第55話 新しい仲間は砂の中?
アルの中の人こと、灯と出会って数日が経った。着々と骸帝復活の時が近づく中、唐突にメルクリから召集がかかった。
アルは稽古のため不在、アモレはその付き添いで呼ばれた。
つまり今いるのはシーカー、Syo、オーガスター、マッキー、メルクリの男5人だった。
メルクリを除く4人はとあるところに呼ばれた。
雲ひとつない晴天、眩いほど強烈な太陽が4人を照らしていた。
「あち〜なぁ……」
「何でこんな所に……」
シーカーとSyoが遠くぼやく。オーガスターは暑さでイラつきしゃがみこみ、アロハシャツを着ているマッキーはサングラスと日傘を片手にいた。
4人がいる場所とは、アッツアツの虹の砂漠のど真ん中だった。どこを見ても同じ風景、生物や植物も全くなく、彷徨ったら一貫の終わりだろう。
綺麗な色とりどりの砂があり、とても幻想的な風景だが、遠くを見ると空間がゆらゆらと陽炎により歪んでいた。
せっかく呼ばれて全然現れないメルクリにオーガスターは苛立ちを隠せなかった。
「せっかく呼んだのにいつまで待たせんだよ」
「何で僕まで呼ばれたんだろ……」
「きちんと暑さ対策してる奴がよく言うぜ」
マッキーがぼやき、それを軽くツッコむオーガスター。太陽に照らし続ける内に、全員汗がダラダラ流れ始めた。
すると、4人の目の前に麦わら帽子を被った海パン姿のメルクリが現れた。
「やぁみんな‼︎」
「やぁみんなじゃねぇよ‼︎こんなとこに呼び出しやがってよ‼︎」
オーガスターが前に出て、メルクリに食いかかる。するとメルクリは手慣れた様子でオーガスターに手をかざす。そして手からひんやりする風と共に氷の結晶をオーガスターの顔に送った。
「涼しいかい?」
「……う、うん」
マイペースなメルクリに戸惑うオーガスター。こんな奴でも相当の強さを持っている。実力は認めているが、まだ慣れない部分が多く、謎も多い。
とにかく今は怒りとか抑えて聞く。
「ところで、何の用だ?」
「そうそう、君達が仲間を集めているのに、僕が集めてないとでも思ってたかい?」
「あぁ十分に思ってたよ」
そしてメルクリは片手を大きく横に広げて意気揚々に声高らかに紹介した。
「紹介しよう‼︎新しい仲間を‼︎これが、新新さんだ‼︎」
「シンシン?」
全員が声を上げて、周りを見渡すがどこにも新新という名の仲間は何処にも居なかった。返事なども聞こえる事なく、砂がさら〜と靡く音だけが聞こえて来た。
「ど、何処にいるんだ?」
「もうすぐで出て来るよ」
「もうすぐ?」
一切現れず、全員が唖然としていると突如、この地全体に大きな地ならしが響き渡り、地面が揺れ始めた。
「うわっ⁉︎何だ何だ⁉︎」
Syoが地面にしゃがみこみ頭を伏せると、メルクリの背後の砂が徐々に盛り上がって来る。
シーカーとオーガスターはその土の盛り上がりを見て少しばかり身構えた。
「土の中からとは……どえらい奴だな」
と身構える一方で期待していると、盛り上がって来た地中の中から謎の黒い2本の触覚が現れた。
Syoが口をあんぐりと開けて、メルクリへと指差した。
「お、おい‼︎後ろ‼︎」
「えっ?」
砂を撒き散らしながら、地中から飛び出した来たのは、体長20mほどもあるトレーズ・デスワームだった。
「で、デスワーム⁉︎」
「そうか、デスワームの住処だったのか、さっきの地ならしも……」
シーカーが言う通り、デスワームが現れる時、大きな地ならしがフィールド全体に響き渡り、敵がいる場所に現れるのだ。
デスワームはシーカー達に威嚇をしており、シーカーとオーガスターが戦おうと戦闘態勢に入り、Syoは腰を抜かしていた。
だが、等のメルクリはデスワームの影に覆われて今にも食われそうな感じなのに、呑気にニコニコとしていた。オーガスターはすぐにメルクリに向かって叫んだ。
「何呑気にニコニコしてんだよ‼︎」
「大丈夫、大丈夫‼︎」
そうメルクリが笑いながら言ってると、デスワームは大きく口を開け、一気に獰猛な牙をキラリと見せ、メルクリを飲み込もうと襲いかかった。
デスワームの口がメルクリの頭を飲み込もうとした瞬間、どこからともなく一発の銃声がフィールドに響き渡った。
「⁉︎」
「銃声⁉︎」
銃声が響き渡り、シーカー達がデスワームを注目した。デスワームはメルクリの頭を丸呑みにしようとしたところで動きが止まり、そのままゆっくりと横に傾き、地面に倒れこんだ。銃撃はデスワームの脳天を綺麗に一発貫いていた。
シーカーは静かにメルクリに聞く。
「今のは……」
「今のが、新しい仲間こと新新さんだよ」
「なるほど狙撃手か」
オーガスターは納得しつつ1歩前に出て、大きく叫んだ。
「おい‼︎新新とやら‼︎出て来い‼︎」
オーガスターの呼びかけに一切応じる様子はなく、何も起きなかった。
「おい‼︎出て来い‼︎」
もう一度言うが、もちろん反応はなかった。するとメルクリがそっと言う。
「新新さんは人前に出てくるのが好きじゃないみたいだね」
「何だよそれ……」
「ちっ……なら見えなき仲間とやらを俺がいっちょ見つけ出してやる‼︎」
オーガスターは腕をパキパキと鳴らし、空に向かって大きく口を開けて叫んだ。
「おい‼︎新新とやら‼︎俺と一発勝負しろ‼︎怖気付いて出てこないのか‼︎」
挑発して新新が出て来る事を呼びかけるオーガスター。静かな砂漠にオーガスターの声が響き渡るが、返事などは一切帰っては来なかった。
するとメルクリが何処からともなく新新の何かを感じ取りすぐに前に出で、空に向かって大声を出した。
「新新さんストップストップ‼︎まだ殺っちゃダメだよ‼︎僕が合図してからだ‼︎」
「……今、何か感じ取ったのか?」
まるで新新の居場所が分かってるかのように言うメルクリに驚くオーガスターは、メルクリに聞いた。
そしてメルクリは平然とした顔で答えた。
「あぁ新新さんは君と戦う気があるようだね。どこからか一瞬だけ殺気を感じたよ。君の頭を狙っていた。彼は挑発されるのが一番嫌いなようでね」
「……何でそんな事が分かる……」
「戦士としての感って奴かな」
「ちっ……本当に変わった奴だぜ」
そしてメルクリはシーカーとSyoの元に戻った。そして腕を組んで周りを見渡す真剣な表情のシーカーはメルクリに問いかけた。
「いいのか?こんな事させといて」
「大丈夫だよ、一度喧嘩させとけば獰猛な獣も落ち着くもんだから」
「……あぁそうかもな」
多少、そんなもんなのか?と思ったシーカーだが、満面の笑みで言うメルクリにとにかくうなづくしかなかった。
「それと、俺たちはこんな暑い中ただ呆然と立って見えない仲間との戦いを見なくちゃ行けないのか?」
「それなら任せてよ」
メルクリがメサを操作し、とあるアイテムを選択すると、3人が立っている場所を透明な球体が囲み込み、そのまま宙に浮き始め、戦いを高みの見物とするようだ。
「球体に包まれても中は暑いなぁ〜」
「大丈夫、まさかせてよ」
シーカーが文句を言うとメルクリは手を出して、そこから氷の結晶混じりの涼しい風を出した。
「ふぅ〜生き返るぜ」
2人からは汗が流れ落ちて、幸せそうに自分達の服を仰ぎながら身体を潤っていた。
そしてメルクリはオーガスターの様子を伺っていた。オーガスターは冷静に周りを見渡しながら、敵の居場所を探っていた。
「オーガスター君始めても大丈夫か〜い‼︎」
「大丈夫だ‼︎いつでもいいぞ‼︎」
オーガスターの返事をいただき、もう一度周りを見渡し、そして珍しく声を張って言った。
「なら、勝負……始め‼︎」
「さぁ、新新‼︎どこからでもかかってこい‼︎」
どこに潜んでいるか分からない味方という名の敵。オーガスターは余裕の表情で周りを見渡しながら、戦闘の構えを取る。
果たして、どっちが勝利を収めるのか?
そして新新の腕前とは……




