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第53話 理解する気持ち(2)

 

 悠斗と灯の2人は水族館へと行く事になった。

 太陽が悠斗を照らす中、緊張があまり解けず、中々灯に顔を合わせる事なく、水族館へと向かう。

 麦わら帽子を被っている灯は普通に悠斗へと話し掛けていた。


「大丈夫?熱中症?」

「うん……大丈夫」

「なら、いいけど」


 本心、まともに女性と接したのは、親と数歳違いの従姉妹とおばあちゃん、そして近所のおばちゃんくらいとしか喋った事がなく、女子生徒と接したのは消しゴムを拾ってもらった時の"ありがとう"か前からプリントを渡された時の"ありがとう"くらいしかないのだ。


 そして水族館へと行き、チケットを買おうと受け付のおばさんに灯が話しかけた。


「チケット高校生2枚下さい〜‼︎」

「20歳以下の男女2人ならカップル割りがありますよ〜」

「ふぇ⁉︎」


 悠斗は思いっきり裏返った声が飛び出た。すぐに受付の看板を見ると、"20歳以下の男女カップルは20歳以下だと証明する物を見せたら割引‼︎"とデカデカと書かれていた。


「私学生証あるけど、悠斗君ある?」

「……うん、あるよ。……はい」


 2人は受付のおばさんに学生証と割引代を渡して、高校生だと証明した。

 そしておばさんはニコニコと微笑みながらチケットと学生証を渡した。


「はい2人共、楽しいデートを」

「ありがとうございます‼︎」

「は、はいぃ‼︎」


 多少顔を赤らめながらも笑顔で受け取る灯と完全にテンパる悠斗。2人は並行して水族館へと向かって行った。


 そして後ろからついてくるサングラスの将吾。将吾も受付のおばさんにコソコソと怪しそうな素振りを見せながら小声でチケットを頼むんだ。

 側から見てば完全に不審者にしか見えない。


「すいません……高校生のチケット1枚」

「……あ、はい。なら学生証を……」


 完全に怪しんでいるおばさん。そして将吾は悠斗達の方をチラチラと見ながら財布から学生証を探す。


「あれ?あれれ?ないぞ学生証?」

「……」

「学生証がないんですけど……」

「提示する物がなければ大人料金になりますね。大人料金は2500円ですね」

「2500円⁉︎……やべ、お金ねぇ……」


 高校生と分かれば1500円になるが、今の財布には2000円しかなかったのだ。

 だが、ここで入れなければ悠斗達を追うことは出来ない。そこで将吾は「そこをなんとか‼︎本当に高校生なんですよ‼︎高校生なんですよ‼︎」とおばさんに頼み込んだ。


「ダメですよ‼︎提示する物がないならダメ‼︎」

「お願いよ‼︎そうしないと僕ぅ」


 両手を合わせて、必死におばさんに頼み込む。だが、流石に気持ち悪がって、おばさんはとあるところに連絡を入れた。


「警備員さん。ここに変な男が喚き散らしているんですが……」

「えっ⁉︎俺⁉︎」


 そして何処からともなく、警棒を持った警備員2人が将吾を両脇を抱えて何処かへと連れて行った。


「ちょっと話を聞いてよ‼︎警備員さんもおば様も‼︎ちょっとぉぉぉ‼︎」


 ーーーーーーーーーーーーーーー


 将吾が色々と起きている裏で2人は水族館の中へと入った。まず2人は、サメやマンボウなどの大量の海の生物が大きめの円状の水槽を眺めていた。灯は特に、壁に両手を貼り付けて口をあんぐりと開けながら至る所を見ていた。


「わぁ〜綺麗〜」


 悠斗も子供のようにはしゃぐ灯を見つつ、同じくサメを目で追いながら、見とれていた。

 そして悠斗は勇気を持って灯に聞いた。


「水族館、好きなの?」


 すると、灯は浮かない顔になり、その水槽を見つめたままとある事を口走った。


「……私、水族館来るの初めてなんだ」

「えっ?」


 悠斗はその言葉に反応し、少々驚きながらも灯の方を見て言った。


「……来た事ないの?遠足とか家族とかで」

「うん……私、友達とか居なくて、集団行動とか苦手で。それに家族ともそんなに仲良くなくて……」

「何か……あったの?」

「まぁ色々とね……」


 そう落ち込んだ風に言った灯だが、すぐにさっきの笑顔に戻って悠斗の手を引っ張っりだした。


「さっ‼︎次行きましょう‼︎」

「……うん」


 悠斗は色々と気になるところがあるが、これ以上追及せずに、灯について行った。

 そしてどんどん進み熱帯魚、川の魚、深海コーナーなど多くの水槽を見た。道中も灯はさっきの暗い顔には一度もならず、楽しそうに水槽を見ては、何かと悠斗を引っ張って行った。


 そしてイルカショーの時間となり、灯はもちろん行くと言った。野外でやるショーは人も多く、満員にも近い量だった。何とか上の席に空いている場所を見つけて2人は座った。

 イルカショーが始まり、イルカが輪っか潜りをすると歓声が上がり、灯自身も暑さを忘れるように喜んでいた。そして再び浮かない顔になり、悠斗に呟いた。


「私、イルカ大好きなんだ」

「……何で?」

「アニメとか漫で人を助けたり、サメから仲間を助けたりしてるのを見て、好きになったんだ。……海の中で仲間達と自由に生きている。ちょっと羨ましいかもね」

「……」


 悠斗が言葉に詰まると、また笑顔に戻った。


「……なーんてね。イルカショーを楽しみましょう‼︎」

「うん」


 その頃……


「だーかーら‼︎俺は学生証はないが、高校生なんだよ‼︎サングラス外してるでしょうが‼︎」

「では何故コソコソしていたんだ?」


 警備室に連れてかれた将吾は刑事ドラマでありそうな取調室の中で警備員数名に囲まれながら説明していた。


「いや……それは……友達を追いかけていたと言うか……」

「ストーカー犯はいつもそう言うんだ‼︎やはりストーカーだったか‼︎」

「いや違うってぇー‼︎」


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