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第98話 三人の刻印戦士

 


 噴水広場に集合すると、最初出会った時は全員緊張気味な顔だったが、今は全員笑っており仲が十分に深まっているようだ。

 劉星は袋に金の剣のおもちゃを何個も入れた袋を持っているが、リブは両手に大きな袋を持っていたのだ。

 劉星がリブに聞いた。


「お前、そんなに多く何を買ったんだ?」

「これかい?これは大量のレトロゲームソフトよ」

「レトロゲーム?そんなもん買ってどうすんだよ。そんな古き時代のゲーム、面白いか?今と違って画面は汚いし、理不尽に難しいしよぉ」

「それがいいのよ!」

「何処がいいんだよ……」


 強気に出る劉星に、更に強気に話を続けるリブ。


「いいとこ語ってやろうじゃないのよ。長くなるよ、話すと」

「聞いてやろうじゃねぇか」

「なら、このソフトを──」


 ゲームカセットを見せつけて、長い話が始まろうとすると芽衣が二人の話を止めに入った。


「長い話は食事の時にでも、ね?リブちゃん」

「う、うん」

「ね?劉星……」


 リブに対しては笑いながら言うも、劉星に対しては鬼のような怖い顔で言い放った。その顔を見た劉星は身の毛もよだつ表情に変わり、思わず後ろに引いてしまった。


「は、はい」

「それでよし」


 また笑顔になり、事を鎮めた芽衣。

 その顔を直視した悠斗と将呉は固まってしまい、目を逸らしてしまった。


「現実ほど、怖いもんがないとはこの事だな」

「あぁ、全くだ。まるで悪魔だな」


 その声が聞こえた芽衣は静かに二人に笑顔で顔を向けた。


「何か言った二人共?」

「「いえ、何も!!」」


 *


 その後、夕食として全員でファミレスへと赴き、何時間もリブのレトロゲーム愛を語られた。将呉は楽しそうに聞いていたおり、ステラットも静かに聞いていたが、他のメンバーは途中で寝てしまっていた。

 日も沈み、夜──将呉の家に行き、将呉の部屋に八人が入った。狭いのに八人も入って、狭苦しくギュウギュウ詰めにされていた。

 劉星はこの状態に、苦言を上げた。


「ここ、様すぎだろ!!」

「俺の部屋にケチつけるな!!


 悠斗はとある疑問を将呉に聞いた。


「お前、親になんて説得したんだ?」

「ホームステイだよ、ホームステイ。高校の留学生がうちに来るって言って無理やり説得したんだよ!」

「それでよく通ったな……」

「俺の話術を舐めちゃ困るぜ」


 本当に無理やりホームステイと言い、なんとか説得に成功したのだ。


「何かやる事ねぇかな?」

「私の買ったゲームでもやらない?」

「でも、それ昔のだろ。そのゲーム機がないとダメだろ」

「ふふふ、それはちゃんと分かっているわよ。それ!」


 そう言って自信満々にデカいバックから取り出したのは、大きなゲーム機であった。

 ゲーム機と共に大量のコンセントやコントローラーを取り出した。


「ねぇ、将呉。設置の手伝いして!」

「分かったよ」


 二人でせっせと準備して、ゲームの準備を整えた。

 灯はリブが買った大量のソフトを見ていた。


「リブちゃん、何のソフトをするの?」

「パーティゲームでもやろうと思ってね。八人いるから二人で一つのコントローラーで」


 そこで劉星が立ち上がり、声を荒げて全員に告げた。


「よし!なら、負けたチームがコンビニにお菓子を買ってこい!!」


 そう強気で言いながら、将呉の真横に移動していた。完全に強そうな将呉とチームを組もうとしているのが丸見えだった。

 そして二人でチームを組んでやる事となり、悠斗とステラット・灯と芽衣・リブと敏孫・そして劉星と将呉の四つのチームになってゲームを始めることにした。

 敏孫はちょっと照れ臭そうにリブに言う。


「私、こうゆうゲームあんまりやった事ないから、足引っ張ったらごめんね」

「大丈夫よ!私が教えてあげるし、危なくなったら私に渡してくれればいいのよ。さぁ、やるわよ!!」


 そしてゲームが始まった。

 リブと将呉が激しく勝負を繰り広げている中、敏孫や芽衣なども中々のセンスで勝負は一進一退の攻防を繰り返していた。

 そして数時間後──


「はっはぁ!!悠斗、ステラット!お前ら刻印チームの負けだ!!全員分のアイスを買ってこい!!」

「ほとんどお前じゃなくて、将呉のお陰で勝った癖に……」


 声高らかに言う劉星だが、悠斗の言った通り、劉星自身はほぼ役に立っておらず、むしろ足を引っ張ってばかりだった。そんな中で将呉に助けられて何とか3位に登り詰めたのだ。


「……う、うるせぇ!さっさと買ってこい!!」

「へいへい、行こうステラット」


 悠斗は全員からお金をもらい、ステラットと共にコンビニへと向かった。


 *


 二人はコンビニへと行き、さっさとアイスを全員分買ってさっさと帰ろうとした。

 その最中、悠斗はステラットに一日中思っていた事を聞いた。


「なぁ、ステラット。お前、今日楽しかったか?」

「楽しくないとは君らの前では絶対言えないけど、正直言って楽しかったよ。君らといるとね」

「それは良かった」

「alter frontier内の君達の戦いを見るのは楽しいけど、こうやって現実で遊ぶのも悪くはない」


 すると、ステラットは突如足を足を止めて、悠斗に語りかけた。


「そう言えば君は僕が駅に着いたのを一番に分かったよね」

「何故か分からないけど、お前が来たってのが感覚で分かったんだ。他の奴からは感じなかった刻印の感覚って奴が。ゲームと同じで、近くにいる刻印を感じたんだ。まるで現実でも刻印があるように……」

「その通りだよ、悠斗」


 優しい口調から急に冷徹な声に変わった。その瞬間、悠斗の隣から寒く心地よい冷気と共に体内より刻印の力がビンビンと感じ取った。

 悠斗はまさかと思い、咄嗟にステラットへと顔を向けた。そこにはステラットの手の甲に氷の絵が記されており、青白く発光していた。


「そ、それは……氷の刻印!?」

「そうだよ。刻印はゲームの世界だけではないよ。現実にもあるんだ」


 悠斗はその光景に言葉を出す事が出来なくなり、身体を震わせて驚きのあまり無言でステラットへと指を指していた。ひんやりとしていた。つまり、ステラットが演出している訳でなく、その冷たさは本物の氷であり、ステラットの氷の刻印の冷たさなのである。


「驚かなくていいよ」

「んな事言われたって……お前いつから使えるように……」

「君らと同時期にだよ。それに君だって出来るんだから、同じ刻印を持つ者なんだから」

「だ、だ、だからって現実に使えるなんて……」

「まっ、驚くの無理はないよ。君も一度やってみれば?」

「やってみる!?」


 当たり前のように言うステラットに困惑する悠斗。だが、ちょっと使えたらいいな。という気持ちはあった。悠斗は近くの公園へと行き、人影がいないことを確かめた。

 そして深く息を吸い、身体に力を入れて、拳を強く握り始めた。


「すぅ〜。はぁぁぁ!!!」

「after frontierの時と同じ感覚で発動させるんだよ。お互いの気持ちが繋がった時に刻印は覚醒するんだ」

「うぉぉぉぉ!!発動しろ炎の刻印!!」


 更に力を込めて、刻印を出そうとする。悠斗の身体から暑い空気が漂い出した。その時、右手の甲に一瞬だけ炎の絵が浮かび上がった。だが、それと同時に悠斗は体力を消費して、力を失い炎の絵が消え去っていった。


「はぁ、はぁ……全然ダメだ」

「僕だって練習に練習を重ねてやっとだから。現実で使うと身体の負担が大きいから、あまり使うのはおすすめしないけどね」

「で、でもその能力があれば……色んなことに──」

「それはダメだよ」


 笑顔で言っていたステラットの顔から笑みが消えた。


「でもよ、水とか使えば色んな事に役立てるんじゃ」

「確かに現実で使えると分かった時は同じことを考えた。この能力を使いこなす事が出来れば、世界はより明るくなるとね。だけど、もし世界にその事が知れ渡ったら、人々はどう思う?」

「どう思う……って」

「こんな力を持つ者を世界は放っておく訳がない。世界は明るい方向としても利用されるだろう。でも、下手をすれば兵器としても使われるかもしれない。特に君の炎の刻印は強大な力を発揮するだろう。

「兵器って人間兵器的な?」

「あぁ、その通り。僕はそんな予感がするから現実ではなるべく見せないようにしているんだ。人を助ける能力を人を苦しめる能力としては使いたくはない」

「でもお前は俺に──」

「本当に君に言うつもりはなかった。だけど、いつ君はこの事に気づくか分からないから今のうちに伝える方がいいかと思ってね。それに最近のネットワーク社会は怖いからね」

「そこまで考えていたのか……良い奴だな、お前は」

「ふっ、どういたしまして。それよりも早く家に戻ろう」


 そう言うステラットだが、悠斗はコンビニの袋を見てとある事に気づいた。アイスが溶けていたのだ。刻印を発動しようとした時に、暑い風が出た時に溶けたのだろう。


「アイス溶けちゃった……買い直すか」

「こういう時こそ、刻印の使い所だよ。氷の刻印で家に着く手前で凍らせればいいさ」

「これぐらいなら、別にいいよな。使っても」

「もちろんさ、人の為に使うのが刻印なんだから」


 ステラットの顔からまた笑顔が戻り、二人は誰かに見られていない事を祈り、さっさと公園から出ようとした。

 だがその時悠斗は、近くから人の気配と共に刻印の力を感じ取った。


「──!?刻印の力?まさか……」


 感じたその方向へと咄嗟に目を向けた。そこに立っていたのは──


「隼……」

「よぉ、悠斗」

「お前……」


 そこにいたのは悠斗の友であり、仮面の男として敵でもある隼であった。


「あれは、風の──」

「あぁ、その通りだ。奴は俺の友であり、風の刻印を持つ者隼だ」

「ここに刻印を持つ三人が集まったって事だね……」

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