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第107話 二つの大戦争勃発!!

 

 悠斗と隼の二人が戦う気満々になり、睨み合っていると凰姫はニヤリと微笑み、隼の耳元で囁いた。


「仮面さん、炎の刻印の方を任せてもいいのよね」

「あぁ、俺が倒す。だから、お前は骸帝が来るまで、ここの制圧でもしてるんだな。水の刻印の奴はお前に任せる。他の雑魚もな」

「まったく、AI使いが荒い人よね。貴方は」

「ふん」


 隼は凰姫の言葉を無視するように目の前に手をかざしてゲートを開いた。そしてシーカーに手招きをしてゲートへと向き、シーカーに背を向けた、


「来いって訳か……隼」


 シーカーがゲートへ行こうとするとSyoがシーカーの腕を掴んだ。強く引っ張られ、その顔は真剣な眼差しであり願いを託しているのがひしひしと伝わっていた。


「将呉……任せてくれ。俺があいつを闇から取り戻してやるからよ」

「非力な俺には何もできない。あいつの事を理解してら刻印の力を持つ、お前だけが出来るんだ。必ず……」


 シーカーはSyoの手に触れた。


「お前の願いは伝わった。だから、お前はここの街を、仲間達を、助けに来た戦士達を援護してくれ」

「分かった。頼んだぞ、悠斗」

「やってやるさ」


 そう言ってシーカーは仲間達を一度見つめて、みんなの言葉でない心の応援が届き、静かに感謝を込めて頭を下げて、思いっきりジャンプしてゲートの中へと姿を消した。

 ゲートが閉じてもなお、不安そうにその場所を見つめるSyoにメリクリは優しく肩を叩き、語りかけた。


「僕達は彼が戻って来ると信じて、前の敵と戦おう」

「そうだな。悠斗は戻ってくる……あいつを連れて必ず」

「だから僕達は僕達の戦いをしよう。彼が戻って来ても、大丈夫なように」

「おう!!」


 Syoの顔からは不安は消えて、戦う意欲が増した。

 そして隼がフィールドからいなくなった事を確認した凰姫は伸び伸びと背伸びをして行動を起こそうとする。


「さぁ〜て、仮面さんもいなくなった事だし、私は──」


 その時、凰姫の背後から剣が飛んできた。剣は凰姫の心臓目掛けていたが寸前で止まり、後ろを振り向いた凰姫はデコピンで剣を弾き飛ばした。


「あらあら、戦闘開始の合図はしてないわよ〜」


 目の前に手をかざすと遠くのビルにいた透明化のスキルを使用していたプレイヤーの一人の姿が現れた。

 そう、このプレイヤーは不意打ちで攻撃を仕掛けたのだが、凰姫は対策をしており、攻撃は無となった。凰姫は人差し指と顔を左右に振り、そのプレイヤーに優しい口調で注意した。


「ダメよ〜そんな卑怯な攻撃は〜」


 その優しい口調から優しさなんて感じる事はなく、プレイヤーは恐怖に慄いていた。


「え……嘘だろ」

「卑怯な方にはお・し・お・き・よ」


 凰姫が手を開いて突き出すとそのプレイヤーは身動きが取れなくなり、手を上に上げると並行してプレイヤーも空高く上がった。

 もう片方の手で指を鳴らすと、そのプレイヤーの周りから複数の黒い穴が現れて、その中から鋭利の飴で作られた赤い槍が現れてそのプレイヤーを串刺して、データごと消滅した。


「一人、プレイヤーがもうやられたか」


 目の前で消されたプレイヤーを見て、多くのプレイヤーは震え上がり戦々恐々とした。

 凰姫はそのプレイヤーが使っていた剣を持ち、投げ捨てて指を鳴らして剣もデータごと消滅した。


「私を不意打ちで殺そうなんて甘いわよ〜」


 凰姫は立ったままの体勢で、宙へとゆっくりと浮き始めた。


「さぁ!! 私達の人類攻略戦の第一歩の始まりよ!!」


 凰姫が声高らかに宣言して、両手を広げると空に夥しい量のゲートが開き、以前の戦闘にも出てきた狂戦士や蝙蝠男らが大量に舞い降り、辺りのプレイヤーや建物に無差別で攻撃を開始した。

 プレイヤー達は何が起きているのか分からず、困惑して倒されるプレイヤーもいた。

 メリクリはすぐに全員に連絡入れ、指示をした。


「みんな、戦闘が始まるぞ。心して掛かるんだ。アルちゃんは集まった戦士達に号令を掛けるんだ!!」

「分かったわ!!」


 慌てふためくプレイヤー達を落ち着かせる為に、アルはすぐにマイクを取り出して大声で呼びかけた。


「みんな、落ち着いて!!ここを守り抜くのよ!!私達の場所を!!」

「「「おぉぉぉぉ!!」」」


 アルの号令と共に、フィールドにいるすべてのプレイヤーは落ち着きを取り戻し、凰姫の戦士達に攻撃を仕掛けた。それぞれの武器を駆使して、まさに大戦争状態になり、街は破壊され始めた。

 アルもマイクを投げ捨てて腕を鳴らし、アモレと共に戦闘態勢に入る。


「流石アルちゃん!!一言で混乱を収めたね」

「守りたい気持ちがみんなにもあるから、収まったのよ。アモレちゃん。みんなに続いて私たちも行くよ!!」

「うん!!」


 フィールドにいる全プレイヤーが戦闘を開始し、アルやアモレなども戦闘に乱入して大混戦となる。

 新新もスカイタワーから狙撃して敵を撃退していく。


「Syo!!準備して!!あの兵器を使う時だよ!!」

「おうよ!!」


 マッキーとSyoは最終兵器を使う為、準備に取り掛かる。

 街の中は敵を倒して倒されてを繰り返して、敵味方が一進一退の攻防を続けていた。

 激戦を高みの見物をしている凰姫の前にオーガスターとメリクリが覇気に満ちた顔で現れた。


「お前の相手は──」

「僕達だよ!!」


 二人は凰姫の前に立ち、オーガスターは火山龍の剣を二刀構え、メリクリも刻印を発動し、氷の剣を突きつけた。

 凰姫は口に手を当てて、見下すように嘲笑った。


「イケメンお二人さんで来る気?私ってモテてるのねぇ」

「ちっ、そんなムカつく顔、すぐに泣かせてやるぜ」

「女の子に泣かせるってモテないわよぉ〜」

「本当にムカつく奴だぜ。骸帝が来る前に貴様を倒してやる。秘策でなぁ」


 そのオーガスターの顔からは何処か自信がある顔であった。


 *


 二人が移動した場所は何処までも続く真っ暗な世界であった。前までの謎のバグ空間とは違うようであった。


「前の変な街じゃないようだな」

「あれはただのバグ世界だ。今回はお前に良いステージを用意した」

「ん?」


 隼が指を鳴らすと真っ暗な空間は何処かへと移り変わり、シーカーの足元から徐々にその姿を表した。

 そこは何処かの学校の教室であり、何十個も並べられた小さな学習机。そして黒板の端に描かれた2043年の年号。それは今から7年前の年──

 シーカーは黒板の文字とこの教室に何処か見覚えがあった。


「ここは……俺達の小学校なのか?それも俺達の教室……」


 自分の目の前には悠斗と自分の名前のプレートが貼られた机が置かれていた。

 ここは悠斗らが過ごした小学校の教室であった。懐かしさが残る空間だが、現状ではそんな事を考える暇はなかった。


「何故、ここを戦う場に選んだ」

「あの時俺達が出会ったこの学校で全てを終える。俺自身もな。それがお前なら、俺は満足だ」

「……隼。お前の身体の中にある闇の力を取り戻すしか方法はないみたいだな。はぁ!!」


 シーカーは拳を強く握りしめて、炎の刻印を発動した。

 勢いよく放たれている炎に、隼のマントも激しく靡いていた。だが、隼は微動だにせずに腕を組み、その様子を見つめている。


「以前よりもパワーアップしているようだな。俺も行かせてもらう。はぁ!!」


 風の刻印を発動し、緑のオーラを放ちながら隼の周りから強風が吹き荒れてシーカーの炎は激しく荒れる。

 だが、シーカーは動じる事なく、隼から目を離す事はなかった。


「お前も少しは強くなったようだな。お前を闇から覚ますには、一度ぶん殴ってやるしかねぇようだな」

「あぁ、そうだな。殴ってみろ」


 二人は刻印の力を抑えると二人は教室端に寄り、戦闘体勢を取る。昔は楽しく遊んでいた教室が今は、二人の仲を取り戻す戦場へと化した。

 複雑な気持ちがシーカーにいくつも襲うが、そんな感情は捨てて隼を助ける事だけを第一に考えた。


「行くぞ!!」

「来い!!」


 悠斗が力強く一歩足踏みをすると、隼が素早く足を踏み入り、悠斗より早く行動を繰り出し、一瞬にして悠斗の目の前にまで潜り込んだ。そして拳を勢いよく胴体へと攻撃を仕掛けようとした。

 だが、その瞬間に隼の真横から悠斗の蹴りが放たれており、悠斗への攻撃が届くより早く隼の頭に直撃して、身体ごと弾き飛ばれて机や椅子を薙ぎ倒しながら黒板に叩きつけられた。


「ぐふっ!!」

「一人じゃなく、多くの仲間と絆を繋いで築き上げた力が俺を強くした!!」

「絆で強くなる……か。下らん自論だな」

「……」




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