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第17話 誰よりも早く深海へ

 

「まずは情報集めだ。Syo、もう一度動画を見せてくれ!!」

「お、おう」


 動画を真剣に見直すシーカー。その巨大な生物の反応が出た所で動画を止めた。それをアルが聞く。


「どうしたの?」

「いや……この映像の水深何mかなって……」

「ちょっと待ってろ、調べてやる!!」


 Syoは任せろと言わんばかりに、キーボードを叩きながら大急ぎで調べ始めた。そして調べて行くと驚きの情報が出た。


「水深約1万mだね……映像に出て来た生物も深海の生物だった。1つ分かるのはその生物は肉食系だって事だ」

「他に何か情報とかないか」

「待ってろ……」


 更にSyoは図鑑などを調べて肉食の大型生物の情報を集めた。古代生物、現代の生物、またはモンスター……だが体長30mクラスのメガロドンを超える海の生物はそうはいなかった。


「全くないな……メガロドンを倒したほどの大型生物なんて」


 するとアルは思いついた事を2人に言った。


「新種って可能性は?」

「……誰も発見してないレア生物、または新投入された生物の可能性もあるね……」

「俺はどっちでもいいけどね」


 そしてシーカーはとある事を思いつき、2人の顔を見て勢いよく言う。


「2人とも潜水艇を買うぞ!!」

「はぁ!?いきなりどうしたんだ!?」

「善は急げだ!!let's go!!」

「えぇ……」


 2人はシーカーの突然の発言に呆気に取られ、何も聞かされないまま、シーカーに無理矢理ある場所に連れてかれた。

 そこはAlterFrontier内の多くの乗り物が販売されている超大型デパート。青黒い空間の中に、円状のガラスの中から映されている映像の乗り物達が個々に飾られており、シーカーが乗っているダッシュボードからダブルビークルなど基本的な乗り物も売っている。潜水艇やアルが使っている空飛ぶ靴ティザエアーなどの特殊な乗り物も売っている。

 またその乗り物の改造パーツや他の必要なアイテムなどが売っている。そこにシーカー達は来た。この時間はあまりも人は少なく、1人遊園地に来た子供のような顔で走って探し回っている。


「うわぁ〜どれもいいな〜!!」


 1人は子供のようにはしゃいでいるシーカーに対し、Syoはアルに小声で言う。


「こんな事に付き合わせちゃってごめんね……」


 Syoが申し訳なさそうに言うと、アルは微笑みながら言う。


「……いいえ、私もあんな元気な姿を観るとこっちまで元気が出ちゃう。私もあんなに元気な女の子だったらなぁ〜って思っちゃう」

「元気が取り柄だからな、あいつは……」


昔から一緒にいるSyoだからこそ、シーカーの事がよく分かっている。元気は多くの人へと移っていく。伝染していくように。


「おーい!!こっちに来〜い!!あったぞ!!」


 遠くから手を振ってアル達を呼び寄せるシーカー。アルとSyoはやれやれと思いながら、歩いてシーカーの元に行く。その最中Syoはシーカーに問いかけた。


「何でそんなに急ぐんだ?」

「数時間後以内にはあの潜水艇を破壊されたやつが掲示板か何かでその巨大生物の事を言うかもしれない。そしたら馬鹿みたいなハンター共が一気に深海に来て、探すどころじゃなくなるからな!!」

「なるほどね」


 そしてシーカーは潜水艦と潜水艇のコーナーで止まった。何種類もの大きな潜水艦や小さな潜水艇が何十種類も展示されており、補助アイテムや海用のアイテムなど多く取り揃えてある。

 シーカーはその潜水艇の中からじっくりとプロの目をして品定めしている。Syoも色んな潜水艇を見ながらシーカーに聞く。


「魚雷付き潜水艇に、高圧力潜水艇……いっぱいあるなぁ……なぁ、シーカーどれ買うんだ!!」

「とりあえず魚雷と探知機は必要だな、それに3人は乗れるものじゃないとな」

「えっ?私も?」


 3人と聞き自分も入っている事に気づき、驚きのあまり自分を指差すアル。潜水艇を見つめながらシーカーは言う。


「当たり前だ、暇なんだろ?」

「……え、まぁ、暇……だけど」

「なら決定だ!!」

「……」


 何か言わせる暇を与える事なく、笑顔のシーカーによる決定に、アルは赤面になり静かに頷いた。

 そしてシーカーは目的の潜水艇を見つけ、何のためらいもなく展示されているガラスの前にある操作盤で購入した。


「まずはこれだな!!それと……」


 更にシーカーは潜水艇・潜水艦コーナーの隣に補助アイテムのコーナーがあり、そのとあるアイテムに目が釘付けになった。


「これは……買おう!!」


 見た瞬間、また何のためらいもなく操作盤で即購入した。更に他の補助アイテムもどんどん購入していった。流石のSyoとアルもそんなシーカーに呆れ返りながら問いかけた。


「そんなに買って大丈夫なのか?何G使ってと思ってるんだ?」

「いっぱいあるとは言え使いすぎは禁物よ」

「えぇっと……」


 2人の不安を他所にシーカーは呑気に指で数え始め、そして堂々とSyoとアルに言い放った。


「約1000万Gは吹き飛んだな」

「い、1000万Gも!?」


 昨夜一生懸命稼いだ1000万Gもの大金が一瞬で消滅してしまった。それがシーカーが稼いだものとはいえSyoは口をあんぐりと開けて呆然とした。シーカーにそんなSyoにわざとらしい優しさを見せながら言う。


「そんな事言うなよ!!その誰も知らない生物の正体を俺達は拝めるんだぜぇ……これ以上の幸せがあるかぁ?ネッシーやビックフットみたいに存在がはっきりとしていない生物とは違うんだぜぇ?」

「……」


 手がプルプルと震え拳を握りしめるSyo。そしてシーカーはしめしめと巧みに畳み掛けた。


「お前も見たいだろぉ?そうゆうの好きなのは俺が一番よく知っている……お前が未確認生物マニアで、学校で未確認生物研究会にも入っている事を」

「う……」


 図星のようだ。確かにSyoは学校で未確認生物の事を話し合ったり、不確定な生物情報を話したりと、楽しくやっている研究会らしい。因みにこのゲームでも、未確認生物ギルドなるギルドへと入っているらしい。

明らかに額から汗が何滴も流れてきた。それを確認したシーカーはいやらしく言う。


「ゲームとはいえお前は見たいだろぉ?これは1000万G以上ある価値の事だぜ!?」

「う……うぅ……」

「何やってるのよ、この2人は……」


 2人の謎のやり取りに呆れ返るアル、そして段々身体が震え上がるSyo。UMAマニアとして本当は、あの巨大生物が気になってしょうがないようだ。そしてシーカーは最後に問いかけた。


「さぁ、やるか、やらないか!!どっちだ!!


 シーカーの問いかけにSyoは渋々頭を下げた。


「……や、やります」


その頭を下げたSyoを見下すようにニヤリと微笑むシーカーであった。


「それでいい!!」

「男って分かんないものねぇ……」


 ーーーーーーーーーーーーーー


 そしてシーカーは体長7mもある3人用の横に長い球体型の黄色で、2本のアーム付き小型潜水艇をビーチの海に浮かべて、全員乗ろうとしている。


「Syo!!ノートパソコンも持って来いよ!!」

「OK!!」


 そう言いながらSyoはウキウキとした顔で、家まで颯爽に取りに戻った。

 だが、アルは深海の暗さに怖がり、多少渋っている。シーカーにもじもじしながら聞く。


「やっぱり私もいかないと……ダメ?」

「怖いのはわかるが、せっかくだから一緒に見に行こうとぜ!!新しい生物を。怖かったら戻って来ればいいさ」


 そうシーカーは笑って手を伸ばしてきた。そんな無垢なシーカーにアルは照れながら伸ばした。


「……じゃあ、行こう……かな」

「よし、決まりだ!!」


2人は軽い握手を交わした。

 そして3人は潜水艇に乗り込み、機体前方ガラス張りの操縦席にシーカー、機体後方のガラス張りの機能席にSyo、機体の上方にある小さなガラス張りの円状の覗き穴にアルが周りを見ている。中は狭く歩くスペースが人一人分しかなく、同時に通過するならお互いに横になって歩かないといけない。艇内には多くの補助物が備え付けられており、シーカーが購入した深海用の特殊ダイバースーツやGPS付き水中弾と水中銃など多くの物が備え付けられている。

 シーカーはハンドルをぎゅっと握り、後ろを振り返り2人に言い放った。


「さぁ!!未知なる生物へと出発だぁ〜!!」

「おぉ〜う!!」


 2人も大きく腕を上げて返事をし、それと共に深海へと沈んでいった。



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