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第104話 決戦前日

 

 AlterLinkを外すと同じく外した将呉がいるが、その二人の前にいたのは腕を組み、怒りを表していたリブの姿であった。


「二人共、私に言ったよね。ログインするなって」

「で、でも……何も無かった事だし……」

「今はなんとも無かったからよかったけど、もしもデータに異常でも起こしたりしたら、戦いに参加出来るか分からなくなる所よ。特に悠斗は主戦力なんだから!!」

「す、すいません……」

「とにかく、少しだけ待ってくれる?運営からの声明と私自身でウィルスなどの危険なモノがないか調べるからね」


 そう言ってリブは部屋から出て行った。

 次にリブと、入れ替わるようにステラットが入って来て、二人の前に胡座を掻いて座り込んだ。


「二人共、友達に会えたみたいだね」

「……そうだが、奴がいる場所までは聞き出せなかった」

「そうか……前会った時と変わらなかった?」

「あぁ、以前と変わらなかった。だけど、俺は決意した。奴と正面からぶつかり合うと……」

「うん、君がその気なら、思うがままにすればいい。今の君なら、思いは届くはずだ」


 *


 そして一同はリブに呼ばれて、再びリビングに終結した。

 ノートパソコンを開いているリブの前に全員が立っており、パソコンをいじっているリブに対して、劉生が疑問をぶつけた。


「運営から発表はあったのか?」

「一応発表されているよ。現在、システムの不具合でCityTokyoのフィールドのみがログイン可能になっている状態で、調整中の為ログインは控えて下さいと……」

「なるほど……それと俺達を呼んだ理由は?」

「僕がこのフィールドに悪性ウィルスがないか調べた。このフィールドには今は悪性のあるウィルスなどはないみたい。ログインして、戦いの準備をするくらいなら大丈夫よ。でも、いつフィールドに何が送られてくるか分からない現状よ。気をつけてログインする事、もし何か起きたらすぐにログアウトして。みんな分かった?」

「もちろんだ!!」

「骸帝の力でこのフィールドがログインみたいだから、運営によって閉じられる事は多分ないと思う。だから、みんな思う存分自由に準備をするのよ!!」

「「「おう!!」」」


 すると芽衣は灯に向かって一つ忠告する。


「灯はアルの姿ではログインしちゃダメよ。もし、アルとしてログインしてる事がバレたら大騒ぎになるからね」

「そうだったわね……気をつけないと」


 劉星は一人一足先にログインしようともうAlterLinkを装着して椅子に座っていた。


「そうゆう時は早いのね劉生」

「あったぼうよ!お先にログインしてるぜ!!悠斗もステラットも修行に手伝ってくれよな!!」


 そう言ってすぐに意識をalterfrontierにLinkして、ログインした。

 劉生に続くように悠斗とステラットもAlterLinkを装着して、ログインした。


「私達も行こっか」

「うん!!敏孫もおいで!!」


 灯と芽衣もログインし、敏孫もログインしようとした。

 そんな時、リブが同じくログインしようとしていた将呉を止めた。


「将呉、ちょっと手伝って」

「何する気?」

「僕の()の大発明を完成させる為には、君の手を借りたいんだよ。それに敏孫にも手伝ってもらうよ」

「アレか……分かった!!」


 "アレ"のことを理解し、将呉はすぐにログインした。

 敏孫もalterlinkを被ったまま、親指を立てて快く頷いた。


「分かったわ。出来る限り手伝わせてもらうわ」

「もちろん貴方の武器も強化するからね。とびっきりの銃に仕上げてあげるわ」

「ありがとう」

「じゃ、ゲームの世界で会いましょう」


 敏孫もログインし、最後に残ったリブもログインして、全員が久しぶりにalter frontierへとログインしたのだ。

 そこから、各自別れてそれぞれの準備を始めた。悠斗・劉生・ステラットは更に強くなる為に厳しい戦闘トレーニングを積んだ。灯と芽衣は息のあったコンビネーションが取れるように意思疎通を図りながら戦闘のトレーニングを積んだ。

 リブと敏孫と将呉は今回の戦闘で必須となるであろう発明を完成させる為に、急いで開発を進めることにした。

 全員が心を通わせて手を取り合って、骸帝との決戦までの時を過ごした。現実でもゲームの中でも友情は変わらず、初めて骸帝と戦ったあの日の対立した空気は何処かへと吹き飛んでいた。

 一人一人色んな思いがあるだろう。友情を取り戻したい者、平和を願う者、未来を変える者、リベンジする者など──


 *


 それから数日が経った。その間も、隼の母とは連絡を取りつつ隼を捜索はした。だが、発見はされなかった。

 その間もalterfrontierは運営により閉められる事は出来ず、想定外のバグと言い注意警告をするのみであった。悠斗らは修行を積んでとうとう骸帝が宣言した日の前日となった。

 将呉の部屋では全員が円を描くように座り込んで、最後の会議をしていた。その中で、劉星が真ん中に立ち、全員へと言い放った。


「とうとう明日となった戦いだ!!だけど、ハッキリ言ってそんな実感なんて今の俺にはない!!ここで骸帝に負けたら、世界が滅びる?そんなもん映画やアニメみたいな事が起きてるなんて、全く感じない。むしろ、負けたらゲームオーバーでまた挑めば良いみたいな楽観的な考えだった!!」


 恥も感じない堂々とした言い方に、ステラットも共感してニコっと笑いながら言う。


「それが普通かもしれないね。僕だってまだ心の何処かには、そんな事本当に起きるのかなって思っている。でも、刻印が未来を教えてくれるから僕は信じている。だからこそ、奴を止める為に悠斗や将呉。そしてみんなを集結させた」

「俺の元に変な連絡が来たと思って、話に乗ってやったがとんだ災難に付き合わされよ。でも、今は満足している自分がいる。面白い戦いになりそうだ」

「戦いは僕ら人間によって決まる。僕が見た未来が本当かどうかは僕ら自信に掛かっている」

「それに俺は、初めて来た新東京が楽し過ぎた。勝ってまた東京を隅から隅まで歩いて、もっと色んな場所をみたい!!」

「その為にも僕らがこの先の未来を守り抜くんだ」


 ステラットの言葉に悠斗が尋ねる。


「今のお前には未来はどう見える」

「……色んな結末が交差している。勝つ未来も負ける未来も両方がある。それがどっちに傾くかは明日次第」

「なるほどな。それほど、未来は俺らの手で決めろって言うんだな。なら、死力を尽くしてやるしかねぇな」

「ふっ、その通りだ」


 悠斗は微笑み、これ以上聞くのをやめた。

 そして次に灯が口を開けた。


「私達は、悠斗くん……いやシーカーとメリクリによって集められたチームよ。二人がみんなを選び、ここに導いた。途中でぶつかり合ってどうなるかと思ったし、会う前はちょっと怖かった。でも、会って一緒にいる間にみんながとても楽しくて優しい人だと分かった。人と人は互いに目の前にいる事で分かり合える。その事がこの10日間で分かったの。だから、この仲間の輪をずっと繋いでいく為にもみんな、頑張りましょう!!」


 全員が頷き、灯は照れ臭そうに座り込んだ。

 そして悠斗が立ち上がり、全員に聞く。


「みんな、戦いの準備はもう大丈夫だな」

「おう!!」

「もちろんだ」

「いつでも、いいよ」

「どんと来なさい!!」


 全員思い思いの声を上げて、返事をした。そして悠斗は拳を振り上げて力強く話を続けた。


「戦いは最後まで絶対に気を抜くな。ピンチに陥ったって諦めず、仲間に頼れ!!俺達にあるのは勝利だけだ!!破滅の先ある絶望の未来を潰える。全員、健闘を祈る!!」

「「「おう!!」」」

「今日は俺達にとって人生で一番長い時間になるだろう。みんな笑顔で戻ってこよう。行こう、決戦の時だ!!」


 全員でハイタッチをして、AlterLinkを装着し、CityTokyoへとログインした。

 ここから骸帝が来るとされる時間まで最後の確認を取りつつ、準備に取り掛かる事にした。


 *


 時は流れ、決戦30分前──隼もログインしており、漆黒の空間の中で凰姫と二人で話していた。


「あら、仮面さん。もう来ていたの」

「そんなもん俺の勝手だ。ところで骸帝はどこにいるんだ」

「愛想良くしないと嫌われるわよ。骸帝様は、今お一人になりたいみたいなの。だから、時間までは現れないって言ってたわよ」

「ふん、ウィルスのくせに一人になりたいか……」


 そんな横柄な態度を取る隼に凰姫はまたいやらしそうな笑みを浮かべて顔を近づけた。そしてゆっくりとした声で聞く。


「貴方やシーカーさんが持ってる刻印の謎って知ってる?」

「刻印の謎?」

「骸帝様が言っていたほんのちょっとの情報だけど、刻印はこの世のものではないと言っていたような。貴方の世界でも、私がいるこの世界でもない、本当に"未知なる力"って。何故この世界にあるのか、何故シーカーさんが炎の刻印に選ばれたのか、謎は多いわねぇ」

「……今更そんなもん知る気にもならん」

「へぇ、なら貴方は自分で自分の生きる世界を壊して、どうする気なの?」

「自分の命を絶つ」

「私達には分からないけど、死ぬってどうゆう感覚なの?」

「俺にも分からん。でも、心身ともに楽になるならその位苦じゃない」

「ふーん。なら、死ぬまで今から始まる最初で最後のパーティを楽しみましょう」

「……」


 凰姫は手のひらにレトロな懐中時計を出して、時計を確認した。時間を見て、驚いた様子で時計の時間を隼に見せつけた。


「あら!?もうこんな時間。パーティの時間よ!!」

「あぁ」

「シーカーさんらもそれ相応な準備をしているだろうから、貴方も気をつけて戦うのね」

「ふん……」


 凰姫は目の前に丸いCityTokyoへと繋がるゲートを作り出し、二人はそのゲートを通り、CityTokyoへと降り立った。

 今から始まる戦い、それがどのような結末になるかは隼にも悠斗らにも分からない。だが、お互いの気持ちは一つである。

 勝利するのは俺達だと──

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