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第12話 新しいマイホームを作ろう(3)


 何とか武装民族の襲撃から3人+1匹で撃退し、充分に休憩を取ったところで谷へと向かう。

 谷の間にあるシール川の上流の方に大樹の森がある。そこにノーヴルムの木が生え揃っている。現在3人は川辺の道を歩き、谷の超えた所にある大樹の森を目指す。

 ウェルズはメサに戻りたくないようで、ずっとシーカーの後ろを小さな羽を羽ばたかせて飛んでいた。


「この先は武装民族はいないけど、危ない生物が増えていくから気をつけなよ」

「前の時はあの森まで行けたが、この先は全くの未知数だな」


 空には2つ首のプテラノドン数匹がシーカー達の付近を旋回している。まるで獲物を狩ろうとしているようだ。アルが川に何か動いたのが見えた凝視すると、頭小さくツルツルな恐竜が顔だけ姿を現した。


「あれって?」


 そして徐々にその恐竜は頭をあげ、長い首が露わになった。それは首長竜の一種プレシオサウルスだった。アルは少し引き気味にフォレスに聞く。


「ここって太古の恐竜が住んでるの?」

「あぁそうだよ、ティラノサウルスとかも偶に見かけるから気をつけてね」

「……はい」


 上流に沿って坂を進み谷を抜けるとそこには大きな湖が広がっていた。その湖の周りに生えている木、それがノーヴルムの木だった。


「ここがノーヴルムの木が生えている場所よ」

「何だ結構簡単だったじゃん!!ノーヴルムの木って」


 頭の裏で手を組み、呑気に話すシーカーだがその後ろの空から音もなく迫る生物がいた。そして一気にシーカーの頭目掛けて、真っ直ぐに飛びついてきた。

 それをいち早く察知したのは、シーカーの後ろを歩くアルだった。


「危ない!!」

「!?」


 アルはシーカーを突き飛ばした。アルはその生物の鋭い嘴の先端部分が左腕に擦り、血が流れた。シーカーは襲われた事も分からず、地面に倒れた。


「いててて……」

「何が起きたんだい!!」


 フォレスは真っ先にシーカー、じゃなくてアルの元に駆け寄ってきた。アルは左腕を抑えながら言う。


「謎の生物に襲われて……」

「謎の生物?……くっ……」


 森の中の音や雰囲気の事をよく分かっているフォレスですら気づかなかった。そして周りを見るが一切攻撃してきた生物はいなかった。慌ててアルに聞き直す。


「どんな見た目か覚えてる!?」

「一瞬だけだったけど全体的に黒く、羽が生えていた人型だったけど腕は普通とは違うかなり細めだった。それと鋭く尖った爪の嘴に、首元には無数の尖った羽があったわ……」


 シーカーも立ち上がり、話に混ざってきた。


「つまりノーヴルムの木が欲しければアイツを倒せと言うことか」

「簡単に倒せる相手だと思ったら大間違いだよ……あれはフェザー・クルエル。このノーヴルムの木を守る者……」

「聞いた事はあるな……動きも早く、そして音もなく背後に忍び寄り、敵を倒す……下手な大型モンスターより強力な相手だな」


 ーー紹介ーー

 フェザー・クルエル

 シール湖付近、討伐難易度☆5 HP20000

 ノーヴルムの木を守る者として何千年も1人で守り続けている。ノーヴルムの木に近づく者は音もなく背後に忍び寄り、持ち前の鋭い爪や嘴で首を一撃で仕留める。飛ぶ速度も異常に早く、ボードなどでは追いつけないほど早い。背中の黒羽を投げ飛ばすこともでき、尖っている先端部分の羽が強力。


「シーカー、あんたは確かボードがあったわよね」

「ボード?今修理中だ、この足で勝負してやる。だからフォレスはアルの手当てをしてくれ!!俺がやるしかねぇ、来いウェルズ!!」

「シーカー1人じゃ危ないよ!!あたしも」

「怪我した女の子1人にする方がもっと危ないぜ、木材のため、それにアルに怪我させた仇討ちだ!!」


 そう言いながらウェルズが威嚇している方向、暗い森の中へと突撃していった。こんな時ほど嬉しそうな顔をするシーカーに少々呆れるフォレスだった。だけどフォレスも軽く微笑んでいた。


「やっぱりシーカーは筋金入りのアホだね……でもそれがいいよ」


 ーーーーーーーーーーーーーー


「こんな時に、ボードがないなんて俺もついてないなぁ〜それに暗いし音もないし、薄気味悪いなぁ」


 先程の武装民族や謎の生物がいたシンピ森林とは違い、この森では生物などの雰囲気が全くなく草木が揺れる音しか聞こえてこない。それにノーヴルムの木は葉っぱが大量に付いている事もあり、地上の太陽をシャットダウンし、まるで夜の森にいるような1m先も分からない薄気味悪い雰囲気だ。


「いざ森に突入したのはいいが、音もなく迫ってくる奴相手にこんな暗い中で戦う事になるとはな……」


 ウェルズも近くを飛んでいるのだが、暗くて何処にいるか全く分からない。

 シーカーは軽く手探りで探している。


「ウェルズ、どこにいるんだ?」


 手探りを続けていると、ふさっとっした毛の感触がした。


「ふさふさ?」


 ウェルズに毛は生えてない。そう疑問に思ったら目の前からウェルズの唸り声が聞こえてきた。その瞬間シーカーの全身から大量の汗が流れてきた。


「これって……まさか……」


 後ろを恐る恐る毛を触れたまま、ゆっくりと振り向くとフォレスが言ってたフェザー・クルエルが目を光らせて真後ろにいた。クルエルは鉤爪をシーカーに向けて構えていた。


「おい、マジかよ!?」


 爪をシーカーの首に突き刺すが、シーカーは前転して避け、前の木の裏へと腰を下ろしてウェルズと共に隠れた。


「あ、危ねぇ……!?」


 一息つく暇もなく、隠れた木が横に真っ二つに切り裂かれた。慌ててシーカーとウェルズは別の木に隠れるが、それも切られた。その後も何個も木を転々と隠れるがお見通しなのか全て切り落とされた。


「クソっ……全然場所が分かんねえ……」


 シーカーも暗闇にいて少しは目が慣れて来たが、場所は全く把握出来ない状況だ。刀を構えて、耳を澄ませるシーカー。狭くそして広いこの森の中、草木が芽吹く中クルエルの動きをどう読み込むのか……


「……」


 背後10m程向こうの草が一瞬だけ、普通の揺れとは違い、何かが草の上を通り過ぎたような音が聞こえた。そしてそれ迫り来る。


「そこだぁ!!」


 すぐに背後へと一撃攻撃を食らわすが、当たってはおらず、逆にシーカーの肩に何かに切られた跡がついていた。


「来る位置は分かるが、来る瞬間がまだ分からない……」


 そうぼやくと再び背後の草が大きく揺れた。今度何秒か計算をした。


「今度こそ!!」


 また迫り来るクルエルの方向へと刀を振った。するとシーカーの攻撃はクルエルの爪攻撃を奇跡的に刀で受け止めた。だが猛スピードで来るクルエルの体当たりにも近い衝撃てシーカーは後ろに吹っ飛んでしまった。

 クルエルもまた何処かへ遠くへと飛んで行き、次の攻撃を伺っている。


「何とか攻撃タイミングも分かった……もう一度だ……」


 すぐに立ち上がり、また静かに待ち構えると、草が大きく揺れタイミングを計り来たと分かった瞬間全力で刀を攻撃した。

 切った、今度は完全に攻撃を深く当てた感触を感じた。血のような液体が顔に飛んで来た。


「ぐはっ!!」


 だが、相手もシーカーの行動を読んだのか、シーカーの腹部分に何撃もの深い爪の攻撃が襲いかかった。血が出てその場に倒れ木の裏に隠れる。


「くっ……闇雲に炎の刻印を森の中で使うと、山火事に繋がる可能性がある……とりあえず回復薬を……」


 回復薬を探そうとするとメサからある物を見つけた。


「これがあったか、けど一個しかないか……相手も深傷を負っているはずだ……ウェルズ目を瞑れ!!」


 ウェルズが自分の目を手で隠した瞬間、シーカーは特殊ゴーグルを目に装備し、野球ボールサイズの玉を地面に投げ付けた。

 地面にぶつかった玉は風船のように破裂し、玉から半径10m以内に強烈な光が放たれた。強力な光で一時的に相手の視界を奪う事ができる。更にシーカーが装備して光耐久を持つ特殊ゴーグルで、光が輝く1分の間は森全体がまるで昼のように見える。


「見えた!!」


 シーカーが発見したのは自分の目を抑え苦しんでいるのクルエルだった。普通の人間サイズながら、大きめの羽にカラスのような顔、それに細く長い腕と爪だった。

 シーカーは刀を取り出しクルエルに向けて振り下ろした。


「うおぉぉぉりゃぁぁぉ!!」


 クルエルは後ろの翼を広げ、大きく振り翼から無数の羽がシーカーに猛スピードで直線に飛んできた。


「やべっ!!」


 ギリギリで横に体を傾かせて交わしたが肩に羽が何本か突き刺さった。そのままクルエルは目を塞いだ状態で森の上へと上昇した。


「明るい場所に出ればこっちのもんだ!!行けウェルズ!!


 外へ逃げたクルエルを追うウェルズが、森の低空で未だ目を開けられないクルエルに、そのまま特攻した。

 ウェルズの頭突きが当たる直前に目を開け、瞬時にウェルズの頭突きを捉えて何とか避けた。だがそれはシーカーには予想済みだった。クルエルの背後の森から刀を手に構えたシーカーが飛びできて、炎の刻印を発動し炎を身に纏った。


「お前には悪いが新しいマイホームの為に倒させてもらう!!」


 シーカーの方を向いたが、目がまだ慣れてなくシーカーの姿がよく見えない。

 そしてシーカーの炎を纏った刀がクルエルを切り裂いた。身体に×の炎の切り傷が出来、そのまま森の中へ落下していった。


「何とか勝ったようだな……」


 ーーーーーーーーーーーーーー


 アルを瓶に入った液体を掛け、手当てするフォレス。掛けると少し痺れるような痛さが来て、耐えるアル。


「うっ……」

「これくらい耐えなさい!!」

「は、はい」


 そして森からウェルズと共にシーカーが片腕を掲げながら出てきた。やはり笑顔で出てきた。


「勝ったぜ……これでノーヴルムの木は俺のもんだ……」

「本当に勝つとはね対したもんだよ……シーカーは」

「へへ……でもちょっと痛ぇ……」


 痛みに耐えながら来ていたシーカーは、その場に倒れてしまった。アルはすぐにシーカーの元に駆けつけた。


「シーカー!?」

「気絶しただけだよ……そらよりノーヴルムの木を切るから手伝いな」

「は、はい!!」


 ーーーーーーーーーーーーーー


 そしてシーカーが目を覚めると、フォレスの小屋の上だった。横たわっており、包帯がぐるぐる巻かれていた。


「フォレスの家か……」

「そうよ……私が助けて、おぶったんだから感謝しなさいよ」


 右腕に白い布が巻かれたアルが立っていた。


「すまねぇな……ノーヴルムの木は?」

「フォレスさんがちゃんと必要な分確保したわよ。早くその土地とやらに行きましょう。新しい家を作るんでしょ」

「やけに乗り気だな……」


 するとアルはいつも通り赤面になり、あたふたしながら言う。


「だ、だって私はあなたのフレンドだもん‼︎そこは自由でしょ!!」

「あぁ……そうだな……なら早く行くか」


 小屋から大量の道具を持って出て来たフォレスは笑いながらシーカーの傷口を何回も叩く。


「そうそう男はそうでなくっちゃ!!さぁ建築するわよぉ〜!!」

「うわぁぁぁぁぁぁ!!」


 森の中に響き渡るシーカーの悲痛な叫び声。そして忘れ去られているSyo。

 その後100万Gを払い、別のフィールドにある、虹の砂が広がるアイディルビーチ近くにある山の上に2階建木製の家を建てた。リビングからの海眺めは絶景で、すぐ海に行ける。最高の土地で最高の眺め、そして最高の家で最高続きの幸せ者のシーカーであった。

 お金が底をつきかけている事を除けば……




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