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第101話 世界会見

 


 悠斗らは将呉にこれまでの刻印の経緯を説明した。だが、まだ隼の事は話す事はしなかった。

 その説明に将呉はより困惑した状態に陥った。やはり、非現実的な光景が目の前に広がっているのであるから、まだ頭を悩ませていた。


「──て訳だ。意味は分かった?そして落ち着いたか?」

「……うん。分かったような、分からないような」

「俺らでも、はっきりとは理解出来てないからな」

「……言いたい事があり過ぎて、逆に何も言えねぇ」


 理解どころか、更に混乱した。

 ステラットも話に混ざってきた。


「まぁ、刻印の事は僕らの理解を遥かに超えている事には間違いない。でも、これが奴らに唯一勝てる手段なのも間違いない」

「……」

「だから、取り敢えず悩むのは後にして、今は帰ろうよ」

「……うん」


 *


 三人は家に帰ると、食卓に全員のご飯が用意されていた。シンプルな朝食であり、ご飯と味噌汁、鮭や卵焼きなどその他多数の日本の食卓っぽいおかずがズラリと並んでいた。流石に八人にもの人数には皿は足りないのか、適当な平べったい皿をご飯茶碗にされていた。

 将呉はこんな朝食が出てきた事に母に尋ねた。


「母さん、これは……?」

「留学してきた子達でしょ。いつもの我が家の日本の食卓を見せようと思ってねぇ」

「えぇ……」


 もちろんこんな豪華な朝食は将呉の家で出てきた事なんてないのだ。良くて、昨日の残りの味噌汁と昨日の残ったおかずという手抜き飯である。外食に出た次の日は、卵かけご飯とインスタント味噌汁だけの時もある。

 そんな事を知らないリブはよだれを垂らしながら、眼を光らせてご飯を眺めていた。


「これがJAPANの朝食!?こんなのが毎日!?凄い!凄過ぎる!豪勢過ぎる!!」

「……」


 将呉は何処か申し訳なくなり、リブから目を逸らした。

 そしてステラットや敏孫もそのご飯を見て、初めて見て喜びの顔をして食卓についた。


「さぁ皆、朝食にしましょう」


 今までにないほどの、豪華な食事をみんなでとった。荒々しく食う劉星や、丁寧に食べる灯など性格が出た食事となった。

 そして朝食を食い終わり、芽衣や灯達が皿洗いの手伝いをしている中、悠斗らは呑気にニュースを眺めていた。

 占いのコーナーなのか、劉星はウキウキで眺めていた。


「おっ!俺の運勢今日は一位だ!!」

「お前は占いは信じる方なのか?」

「あったぼうよ!!悠斗、お前何座?」

「俺、魚座だけど……」


 占いコーナーを見て、劉星は子供のように嬉しそうにはしゃいでいた。


「お、魚座は今日はやる事いっぱいで、大変な一日だとよ。ラッキーアイテムは大量の紙束か」

「そうかい」

「俺は……やる事ないから家に篭ってろ……なんだよそれ」


 そしてニュースの時間になり、そのニュース内容に劉星が全員を呼び寄せた。


「alter frontierのニュースだぞ!!みんな!!」

「え?」

「AlterFrontierを作った所の社長が会見をするみたいだ」

「ノーマッド社の社長が?」


 全員がすぐに集まり、テレビに注目した。

 テレビを見ると大量のカメラマンがカメラを構えている中、ノーマッド社の社長であり、ダリーズ・ロンネスともう一人若い眼鏡を掛けた白衣の男が卓上に現れた。

 そしてカメラのシャッター音が鳴り響く中、マイクの前に立つとダリーズが一度頭を下げて、静かに語り出した。


『全世界のAlterFrontierを楽しくプレイしている皆さん。先日、我が会社が運営するAlterFrontierにて起きたウィルスAIの事件に関して今日は会見を開かせていただきました。この度の事件にて多大なるデータ被害が発生しており、そのウィルスを含んだAIが敵キャラクターとしてフィールドに登場し、攻撃されたまたは倒されたプレイヤー達のゲームデータが強制的に消去されるという事件が発生しました。敵として出現したキャラクターは我が会社とは無関係のキャラクターであり、誰か個人によって作られたものだと推測されております。その人物の特定と共に、データを消去されたプレイヤーのデータ復旧を行っております。データ復旧に関しましては時間が掛かると思われますが、必ず復旧する事を約束します。そして、今回の悪質な事件を起こした犯人を必ずや見つけ次第、厳重な処罰を下そうと思います』


 一度ダリーズが頭を下げると、カメラは次に隣に座っている男性に向けられた。


『では、詳しい事は私の息子であり、サイバーウィルス研究に携わっているジュード・ロンネスに説明してもらいます』


 ダリーズがマイクから離れると次に白衣の男がマイクの前に立ち、頭を下げた。


『私はノーマッド社のサイバーウィルス研究に携わっているジュード・ロンネスです。この度は我が社のAlterFrontierにてウィルスが発生した事について、お話ししたいと思います』


 名前を聞いて、悠斗は将呉に尋ねた。


「あの人は?社長と名前が一緒だぞ?」

「ノーマッド社のウィルスやサイバーテロの専門で、社長の息子だよ」

「息子?親子でalter frontierを作っていたって訳?」

「そうゆう事」


 ロンネスの説明は続く。


『先程父が申されたようにウィルスの事は何者かが悪意を持って送ったものとして、捜査をしております。我がalter frontierには以前より多くのサイバーテロを行われた事があります。ですが、今までは全てのウィルスの除去やハッキングなどを消去し、犯人の特定に至りました。今回初の事例として除去は困難を極めておりました。ですが、我々はそのウィルスの除去は成功しました。ですが、もう少し時間を頂きたいと思います。完全なる除去をする為に、念入りに調べたいと思っております。犯人の特定にはまだ時間が掛かると思いますが、絶対に捕まえる事をお約束します!』


 そしてジュードが力強く言い終わるとダリーズが再び立ち上がり、マイクを持ってカメラに向かって言い放った。


『我々は皆様に楽しくゲームして頂きたい一心で、社員一同全力を尽くして一日でも早い再開を目指しております。本日は会見をご覧頂きありがとうございます……』


 二人は頭を下げて、生中継は終えた。

 全員が静まり返り、悠斗が一番先に口を開いた。


「除去出来た……か。本当だといいんだがな」

「でも、奴らは絶対に現れるだろう。僕らの前に……」

「そうだろうな、どんな手を使ってでも……」


 ステラットと共に二人で話していると、真ん中にリブが混ざり入ってきた。その顔は先程のニコニコしていた顔とは違い、何処か真剣な顔であった。


「二人共、こっちに来なさい」

「え?」

「早く」


 その真剣な眼差しを押されてリブに言われるがまま、二人は将呉の部屋に連れてかれた。


「二人にはこれを勉強してもらうわ」

「ん?」


 二人の前に出されたのは二つのまとめられた紙であった。

 その量は国語辞書に匹敵し、その分厚さに二人は圧巻された。


「これは……?」

「これは僕が徹夜で作り上げたalterfrontier内にあるスキル全部をまとめたデータ資料さ」

「これ全部!?」

「もちろん。現在あるスキルは500以上もあるわ。それを全て覚えてもらうわ」

「500!?」


 様々なスキルがあるalter frontier。強化系のスキルや敵に影響を及ぼすスキルなど、多種多様なスキルがある。

 悠斗はその本を開くとスキルの一つ一つに莫大な量の説明が書いてあり、効力や発動時間などの基本情報や、使用率や範囲などの細かい事も書いてあった。


「将呉から見せてもらった骸帝との戦闘動画から、奴は全てのスキルが使えるのは確定。だから、貴方達にはその本の全ての内容を覚えてもらうの」

「全ての内容を……」

「奴がどのタイミングでスキルを発動するか、見極めて勝利へと近づけるのよ。発動条件とか覚えておけば、何が来るかは少しは分かるはずよ」

「そりゃあそうだが──」

「んじゃあ、頑張ってねぇ。私は将呉らとゲームしてるから。全部覚えたらテストするからねぇ」

「お、おい!」


 ドアは強めに閉められて、リブは楽しそうなステップを踏みながら下へと降りていった。

 静まりかえった部屋に二人──しょうがなくその岩のように重い本を持ち上げて、一度互いの眼を見合って、静かに呟いた。


「しょうがねぇ、覚えるか……」

「うん、お互いに頑張ろう……これも修行の一環だと思って」

「俺、今後占い信じる……」


 お互いに修行の一環だと思い込み、スキルの覚える事にした。

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