、正面から敵にぶつかっても勝てるさ」
「……良いのか」
「あ?」
「仲間になっても良いのか……」
「あれ?仲間になる気は無かったんじゃないのかぁ……?」
オーガスターはいやらしい顔をしながら、軽く意地悪な事を言う。
「い、いや……それは」
少し躊躇いを見せる新新。
たが、新新は思いっきりオーガスターの前で姿勢良く頭を下げた。
「わ、私を……仲間に……!!」
「あぁ俺はいいさ。他の奴らも良いって言うぜ。仲間は1人でも多い方がいい。歓迎する、これからはみんながお前の仲間だ」
「……」
そう言うとオーガスターは新新へと歓迎の握手を求め、手を差し伸ばした。
新新は手を震わせ、顔を隠しながら、思いっきり握手に応じた。何度も何度も手を握りしめた。その新新の顔からは涙が流れていた。
「おいおい泣くなよ……こんな事で」
「な、仲間が出来たの……初めてで、とっても嬉しくて」
「お前の他にもここにはいないが女子が2人いるから、仲良くなるといいさ」
そして戦いが終わり、メルクリやシーカー達が降りてきた。
メルクリがニコニコし、拍手しながら2人の前に立った。
「いや〜良い勝負だったよぉ〜」
「ふん……騙されていた癖によぉ」
「でも、強い仲間が増えて良かったじゃない」
「都合のいい事言いやがって……」
そしてメルクリは今度は新新へと話した。
「新新さん、仲間になってありがとう。約束通り、この2人がとっても強い武器や強い銃弾などを作ってくれるから、いつでも頼っていいよ」
そう言うとその2人を手で紹介した。マッキーとSyoだった。2人はそんなことを言われてびっくり仰天顔になった。
「はぁ!?そんな事約束したのかぁ!?」
「君達には言ってなかったね。君達、そうゆうの得意だよね?これも敵を倒すためだよ、頼んだよ!!」
親指立てて笑顔で言うメルクリに、2人はお互いの顔を合わせて深くため息をついた。
「マジかよ……はぁ」
「よろしくな二人共!!素材とか、一緒に探すからさぁ!!」
早速2人に楽しそうに絡む新新。
そしてシーカーは真剣な表情でオーガスターへと耳打ちした。
「ここ最近、世界的な決闘ランキングの上位プレイヤーがとあるプレイヤーに倒されている。それもやられた全員、データを消されていた」
「どうゆう事だ……まさか」
「あぁ仮面の男だ。お前も気をつけた方が良いぞ。奴はさっきの卑怯な戦法とはまるで違う。骸帝と関わりがあるかは不明だが、油断するな」
オーガスターは鼻で笑った。
「ふん、狙われたら勝つまでだ。この力でな」
「……あぁ」
その大いなる自信を信じたいシーカーだが、あの強さが現在も更に強くなっているに違いない。それにまた自分の前に現れるかも知れない。
仲間であるオーガスターもその狙われる対象になっているに違いない。
シーカーもまたいつか戦いたい。そう思っていた。




