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第58話 新しい仲間は砂の上

 

「さぁ行くわよ。隠れて攻撃するだけが、あたしじゃないわよ」

「あぁ、俺も肉弾戦の方が好みだ」


 少しだけ表情が柔らかくなり、軽く微笑む新新。ナイフを構え、戦闘態勢に入った。

 そしてオーガスターの顔も軽くニヒルな笑みを浮かべた。

 マッキーはこっそりとメサで新新の戦歴を見ていた。


「ん?」

「どうした?」

「新新ってやつの戦歴見たんだけど、全然戦った形跡がない」

「決闘モードをそんなにしてないって事か……まっ、やってなくても強い奴はいっぱいいるからな」

「あっ、一回だけ戦った形跡が」


 そこに書いてあったのは。


「0勝1敗……」

「……」


 シーカーはその勝敗を少し考え始めた。

 そして新新は突如戦闘態勢を解き、ポケットからコインを取り出した。コインを親指でオーガスターの元へと弾き飛ばした。


「ん?コイン?」


 そのコインを手に取った。一瞬だが、そのコインに目を取られた。そしてすぐに顔を戻すと、その場にはもう新新は居なかった。

 すると背後から力強く腕で首を絞められ、ナイフを首スレスレに突きつけられた。

 だが、オーガスターは冷静だった。


「またまた引っかかってしまったぜ」

「戦場にはスタート合図なんてないのよ」

「それにしても気配もなく背後に立つとは、あんたモノホンの暗殺者か何かか?」

「昔っからポコペンではあまりの気配の感じなささに影のお銀とまで言われているのよ。そんなあたしに勝てるとでも……」


 ベラベラと喋る新新に唖然とした顔で暑いフィールドの筈なのに、その場に凍りついていた。


「お、お銀?ポコペン?しょ、庶民派暗殺者なんだな……」

「はっ!?」


 ベラベラと喋り過ぎたと気づいた新新は途端に顔を赤くして俯いて黙り込んだ。そして首を絞める力を弱まり、隙が出来た。

 オーガスターはそれを見逃さずに、軽く新新の腹に肘をぶつけた。


「隙ありッ!!」

「うッ」


 新新は軽く怯み、手からナイフを落とした。

 そしてオーガスターは新新の足を軽く蹴払い、宙に舞ってそのまま地面に倒れた。


「うっ……」

「おいおい、自分の過去を言っといて自分で恥ずかしがるなよ」

「う、うるさい!!」


 余裕の表情で見下すオーガスターに、新新はすぐに銃を取り出し二発撃ち込んだ。だが、オーガスターはもちろん顔を横に振り二発とも避けた。


「攻めてこいよ!!」

「くっ……」


 新新は悔しそうに歯を食いしばり、地面に落ち熱々になったダガーナイフを熱さを苦とせず、思いっきり握りしめてオーガスターに飛びかかった。


「はぁッ!!」


 全力を込めてオーガスターの顔目掛けてナイフを突いた。だがオーガスターは微動だにせず、目の直前で右指二本で軽々と受け止められた。新新は必死に離そうとするが、ナイフは引き抜く事も出来ず、微動だにしなかった。


「な、何で……クソッ!!」


 右手でナイフを掴んだまま左手で腰に掛けてある拳銃をすぐさま取り、引き金を引いた瞬間、オーガスターの右足が蹴り上げて発泡したと同時に拳銃を弾き飛ばされた。銃撃はオーガスターの頰を掠った。


「……嘘だろ……」

「はッ!!」


 完全に攻撃を読まれ、また銃撃をよけられた新新。暑いフィールドだが身体をふるわせて、怖気づきナイフを離してしまった。すると、オーガスターはそのナイフを新新に向けて投げた。


「……」


 ナイフは新新の頰を掠って地面に刺さった。

 新新の顔は青ざめ、その場に尻餅をついて倒れた。


「あ……あぁ……」


 完全に戦意がなくなったのがオーガスターには察し、あえて背を向けメルクリの方を見て大声で叫んだ。


「おい、メルクリ!!聞こえるか!!」

「あぁ聞こえるよ〜」

「本当にお前がコイツを連れてきたのか!!」

「いや〜それは……」

「お前が連れてきたのだとすれば、とんだ期待外れだ。お前はシーカーに勝った。そんなお前が連れて来た奴がこんなにもんか!!こんなにも腑抜けた奴か!!」

「いやぁ実は……」


 少し後ろめたそうに言うメルクリだが、オーガスターの真剣な表情に押し負けて、その訳を話し始めた。


 ーーーーーーーーーーーーーー


 いやぁ僕は彼女を連れて行くつもりは無かったんだけどね。

 でも先日に……


「ふんふふんふ〜」


 虹のビーチを鼻歌歌いながら散歩していたら、木の陰に隠れてこちらを見るプレイヤーが居て……


「……誰かな、そこにいるの」

「くっ……ばれたか」

「誰かな?何か用でも?」

「……」


 少し両手を擦り、もじもじしながら彼女は言った。


「仲間に入れて欲しいと思って……」

「ふ〜ん仲間ね……」


 僕は仲間が増えると良いと思ってすぐにOKをだした。まっ、みんなを呼んで適正か聞こうとして得意フィールドを聞き、 準備があるからその間に呼んでこいと言われて僕は君を呼んだと言う事だよ。


 ーーーーーーーーーーーーーー



 話を聞き終わると再び振り返って、腰を抜かしている新新へと話しかけた。


「仲間になる事自由だ。お前はさっき戦場に戦いの合図はないと言ったが、1つ言うがもし知らない場所にいきなり連れてかれて、バトルするとなったらどうする?」

「どうするって……」

「合図がないなら準備する暇もく、戦いはすぐに起きる。そんな時、お前はどうする」

「……」

「マッキーからの奴から送られてきたお前のランク戦の戦歴を見た」

「えっ」


 メサから新新へと戦歴を見せた。


「0勝1敗……1回の負けで諦めたのか。ランク戦を」

「諦めた……確かに諦めたね。戦いで傷ついた心って簡単に癒ないんだよ」


 ーーーーーーーーーーーーーー


 1回の戦い。その戦いが新新の心を変えた。


 その1回とは、初めて挑んだランク戦だった。

 まだ始めて間もない新新はとりあえずランク戦へと挑んだ。

 そこでの戦いが新新の心を変えた。

 武器も強いのがなく、でも勝ってこそのゲームだと挑んだ。


 だが、勝敗は明らかだった。

 その相手は隠れながら、ジワジワと遠距離から攻撃を仕掛けて、事あるごとに挑発行為をしてきた。


 そして新新はそんな戦法に手も足も出ず、負けた。

 負けた後も挑発的なメッセージを何度も送られた。それからランク戦から離れて、1人で孤独に戦っていた。

 スナイパーライフルを持ち、敵が来るように挑発してそのフィールドあらかじめ武器を至る所に仕掛けた。


 そしてその負けたプレイヤーを呼び出して何度も倒した。

 それからと言うもの色んな場所に隠れては、遠くから奇襲のように攻撃して、仕掛けてある爆弾などで攻めるといった戦法を取るようになった。その銃捌きは多くのプレイヤーの間に知れ渡り、その腕を買われてフレンド登録をしてくるプレイヤー達がいたが、一切耳を傾けずに黙々と倒していた。


 ーーーーーーーーーーーーーー


「確かにそんな戦法もありだ、隠れながらも……俺が昔戦った相手もそうだった。逃げて遠くから攻撃し、近づいたら逃げる。それを繰り返して戦っていた。俺には全然効かず、そして普通に勝った。その時の相手は、とても悔しがっていた。"勝てない自分に何が足りないのか、勝てないのは自分の弱さ"と叫んでいた。そんな奴にもプライドはあった。だが前のお前にはプライドがなく、ただ目標がない戦いを永遠と続けているだけにすぎん」

「前……ってどうゆうことよ

「何故自分から志願してきた?」

「最近よく掲示板で見た……骸帝という奴が来るから仲間を集めている奴らがいると、ネットでは馬鹿にされていた。そんなデマを信じる奴はいないと、あたしも最初は信じてはいなかった。ここに来たのも遊び感覚で、でもあんたの顔は本気だった。疑いのない目、真剣な顔だった……」


 そのことを聞き、多少呆れ返ったオーガスターら。だが、オーガスターは手を差し伸ばして新新を立たせた。


「えっ……」

「なら……その根性を叩き直してやるさ!!俺は卑怯な奴が嫌いだ!!正面からドーンと来い!!その戦いっぷりで自分で決めろ!!自分らしい戦い方でな!!」


 そう言いながら自分の胸を思いっきり叩いた。その音は新新の心にまで響いた。


「……分かった、この戦いで決めてやる……あんたらを信じて!!」


 そう言いながら先ほどまでとは違い、本気で睨んでいた。そして拳銃とナイフを構えた。オーガスターはその姿にニヤリと微笑んだ。

 先程とは違う表情で卑怯な戦いをしないと分かった。

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